曇り、27度、83%
日本にいたら日本の卵を食べるのは当たり前の事、どこのスーパーに行っても売ってるのは産地こそ違いがありますが日本の卵です。香港に来た当初、卵一つ選ぶのにもどこの国から来たものを買えばいいか分かりませんでした。とにかく地元の卵を買いました。香港人に混じって、分かりもしないのに赤い電灯の光を卵に通して、卵を一つ一つ選びます。卵の中で、雛になってるかどうかを確かめるもののようでした。卵を割ったら雛がいたなんて事だと嫌な気がします。そうして買った卵も割ってみると傷み始めていることがありました。この何十年、一体傷んだ卵を何個捨てたやら。
香港、中国、タイ、マレーシア、フランス、アメリカ、オランダ、韓国、日本。一番近くの大きなスーパーで売られている卵の出身地です。日本の卵は日系のデパートかスーパーでしか売られていませんでした。それがここ3年ほど地元の大手スーパーにも並べられ、お値段も以前ほど高くなくなりました。円の為替レートにもよりますが、日本の卵が手頃な値段でしかも近くのスーパーで買えるなんて、夢のような話です。
日本に住んでる人も今の香港に住んでる人も、日本の卵なんて当たり前に思うはずです。まだ息子が香港にいた頃の事、すき焼きをするのに日本の卵をうんと気張って買って来ました。日本の卵は主人と息子、私は地元の生卵でも平気なので遠慮します。高い高い卵でした。今でも手頃といっても2番目に高い卵です。一番高いのは、アメリカからのフリーレンジの卵です。
日本の卵も北海道、岩手、広島、福岡、鹿児島、あちこちから入って来ています。写真の卵は鹿児島から。卵を割ると、黄身の色がやや柿色に近くカラザもしっかりとしています。目玉焼きにすれば、黄身がぷっくりと膨れて、オムレツにしても卵の香りが違います。ゆで卵にすると尚更、白身が殻にくっ付く事がなくつるんとしたゆで卵になります。殻がきれいに剥けるのは日本の卵、中国の卵、香港の卵です。私はお味噌汁にポトンと落とします。まだ半熟、いえ、白身が固まった頃を見計らい口に入れます。この甘みは、他の国の卵では得られません。ああ、幸せ。
我が家はお菓子を作るので、卵のたくさん使います。日本の卵を使ってお菓子を作る勇気がまだありません。もったいないとつい思ってしまいます。
小さな卵の話ですが、当たり前に美味しく新鮮な卵が食べられる事を、冷蔵庫の卵に感謝して下さい。今日も卵を割りながら、日本人に生まれてよかったと、近いようで遠い日本を思います。