本書は違星北斗、バチェラー八重子とならぶアイヌ3大歌人の一人とされる森竹竹市さんの評伝である。
森竹さんは1902年(明治35)に、北海道白老コタンで生まれた。父が3歳の時に急逝し、残されたのが、盲目の母や祖母。国鉄に入るも、希望した車掌には配属されず、1935年(昭和10)に退職している。その後は食堂経営、村会議員、昭和新山アイヌ記念館館長などをしてきた。また、それに並行して執筆活動も行っている。
「北海道旧土人保護法」というものがあったことをご存知だろうか。1899年(明治32)に制定され、廃止されたのはなんと20世紀も終わりに近い1997年(平成9)なのである。ここにいう旧土人とはアイヌの人たちのことで、タイトルを見ただけでもう碌でもないものだということが分かるだろう。
この他、アイヌの人たちのいく学校は「土人学校」と呼ばれ、入学年齢も和人よりは1年遅かったし、教わる内容も簡単でよいとされた。また「土人病院」という病院もあったということだ。もう文字からも差別意識が伝わってくる。
竹森さんは、そんな差別と闘ってきたのだ。ただ残念なことにタイトルにあるような彼の「反骨」ぶりがあまり出ていないような気がする。どうも抑え気味なのだ。
彼は、アイヌの人たちと和人との同化を唱えてはいた。しかし、国の同化政策には真っ向から反対していたようだ。お上からの押し付けには反対だが、現実として同化の流れは止められない。しかし、放っておいたらアイヌ民族の文化はなくなってしまう。竹森さんは、記録に精を出したというが、心に中では寂しさがあったのだろう。
寡聞にして森竹さんのことは、本書を読んで初めて知ったが、こういう人がいたことはもっと知られてもいいと思う。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。