ナメクジというと殻のないカタツムリのようなものだ。しかし、カタツムリというのなんか可愛いというイメージがあるのに対して、ナメクジを可愛いと思う人は少ないに違いない。そうナメクジはイメージの悪い動物なのだ。「カタツムリみたい」と言うと、悪口かどうかよく分からないのに、「ナメクジみたい」と言うとまず悪口だろう。
しかし、学習能力や再生能力など、実はナメクジにはいろいろとすごいところがある。本書は、ナメクジの専門家がこのナメクジの凄さについて紹介したものだ。
ナメクジは、殻のないカタツムリのような形をしている。確かに近縁種ではあるが、界-門-綱-目-科-属ー種という生物分類のうち「科」のレベルで違っているのだ。
カタツムリとの近縁だが、殻はない。カタツムリの殻の中には内蔵一式が入っているので、殻が無ければ死んでしまう。一方ナメクジの内臓は体液中に浮かんでいる。
ナメクジは雌雄同体であり、他の固体と精子を交換・貯蔵する。そして、必要に応じて、体内で自分の卵と受精させる。これを生むところが面白い。卵を産むところは後ろの方にあると思いきや、なんと頭部右側の穴から産み落とすというのだ。
本書では、外来種のチャコウラナメクジを主に紹介している。このチャコウラナメクジは繁殖力が高く、著者の研究室では、19年以上38世代に渡り買い続けているという。本書には「ナメクジの飼い方」なる章があるが、「ご家庭で簡単に飼えます」と言われても、飼いたいと思う人はそれほどいないと思う。
ナメクジの脳は面白く、真ん中を食堂が通っているという。この脳が凄く、学習ができ、再生もできるというのだ。
著者のナメクジ愛が良く伝わってくる内容なのだが、残念なことにナメクジの研究者は少ない。そのため、論文の引用もされないし、「なんだかよく分からない研究」とみなされることも多いようだ。しかし、もしかしたらナメクジの研究から世紀の大発見が生まれるかもしれない。最近は目先の研究ばかりがもてはやされ、地道な研究には見向きもされないと言う風潮がある。もっと「なんの役に立つか分からない」研究にも力を入れる必要があるのではないか。
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