文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

ラストアイヌ 反骨のアイヌ歌人森竹竹市の肖像

2020-05-13 09:14:45 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 

 本書は違星北斗、バチェラー八重子とならぶアイヌ3大歌人の一人とされる森竹竹市さんの評伝である。

 森竹さんは1902年(明治35)に、北海道白老コタンで生まれた。父が3歳の時に急逝し、残されたのが、盲目の母や祖母。国鉄に入るも、希望した車掌には配属されず、1935年(昭和10)に退職している。その後は食堂経営、村会議員、昭和新山アイヌ記念館館長などをしてきた。また、それに並行して執筆活動も行っている。

「北海道旧土人保護法」というものがあったことをご存知だろうか。1899年(明治32)に制定され、廃止されたのはなんと20世紀も終わりに近い1997年(平成9)なのである。ここにいう旧土人とはアイヌの人たちのことで、タイトルを見ただけでもう碌でもないものだということが分かるだろう。

 この他、アイヌの人たちのいく学校は「土人学校」と呼ばれ、入学年齢も和人よりは1年遅かったし、教わる内容も簡単でよいとされた。また「土人病院」という病院もあったということだ。もう文字からも差別意識が伝わってくる。

 竹森さんは、そんな差別と闘ってきたのだ。ただ残念なことにタイトルにあるような彼の「反骨」ぶりがあまり出ていないような気がする。どうも抑え気味なのだ。

 彼は、アイヌの人たちと和人との同化を唱えてはいた。しかし、国の同化政策には真っ向から反対していたようだ。お上からの押し付けには反対だが、現実として同化の流れは止められない。しかし、放っておいたらアイヌ民族の文化はなくなってしまう。竹森さんは、記録に精を出したというが、心に中では寂しさがあったのだろう。

 寡聞にして森竹さんのことは、本書を読んで初めて知ったが、こういう人がいたことはもっと知られてもいいと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

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まんがで身につく 続ける技術 Business ComicSeries

2020-05-11 16:20:27 | 書評:ビジネス

 

 あなたはこんな経験はないだろうか。何かをやろうと一念発起して、3日坊主で終わったことが。そんな人はぜひこの本を読むといいと思う。

 物事を続けるためには「技術」がある。「続ける」ためには、「才能」も「意志」も「やる気」も不要だというのが本書の主張だ。

 そのためには、何をコントロールしたいのか。コントロールしたい行動を「ターゲット行動」といい、これは「過剰行動」と「不足行動」に分けられる。「過剰行動」というのは、減らしたい行動や止めたい行動であり、「不足行動」とは、増やしたい行動のことである。そして「不足行動」には、それを妨げる「ライバル行動」がある。

 こういったことを、本書は漫画仕立てで、あまり本を読む習慣がない人でも分かりやすく教えてくれる。

 本書の主人公は、野呂豊という28歳のサラリーマン。何をやっても3日坊主で、営業成績はビリ。ところが、引き抜きで25歳の樹林こずえが課長としてやってきたことから、彼女の指導により野呂は変わり始める。そして最後には変身した野呂が、ニューヨーク派遣に選ばれるのである。

 実はいろいろオチがあるのだが、こんな可愛らしい課長さんの下で働きたいという人は、意外と多いのではないかと思う(笑)。

 これまで、何をやっても長続きしなかった人には、一読する価値はあるのではないかと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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放送大学の通信指導のWeb提出を2科目した

2020-05-09 21:42:59 | 放送大学関係

 放送大学のホームページにログインしてみて初めて知ったのだが、通信指導のWeb提出が昨日から始まっていた。そこで、さっそく既にやっていた「経営情報学入門(’19)」と「数値の処理と数値解析(’14)」を提出した。あとは5月29日17時までに残りの「解析入門(’18)」を提出すればいい。

 実は、「解析入門(’18)」は思ったよりてこずっている。最初は大学初年級で、一度やったことだし楽勝だと思っていたのだが、いざ蓋を開けてみると結構忘れていることが多く、なかなか進まない。なんとか締め切りまでには提出したいのだが。

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遺譜 浅見光彦最後の事件 上

2020-05-09 10:23:36 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この作品で、永遠の33歳の光彦も、ついに34歳になる。33歳の1年間で100以上の事件に遭遇したので、どう考えても計算が合わないので、てっきりパラレルワールドと思っていたが、それらの作品に出てきたヒロインたちが集まって、光彦の34歳の誕生会を開いている。うーん、パラレルで遭遇した事件があるのか。このあと浅見光彦シリーズとしては、内田さんの絶筆となった「孤道」があるので、シリーズの最後から2つ目の作品ということになる。

 ヒロインたちの中でも、シリーズ2作目の「平家伝説殺人事件」に出てきた稲田佐和は別格のようで、作中で二人の仲はほとんど婚約寸前というところまでいったのに、光彦に人気がでたため、作者の大人の都合でなかったことにされたという経緯がある。さすがに光彦は心ときめいたようだが、残念なことに彼女の出演シーンは、誕生会の場面だけで、それ以降には、この上巻には出てこない。

 ところで、光彦は、今回来日した美貌のバイオリニストで名門のお嬢様、アリシア・ライヘンバッハのボディガードをするように依頼される。そして、アリシアの祖母が昔来日したときに預けた「フルトヴェングラーの楽譜」をいっしょに探して欲しいという。もちろん腕っぷしに全く自信のない光彦は断るのだが、兄の陽一郎からも頼まれ、結局は引き受けることになってしまう。

 この上巻のヒロインは、アリシアと同じバイオリニストであり、「高千穂伝説殺人事件」「歌わない笛」に出てきた本沢千恵子とアリシアを除けば、「平城山を越えた女」のヒロインだった阿部美香。彼女は、湧嶋という老人から、戦時中の偽札づくりの話を聞くと言ったまま失踪してしまう。

 このシリーズ、戦争中の因縁が原因の者が多いが、この作品もそうだ。しかし、戦後もう70年以上。だから90歳を超えるものが関係者となる。おそらく、本書執筆時点では、次の作品が内田さんの絶筆となるとは想像していなかっただろうから、戦争中の因縁というのは大分苦しくなったはずで、あえて本作で戦争中の因縁を使ったのは、なにか内田さんなりの意図があってのことだろう。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

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いやされて 社畜女子のコミックアンソロジー

2020-05-07 10:27:26 | 書評:その他

 

 本書は、色々な漫画家が描く社畜女子の話を集めたコミックアンソロジーである。社畜というのは、説明する必要もないと思うのだが、会社の家畜という意味で、会社のために奴隷のように働く社員のことである。昔は社畜にならないと出世できないという思い込から、サービス残業なんかに励む人間が沢山いた。

 最近はコンプライアンスが言われて昔より減ったと思うが、ブラックと言われる会社にはまだだいぶ残っていると思う。そんな会社だったらさっさと見切りをつけて次を探したらいいと思うのだが、社畜になっている人は、自分で考えることをしなくなっているので会社の言うがままなのだろう。

 さて、本書は、そんな社畜になった可愛らしい女子たちが沢山登場する。業種も、IT企業から洋菓子店まで、いろいろな場所で働いている。

 なんと社畜の神様である「社畜神」が出てきたときには、思わず笑ってしまった。

 しかし、一つ断っておきたい。こんな可愛い社畜女子のいる会社なんて、現実にはないから、くれぐれも夢を抱かないように(笑)。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画5

2020-05-05 09:04:01 | 書評:その他

 

 

 「聖剣さま」と呼ばれる無敵の女騎士、レオ・コルネリアと、魔法使いフーリー・デントが織りなすラブコメ第5弾。

 フーリーは、もうレオ(の腹筋)一筋。レオの方もフーリーのことが好きなようだ。

 この巻では、レオとフーリーの本気が見れる。なにしろレオが強敵の元近衛騎士のメルヴィーを瞬殺。メルヴィーに傷つけられたフーリーをみてレオが怒り、メルヴィーを殺そうとする。そんなメルヴィーを助けたのがフーリー。その理由が、もしレオがメルヴィーを殺すと「貴重な腹筋が一つ失われる」(p32)かららしい。フーリーは冗談だと言っていたが、半分以上本気だと思う。

 御前試合にフーリーも参加するのだが、どうも副賞めあてのようだ。その副賞というのが「聖剣と見合いができる権利」なのである。フーリーは「レオを他の誰にも渡したくない」から参加したのである。これを聞いてレオが上機嫌になること、なること(笑)。

 この他、フーリーの開発した「お手軽性転換ポーション」で男女が入れ替わったレオとフーリーも見れる。男になったレオは、可愛い女性になったフーリーにドキドキ。

 狂剣さまのヘルガには、フーリーのおかげでサキュバスの使い魔の友達ができた。今は二人でクエストに行っているようだ。

 腹筋女子萌えの男子諸君にぜひとも勧めたい漫画である。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

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雨の匂い

2020-05-03 10:40:07 | 書評:小説(その他)

 

 

 主人公は村尾柊一という大学生。父親の友員は、癌で入院中で余命いくばくもない。祖父の寛治は、2年前に脚立から落ち骨折したことが原因で寝たきりになり、その世話を柊一がやっている。

 母親の久子はクソがつくほどのバカ女。再婚した亭主の商売が苦しくなっているのに、自分は高価なものを買いあさり、闇金にまで手を出し、今の旦那の会社がつぶれそうと嘘をついて、分かれた夫の保険金から金を貸せと言ってくる。次は下に書いた久子の死を担当した刑事が柊一に言った言葉だ。

「村尾くんねえ、仏さんのことではあるし、君のお母さんのことではある。だからちょっと言いにくいんだが、お母さんの金は、旦那の仕事とは無関係だよ」(省略)「たしかに旦那の会社も経営が苦しいとかで、以前ほどの羽振りはないらしい。二人の仲が険悪になったのも金が理由で、お母さんはあれが買えないこれが買えないと、よく癇癪を起してたそうだ」(p226)



 ブランドものに血道をあげるバカは一定数いるものだ。柊一は、眠れないという母親に精神安定効果があると言って、スズランの鉢植えを渡す。

「スズランを根ごと飲む方法もあるからな」「このお花を?」「2,3株を水で洗って、ジューサーにかけてさ。漢方の特効薬で、でも体質によっては吐き気や下痢があるから勧めないけどね」(p191)



 スズランは花は可憐だが、毒草でもある。毒草であることは割と有名だと思う。その毒は青酸カリの何倍もあるらしい。特に花や根に含まれているという。久子はそんなことも知らなかったようで、スズランの根を飲んで死んでしまう。

 この小説にはヒロインらしき人物が二人出てくる。高校生の緒川彩夏とAV女優もやっている首藤李沙。てっきり彩夏がメインヒロインだと思ったが、どうも李沙の方が本命らしい。

 しかし、首藤李沙が自殺をするとき、彼女の頼みで、李沙が息絶えるまで柊一はいっしょにいたりする。彼もどこか壊れているのだろう。

 樋口作品は、登場人物の語り口に大きな特徴がある。どこか斜に構えたようなのだ。本書においても、主人公の口調は、他の樋口作品と同様だし、彼が相手をする女性たちもちょっと蓮っ葉な感じだ。

 本作はカバー裏にはミステリーと書かれているが、私はミステリーではないと思う。なぜなら、謎解き要素がないからだ。そして、ギャグ的な要素は皆無と言って良い。読後感はなんともやるせない。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

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ソウナンですか?(6)

2020-05-01 09:52:00 | 書評:その他

 

 以前深夜アニメにもなった「ソウナンですか?」の第6巻。

 活動的でちょっと脳筋な鈴森明日香、お嬢様な九条紫音、優等生の天谷睦そして遭難のプロの鬼島ほまれの4名の女子高生の無人島サバイバルライフを描いたものだ。この巻では、ほまれが助けを呼ぶために作っていた筏が見つかってしまい、結局4人で島を脱出することになる。まだ準備をしている段階だが、果たして4人は無事に島を出ることができるのか。

 誰かが恥ずかしい目にあうのはこの作品のお約束。この巻には3か所あり、思わず吹き出してしまった。1つ目は明日香以外の3人、あと二つは紫音が犠牲者だ。

 まず一つ目だが、明日香は水汲みが面倒くさいと、最初は上流まで汲みに行っていたのだが、50mずつ下流に汲む場所を移動して、最後は、すぐ近くで組んだようだ。川は、下流に行くほど雑菌が多くなる。結局明日香以外の3人はピーゴロゴロ。明日香は、水を飲んでなかったので無事だったらしい。

 二つ目は、ほまれが紫音に送った誕生日のプレゼント。おかげで紫音はかなり恥ずかしいことを。カズラガイで作ったアクセサリーを首にかけようとする紫音に、そうじゃない腰につけるんだというほまれ。

「古来 太平洋の船乗りたちは 見えないうねりを・・・ 睾丸の揺れから読み取っていたそうだ! だが私たちには残念ながら睾丸はない・・・」
(p80)


ということらしい。おかげで紫音は筏に乗せられ恥ずかしい格好を(笑)

「もっと腰を落として 足を開け!! そうだいいぞ!! どうだしおん!?何か感じるか!?」「ええ・・・すごく恥ずかしさを感じるわ・・・」
(p81)


 そして3つ目は、ほまれと明日香が食料としてエイをとろうとしたとき。大物をモリでついたのだが。それを引き上げるときに紫音のパンツが破れてしまう。しばらくノーパン状態の紫音だったが、ほまれがエイの皮で代わりのパンツをつくった。

「ちょっと生臭いが履き心地は悪くないぞ」(p124)


さすがにこれは、他の娘たちには評判が悪かったようだ。

 ともあれ、この作品をじっくり読めば、例え遭難しても慌てず騒がず、サバイバルライフを送れるようになるだろう(ホンマか?)
☆☆☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

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