文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:水鏡推理

2016-04-13 09:05:00 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
水鏡推理 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社

・松岡圭祐

 本作は、「探偵の探偵」に続く松岡圭祐の新シリーズの第1弾だ。主人公は、水鏡瑞希という文科省の一般職。

 彼女が最初に登場するのは東北大震災の仮説村だ。住民から持ちかけられるトリビア的相談を、まるでおばあちゃんの知恵袋よろしく、次から次に解決していく。その姿は、同じ作者による「特等添乗員α」シリーズの主人公浅倉絢奈を彷彿させる。

 この彼女学生時代はかなりアホな子だったらしい。アジェンダを車の名前と思っていたり、ノーリタンを表すNRをホンダのバイクかと言ってみたり。そう、この設定は、「万能鑑定士Q」の凜田莉子の高校時代とよく似ているではないか。

 公務員志望だった彼女だが、公務員試験には「推理」というものが出てくる。彼女は推理と言えば探偵だと、アルバイトで探偵社で働くことになる。このあたりは「探偵の探偵」の紗崎玲奈を連想させるのだが、この考え方からしてアホな子だったということがよく分かるだろう。しかし、不思議なもので、この探偵社で学んだことが、瑞希の才能を開花させたようだ。

 つまりこの作品のヒロインは、これまで松岡作品のヒロインの特徴を併せ持った集大成のような人物なのである。

 彼女が行くことになったのは、「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」。その名のとおり、不正な研究がないかを検証する部署である。彼女は、官僚たちがころりと騙された研究の不正を次から次に暴いていくところは痛快だ。

 しかし、出てくる不正というのが、どれもチープなトリックを使った、お座敷芸の手品のようだというのは少し残念。もっと専門家を唸らせるような科学的トリックを仕込んで欲しかったと、科学の専門家ではない作者に要求するのは贅沢だろうか。

 最初は、横柄だったタスクフォースの官僚たちも、瑞樹のひたむきさに巻き込まれるように、ともに不正に立ち向かっていく。このあたりは、まるで青春学園ドラマを見ているようでもある。

 松岡作品に出てくる主人公は、誰もひたむきである。この作品も、本当の魅力は、ヒロインのひたむきさにあるのだろう。そのひたむきさが、読者の胸をうつ。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:・マンホール:意匠があらわす日本の文化と歴史

2016-04-11 09:50:21 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
マンホール:意匠があらわす日本の文化と歴史 (シリーズ・ニッポン再発見)
クリエーター情報なし
ミネルヴァ書房

・石井英俊

 いわゆるご当地ものにも色々あるが、マンホールにもご当地マンホールというのがあることをご存知だろうか。うっかりすると見逃してしまいそうなマンホールの蓋。よく見れば、いかにもその地域らしい絵柄が描かれているのだ。

 私はその面白さに気づいて以来、まだ見たことのないデザインのものを見かける都度、カメラに収めてきた。気を付けないといけないのは、同じ絵柄でも、彩色されているものとそうでないものがある場合があるということだ。どうせなら、彩色してある方を写真に撮りたい。

 このマンホールの蓋、意外に好きな人は多いようで、本書の著者など、撮った写真がなんと4000枚を越えるという。本書に収録されているのはその中から828種類の蓋の写真。北は北海道から南は沖縄までを網羅している。(ただし著者は沖縄はまだ未踏の地ということで、ご家族が撮影してきたり友人の撮った写真をもらっているとのこと)

 本書では、これらが、県庁所在地、富士山、歴史的建造物、祭り、伝統芸能、伝統産業、特産物、スポーツといった区分に分類され、さらに個別にマンホールの蓋を紹介したページでは、その絵柄が何を表しているのかについても説明されている。

 これらの絵柄を眺めていると、自分達のところにはこんなものがあるんだと自慢しているようで、なんとも面白い。また、マンホール雑学も収められているので、読み終わったときには、あなたもいっぱしのマンホール通になっているにちがいない。ぜひ、本書を参考にまずは身の回りのマンホールの蓋を眺めることから始めて欲しい。もしかすると、あなたのライフワークが見つかるかもしれないから。

○私の撮ったマンホールコレクション(「文理両道」へリンク)
広島県竹原市のマンホール
広島県東広島市(西条)のマンホール
山口県周南市のマンホール
山口市(新山口駅近く)のマンホール
山口市(湯田温泉)のマンホール
広島県安芸郡坂町のマンホール


☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋吉八幡宮

2016-04-10 09:12:18 | 旅行:山口県

秋吉八幡宮


 所用で帰省したときは、故郷も桜が満開だった。ここは、秋吉地区の氏神様である「秋吉八幡宮」。子供のころは、この神社の境内でよく遊んだものだ。鳥居の横の桜も綺麗に咲いている。


秋吉八幡宮本殿


 鳥居をくぐって、石段を昇っていくと、本殿のある境内に出る。ここはかくれんぼや、ゴムまりを使った野球などをやるにはちょうど良い場所で、学校が終わると近所の子供たちでここに集まり遊んでいた。


土俵


 神社の境内には、土俵がある。もともと相撲は神事だったのだから、あっても不思議ではないのだが、ほかの神社ではあまり見かけなかった気がする。


神社の鐘


 もっと不思議なものがある。この神社には、お寺でもないのに鐘があるのだ。昔から不思議に思っていたのだが、かっての神仏混交の名残なのだろうか。明治前のものとは思えないのだが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」

2016-04-09 08:55:33 | 書評:学術教養(科学・工学)
トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」 (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社

・山本紀夫

 
 世界中で、料理の香辛料などとして愛用されているトウガラシ。トウガラシは、もともとどこの原産だったのか。どのようにして、世界中で利用されることになったのか。

 トウガラシを漢字で書けば<「唐」辛子>だが、中国原産というわけではない。j本書によれば、四川省、雲南省、貴州省など中国の西南地方では盛んに使われているものの、その他の地域ではさほど盛んではないという。中国の料理書にトウガラシが登場するのは、19世紀になってからのようだ。

 トウガラシと聞いてぱっと思いつくのは、キムチの韓国、カレーのインドだろうか。しかしそのどちらもトウガラシの原産国ではないという。キムチにトウガラシが使われるようになったのは250年前である。高麗時代のキムチの香辛料は、ニンニクやショウガが中心だったそうだ。またインドでトウガラシが料理に使われるようになったのも大航海時代、すなわち16世紀以降なのである。トウガラシを使わないキムチやカレーがどんな味だったか、ちょっと興味をひかれる。

 それでは、トウガラシはいったいどこの原産なのか。実は中南米だ。コロンブスが15世紀末に西インド諸島からトウガラシを持ち帰って以来、全世界に広まったのである。だからトウガラシの品種は中南米に多く、メキシコだけでも600種類もあるという。

 このトウガラシの栽培種は4種あるが、世界中で栽培されているのはそのうちのアンヌーム種のみらしい。残りの3種、すなわちチャイネンセ種、バッカートゥム種、プベッセン種はアメリカ大陸以外ではあまり知られていないトウガラシである。

 トウガラシの特徴として、栽培種だけでなく野生種も利用されていることがあげられる。野生種は脱落性があり、実も小さいので使いづらい。通常は栽培種があれば野生種は栽培されないものだ。唐辛子の野生種は栽培種にない香り、風味、強烈な辛味を持っている。それを求めて野生種を栽培するというのも、トウガラシが香辛料だからなのだろう。

 このトウガラシ、何故か、ヨーロッパでは、あまり使われていないという。それでも例外的にイタリア南部のカラブリア地方とハンガリーではよく使われるそうだ。特にハンガリーは、パプリカが作り出された国だ。ハンガリーの料理にはパプリカが欠かせないのである。

 一方アジアやアフリカでは、トウガラシが盛んに使われている。本書は、トウガラシがこれらの国にどのように広まっていったのかを考察し、どのように使われているのかを紹介している。日本に伝わったのは16世紀中頃と早かったが、利用が盛んになるのは江戸時代になってからのようだ。ただし、長らく七味の中の一味としてしか使われなかった。

 我々が何の気なしに辛みとして使っているトウガラシだが、突き詰めていくと、とても奥深いものだということが分かる。本書は、そういったトウガラシの奥深さを教えてくれるだろう。また、植物としてのトウガラシに興味がある人のみならず、トウガラシを使った料理に興味が有るかたにもお勧めだ。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:世界への扉を開く“考える人"の育て方-国際バカロレア(IB)教育が与えるインパクト

2016-04-07 09:00:13 | 書評:ビジネス
世界への扉を開く“考える人
クリエーター情報なし
ビジネス・ブレークスルー出版

・大前研一


 本書の内容を一言で表せば、現代の日本の教育制度批判と国際バカロレア(IB)教育の称賛だ。

 本書は3つの章から構成されており、第1章は大前氏の教育再生論だ。大前氏が以前いろいろなところで発表したものを集めたものだが、そこかしこに大前節が炸裂している。

 大前氏が主張しているのは、これからの日本に必要なのは、知識より考える力だということだ。氏は知識をいくら詰め込んでもわずか1000円のメモリーに収まるような価値しかないという。そんなことを学校で16年間やっても、世界でリーダーシップをとるようなグローバル人材を生み出すことはできないというのである。

<自分が知識を持っていると驕っている人は、勉強しなくなる。実社会で活躍できないでいる”かっての優等生、学校秀才”がいかに多いことか。今の経済をケインズで説明しようとするエコノミスト、今の社会の説明にウェーバーを持ち出さないと気が済まない学者たちがいい例だ。彼らは、事象を無理に型に押し込め、理解した気持ちになっているが、実は自己満足にすぎないのだ。>(p43)

 辛らつだが、なかなか小気味よい。まさに大前氏らしいではないか。

 私も、大前氏の主張には、総体的には賛成なのだが、どうかなという部分もある。例えば、カトリックとプロテスタントの関係について述べた個所だ。大前氏は、カトリックの教義として「受胎告知」をあげ、そのような非科学的な教義を「それは違うんじゃないか」と疑うところからプロテスタントが出発したと書いているのだが、果たしてそうか。プロテスタントが、当時のカトリック教会の教義に疑義を抱いたというのは正しいだろう。しかしプロテスタントは、聖書への回帰というところから始まったものなのだから、「受胎告知」が聖書に書かれている以上は、カトリックの解釈に疑義は抱いても、それが科学的かどうかという理由からではないだろう。

 つまり、大前氏が言っていることについても、本当かどうか自分の頭で考える必要があるということだ。実際大前氏もお孫さんに、リアルタイムでスマホにより、言っていることを検証されて反論されているというので、どのような権威ある人が言ったからといって、それを鵜呑みにしてはいけないということだろう。

 また、講演会で話したことを掲載したと思われる文章がある。話したことをそのまま文章にしたためだろうか、一部意味が分かりにくいところがある。文字にするなら直しておいてほしかったと思う。

 続く2章から4章までは、大前氏が主張する「考える人」をつくるための解として、国際バカロレア教育の必要性や導入の動きなどについて、関係者のメッセージを集めたものとなっている。ただ国際バカロレア教育が具体的にどんなものなのか、いまひとつ実感がわかなかったのは少し残念だ。

☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:・ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月

2016-04-05 13:13:24 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
ホーンテッド・キャンパス 春でおぼろで桜月 (角川ホラー文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA/角川書店

・櫛木理宇


 黒沼麟太郎部長が率いる雪越大学オカルト研究部の面々が怪奇な事件に挑むシリーズの第9弾。もっとも主人公は、麟太郎ではなく、部員の八神森司といういわゆる「見える人」。彼と高校の後輩で今は同級生の美少女灘こよみ、そして部長の従弟の黒沼泉水が現在のオカ研の正式メンバーである。前巻までは、もう一人長身のスレンダー美女・三田村藍が副部長として在籍していたのだが卒業してしまった。ただし近くに住んでいるので、いっしょに活動することも多い。

 この巻もいつものように連作短篇集になっており、収録されているのは次の4話。

・意気地なしの死神
 女性と一緒にホテルに入り自殺したはずの男が消え失せた。その男日下部剛史は去年自殺していた。

・金の帯 銀の帯
 深沢小夜が物置で見つけた母の形見と思われる市松人形。確かに、母と一緒に燃やされたはずだったのに。

・月のもとにて
 出る家に好んで住みたがる、鈴木瑠衣という雪越大の新入生。いったいなぜ。

・籠の中の鳥は
 北詰英太の夢の中に出てくる謎の女。彼の叔父が冤罪を着せられたという事件の被害者なのか。

 オカ研のメンバーは、別に除霊ができるわけではない。そのうえ、「見える人」は森司と泉水の二人だけだ。彼らにできるのは事件の背景を解き明かして、原因を突き止め、霊を納得させるだけ。だから、事件の背景を解き明かすという、かなりミステリー的な要素も入っている。

 そしてもうひとつ、この物語は、森司とこよみのラブコメという側面も大きい。端からみれば両思いなのは明らかなのだが、2人とも頑なに片思いだと思い込んでいるため、なかなか進展が見られない。このもどかしさに、読者のほうはやきもきしてしまうだろうが、それがとても微笑ましいのだ。しかし今回は、お話しの最後で、ついに森司がこよみをデートに誘った。果して二人の関係は、次巻ではどれだけ進むのか。これが結構読者には気掛かりなのである。

 森司は、こよみの母親にはだいぶ気に入られているようだが、父親はちょっと微妙な感じだ。でも可愛い娘を持つ父親の気持ちはこんなものだろう。

 ところで、この巻から登場した瑠衣は、オカ研の新入部員になって、レギュラーポジションを獲得した。これで部には「見える人」が3人になったので、今後どのように物語が展開していくのか期待が膨らむ。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

厳島献備常夜灯(広島市を歩く144)

2016-04-04 11:30:00 | 旅行:広島県

厳島献備常夜灯


 これは宇品橋の下にある「厳島献備常夜灯」。夜間航行する船の安全を図るために設置されたものである。現在はこの常夜灯の南側にもずっと陸地が広がっているが、それは長い間に埋め立てられたことによる。今はこのあたりは太田川の支流のひとつである京橋川の河口のようになっているが、昔はこのあたりまで海が来ていて、船が通っていたということだ。銘には、「寛政5年(1793)厳島明神に献備する」と書かれており、200年以上も前のもののようである。この常夜灯についてはまったく知らなかったのだが、たまたまこの辺りを歩いていて見つけた。自分の足で歩くと、いろいろ変わったものが見つかり面白い。


お稲荷様


 この常夜灯のそばに、お稲荷様を祀った祠がある。常夜灯との関係はよくわからなかったが、この場所には、かって樋門があり、水害などを防止するために使われていたらしいので、なにかそれと関係があるのだろうか。

ソルコムの株主総会に出席(広島市を歩く143)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:東京自転車少女3

2016-04-03 09:23:57 | 書評:その他
東京自転車少女(3) (アース・スターコミックス)
クリエーター情報なし
泰文堂

・わだぺん

 憧れの東京ガールになりたいと、島から出てきた少女・島野いるかを中心に、4人の豊珠高自転車天使部の少女たちが、練馬区の魅力を紹介するするという物語のシリーズ3巻目。

 前巻で、部のスポンサーである上様からのミッションがコンプリート出来なかったため、この巻では、ペナルティとして、加藤さんの愛車を痛チャリ化することに。練馬で行われる「照姫まつり」のPRをするためだ。

 照姫というのは、練馬に伝わる伝説の美女のことである。ちなみに、加藤さんはあまりの美少女ぶりに、あちこちで照姫の再来扱いされている。

 今回はミッションにだいぶ振り回された観のある加藤さんだが、加藤さんラブのいるかとの距離はまたまた縮まったようだ。おまけに、近寄りがたいと思われていたクラスメートたちとも話をするきっかけができたのである。

 最初はかなるかなりツン度の高かった加藤さんだが、この巻ではだいぶキャラが面白い人に変わってきている。そしてどんどん可愛らしくなっている。痛チャリ化の方法をOBから教えてもらおうとかわい娘ぶる加藤さんは見ものだ。ただしこの萌え攻撃は、今回そのOBには珍しく通用しなかったのだが。

 さて、加藤さんの運命やいかに。可愛らしい自転車少女部の少女たちの物語は、まだまだ続く。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

放送大学(教養学部人間と文化)卒業確定

2016-04-01 09:50:13 | 放送大学関係
  今日から新学期。放送大学で、’16年度からの新カリキュラムへの移行手続きをしておいたのが反映されているか、システムWAKABAにログインして確認してみた。

 きちんと新カリキュラムへの移行が反映されており、「人間と文化」コースでは、必要な残り単位は”0”。移行と同時に、今学期末で卒業が確定したことになる。移行しなくても、現在履修中の科目を全部取れば、同じく今学期末で卒業なのだが、一足早く卒業が決まってしまった。これで放送大学で4つ目の卒業証書を手に入れることになるが、次はどうしようかなあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:作家で十年いきのびる方法

2016-04-01 08:47:38 | 書評:その他
作家で十年いきのびる方法
クリエーター情報なし
光文社

・鯨統一郎

 本書は、著者である鯨統一郎のデビュー以来の10年間の歩みを描いたものだ。ただし、主人公は伊留香総一郎となっている。しかし、鯨統一郎は元々覆面作家だ。なぜあえて主人公の名前をクジラからイルカに変える必要があったのかはよくわからない。

 彼のデビューは1998年に発表した「邪馬台国はどこですか?」だ。この作品は1996年の創元推理短編賞の最終選考に残ったものの受賞は逃している。しかし後に文庫書下ろしという形で発表されてかなりの反響を呼んだ。プロの作家を目指してからデビューまで17年かかったというのだから、かなりの遅咲きである。

 作家の世界は思う以上に厳しい世界だ。デビューした出版社に送った2作目はあえなくボツになってしまった。しかし他の出版社から声がかかって、なんとか作家人生は繋がっていくのだが、次に出した「隕石誘拐―宮澤賢治の迷宮」はネットで散々酷評されて重版もかからなかったそうだ。

 この作品には、彼が以前勤めていた鉄道広告会社の星野専務なる人物が登場する。この専務、厳しい世界で生き残っていくためにお前には何があるというのかなど、なかなか厳しいことを言う。しかし、それは伊留香を励まし慢心しないよう戒めるための言葉だったのだろう。実際には、色々と伊留香を応援しているのだから。

 ところで本書には面白いことが沢山書かれている。例えば作者は1日に13枚しか原稿が書けないという悩みがあったらしい。そこで、1枚当たりの字数を増やすことにより、実質の執筆量を増やしたという。1枚仕上げたときの達成感、疲労感は字数に関係がないという理屈らしいが、汎用性の方はどうなんだろう。

 作者は文庫の解説は引き受けないそうだ。その理由は、本を読んでも、「面白かった」、「あまり面白くなかった」程度の感想しか浮かばないかららしい。これは意外だった。小説を書く能力と、本を読んで批評や感想を書く能力というのは別物だということなのだろうか。

 実は私もデビュー作の「邪馬台国はどこですか?」は読んでいたのだが、その出版が1998年と知って驚いた。読んだのはもっと前だと思っていたからだ。思うに、私はその昔、邪馬台国ものをよく読んでいた時期があるので、おそらく記憶がごっちゃになっていたのだろう。人の記憶とはかくもあてにならないものなのだ。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の節ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする