文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

このたびはとんだことで

2020-05-24 09:22:33 | 書評:小説(その他)

 

 

 本書は、副題に「桜庭一樹奇譚集」と名付けられている短編集であり、6つの話が収められている。収められているのは次の6篇であり、話間の繋がりはない。

・モコ&猫
 大学で出会ったぼくとモコとの物語。しかし、いくら色が黒くて、美人でないとしても、女の子に「胡麻油の、瓶に似てますね」(p9)なんて言うか?

・このたびはとんだことで
 表題作だが、短い。女の情念を感じるような話。

・青年のための推理クラブ
 タイトルから分かるように、桜庭さんの作品、「青年のための読書クラブ」と関係がある話。巻末の解説によればこの作品の冒頭を飾る予定だったが、話の流れが変わったので浮いてしまったとのことだ。礼拝堂からマリア像を持ち出したのは誰かをクラブの面々が推理するというもの。

・冬の牡丹
 山田牡丹は32歳の派遣社員。牡丹と大家の老人田沼慎との話。牡丹は昔は優等生だったが、27歳の時に就職した会社を退職し、今は派遣会社に登録している。次の科白は、慎が牡丹に言ったものだ。

「おまえ知らないの、最近の婆さんは、爺さん、ナンパするんだぜ。こっちが相手選ばねぇと思ってる。年を取るほど強気だぜ。(後略)」(p141)


そうなのか?

・五月雨
 一言で言えば、バンパイアとバンパイアハンターの物語。それにしても、中国山地の奥にバンパイアの一族が住んでいるのか。ヒバゴンならいるかもしれないが。

・赤い犬花
 収録作の中で一番長い作品。短編というよりは、中編と言った方が相応しいだろう。母親とその再婚相手がもめて、その息子の床田太一は、義理の父の実家に預けられた。そこでユキノという少女と出会う。太一がそこに滞在した1週間の間の奇妙な出来事。以外などんでん返しもある。

 この中で桜庭さんらしさが一番出ていると思うのは最初の「モコ&猫」だ。とにかく桜庭さんらしくヘンなのである。一番長い「赤い犬花」も100ページちょっとなので、あまり長い話を読む時間がない人に勧めたい。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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