文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解

2020-06-19 09:49:42 | 書評:ビジネス

 

 本書は、リーダーが部下に対してどのように伝えればいいかを述べたものだ。本書を読むに当たって思ったのは、このリーダーというのはどの位の職位を指しているのかということだ。職位というのは会社によって色々と異なり、リーダーというのも、会社によっては正式な職位ではない場合もある。要するに、一般の(管理職ではない)部下を直接持って仕事をしている人を指し、おそらく課長以下の職位を指しているのだろうと思う。それは次のような記述から推測される。

 例えばこんな表現がある。「人材サービス会社の企画部に所属するリーダーAさんは・・・」(p34)。「全国展開している教育機関の広報部に所属していたリーダーAさんは、・・・」(p40)。所属しているということは部長ではないということで、それ以下の職位だろうということが推測される。

 この部分には、リーダーが課長であることが明記されている。「広告会社の課長職であるリーダーAさん・・・」(p125)

 確かに伝え方は大事である。判断基準を明確にして、ある程度は部下の判断にまかせるという事にも賛成だ。私が一番伝え方が下手だと思っているのは、大学教員ではないかと思う。皆さんは、試験問題なんかで経験はないだろうか。「~について述べよ」という問題を。これでは漠然としていて何を答えて欲しいのか分からない。そして出題者の意図と違えば、減点する。私が大学教員に言いたいのは、「もっと日本語を勉強せーよ」ということ。答えて欲しければ、出題の意図をはっきりさせて、何を答えて欲しいのかを明確にする必要があるだろう。もっとも理系で賢い教員は、こんな曖昧な問題を出さずにとにかく計算させるような問題を出すだろうが。

 次の部分には疑問がある。「28 部下のSNS投稿で負の投稿が目立ち始めたら危険信号!?」(pp162-168)だが、実名でまずい投稿をする社員がそうたくさんいるとは思えない。もし実名でネガティブな投稿をしているのなら相当なバ〇というべきだろう。実名でそんな投稿をすると、場合によっては懲戒処分となることも考えられることをまず教えるべきだろう(もちろん匿名なら何を言っても良い訳ではない)。

 次の育休に関する部分も書き方に工夫が必要だろう。「38 男性部下が育休の申請をしてきたら認める前に心配事を聞く」(pp210-213)という項目に×認める 〇安心感を与える となっていることだ。趣旨は、部下の悩みなどを聞いて、育休をとっても大丈夫とまず安心感を与えるということだが、会社の制度として育休があるのなら、認めるとか認めないとかはリーダーの判断を超えることだ。会社によっても異なるだろうが、おそらく部長クラスの権限も超える。就業規則にあるのなら認めないといけないし、もし育休を申請した社員に不利な扱いをするのなら、コンプライアンス上の問題も出てくる。これを建前だと思っていると、あとで経営者はひどいしっぺ返しを食らうことになると思う。

 これも引っかかる。「39 休みは仕事を整理するチャンス。業務改善のチャンスととらえる」(pp214-217)。これは有給休暇のことを言っているのだが、休む前にどう業務を改善していくかを話し合うのは別に反対ではない。気になるのは、「・・有給を許可します。」(p214)という表現があることだ。おそらく筆がすべったのだろうが、本来、有給には許可するとかしないとかいう問題は発生しない。なぜなら企業側には時季変更権しかないので、取得理由を言う必要はないし、ましてや不許可にしたり認めないといったことはできないからだ。ただ、その日に有給をとると正常な業務が妨げられるから時期を変えてくれということはできる。しかし、時季変更権を乱用することは許されない。日本には完全にホワイトな会社はないと思うが、有給を不許可にしたとたん、その会社はブラック企業になってしまうのではないだろうか。

 ともあれ、本書の趣旨は、部下とよくコミュニケーションを取れということだろうと思うので、就業規則や労働法などをよく理解したうえで、適切にやっていく必要があるだろう。そのやり方はもしかすると、企業や業種によって違うのかも知れないので、実態に合ったように自分で工夫する必要があると思う。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

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