秋田大学通信教育の「応用化学概論」の報告課題が返ってきた。結果は99A。あと在籍期間は半年なので、早いうちに学習単位認定試験を仕上げて、提出したいと思う。
サガレンというのは、樺太今のサハリンの古い呼び名だ。賢治は、最愛の妹トシの死の翌年、サガレンを旅している。まだ、樺太の南半分が日本だった、1923年(大正12)のことだ。表面上は、樺太の王子製紙に勤める先輩に教え子の就職を頼むためだったが、実はトシの魂の行き先を求めて旅をしたと言われている。
それでは、なぜ彼は北に向かい旅をしたのか。皆さんは北枕という言葉を知っているだろうか。実は涅槃経に、お釈迦さまが入滅したときに頭を北にしていたと書かれている。そこから北は特別な方向となっているのだ。法華経は日蓮が最高経典に位置付けていたが、涅槃経も重視している。賢治が法華経に帰依していたことは有名だ。賢治は、トシの魂も北に向かったのだと考えたのだろう。
さて作品の内容について紹介しよう。タイトルからサガレンの8月の風景を描いたもののように思うかもしれないが、実は違う。本書の内容を一言で言うと不思議な話と言うことだろう。
最初は、内地の農林学校の助手で標本を集めに来たという人物の描写で始まる。しかし、途中から、なぜか唐突に、タネリという少年を主人公にした童話に変わる。タネリというのは、サガレンに暮す先住民の少年を念頭に置いているのだろうか。ところがタネリは犬神によって蟹に変えられ、ちょうざめ(原文もひらがな)の下男にされてしまう。肝心のオチの部分は書かれていない。原稿が喪失したのか、それとも元々かかれていなかったのか。本書には(以下原稿空白)と書かれている。
ちょうざめが登場するというのがいかにもサガレンらしいが、かっては北海道にもいたらしい。この物語は、まだ構想段階で、おそらく賢治が生きていたら、これからどんどん書き直していくようなものが、彼の死によって表に出てきたのだろうと思う。そういった意味では、なかなか興味深い。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。