先週から書きたくて書きたくて、うずうずしている、ろくでもない話がある。
その事件が発生したときは、むかついて、自分のなかで処理できてなかったので、書く気になれなかった。
むしゃくしゃ、もやもやしたままの、濃度の濃いマイナスの気持ちの時は、わたしは、そのネタをテーマにはできない。
笑い飛ばせる余裕が出ないと、納得いく書き方ができない。(作家のごとくエラそーに言う・・・)
能書きはそれぐらいにして・・・
気に入らないオババがいる。あ、いえ、そこそこ、ご高齢のご婦人がいる。
それは、同じダンスレッスンを受けている女性、M夫人。
今までは週に一度だけ顔を合わせていたのだが、今月から、もうひとつのクラスにも参加されるようになり、
週に二度、AクラスとBクラスで顔をあわせるようになった。
べつに、この方が、お金持ちだから気に入らないわけではない。
お金のニオイをぷんぷんさせるのが、鼻につくからキライというわけでもない。
キンキンきらきら、まばゆい装身具、身なりが、目障りだというわけではない。
べつにボロを纏おうが、黄金の衣装を纏おうが、どうでもいいのだが・・・
問題は、(お金があるからかどうかは知らないが)、自分の欲求を満たすためには、人を踏んづけてでも
ワガママを通すということだ。
コトの発端は・・・
ダンスレッスンが行われるホールの一角には、
皆さんから売りに出されたドレスなどの衣類(新品や中古品や新古品)を
リサイクルショップの形式で売られている。
けっこう、たくさんの衣類が出されていて、
生徒同士、掘り出し物はないかなあと、ときどき、チェックしたりしている。
わたしが、たまたま見つけた、黒いフリフリ、フリルのウエアー。
ひょいっと、つまみあげたとたん、M夫人の目が光った。
「あらっ、それ、どこにあったの? そんなの、あった?」
飛びつきそうな勢いで、
「あなた、もし、それ、小さかったら、わたしに回してね」
わたしが、更衣室で試着している間も、じっと見るM夫人。
ウエストのだぶつく肉に、きちっとタイトにフィットするその服を見て、
「あなた、ウエストぶよぶよじゃない?
こんな、ぶよぶよだったら、これはちょっとみっともないから無理ね」
そういわれると、確かにその通りなので、ひるむ、わたし。
周りにいた、ばあさん連中、いえ、オクサマ方も、同時に2人ほどが、
「ぶよぶよが目立つね」と言いにくいことをハッキリおっしゃる。
それにメゲて、わたしは服をあきらめ、取得権利を放棄した。
「そうですかね~? 残念だけど、やめといたほうが、よさそうですね・・・」
と言い終えるか言い終えないうちに、
「わたしが、いただくわ」
そう言って、さっさとレジに行ってお金を払うM夫人。(足がまた速い)
お金持ちのマダムが多いからかどうか知らないが、
自分の出したものが長い間、売れ残るのがいやで、値段はお安くつける場合がある。
その服は、そのせいか、1000円で、お安かった。
一瞬の気の緩みで、お得感ありありの服を奪われた。
あの場に、M夫人だけなら、まだしも、あと2人のあの、「ぶよぶよ発言」が、わたしを負けに導いた。
あの発言に、惑わされることなく、自信をもって突き進んでいれば、手に入れることができたのに。
おんなの戦に、負けた、惨めなわたし。
(自分のウエストが、ぶよぶよのせい、ということには、ほとんど着眼しないところが、天然系)
しかし、なかなかこころでは、けじめがつかず、くすぶり続けていた。
どうやったら、あの服を奪回できるだろう?
そうだ、下手(したで)に出て、猫なで声で、M夫人にすりすり、すり寄って、
「もし、お気に召さなければ、いつでもお引取りしますね」
こんなかんじで、次の手を考えてみようか・・・
いや、でも、ぶよぶよだし、あとの2人もそう言ってたし、やはりわたしには、無理なんだ・・・
あきらめなきゃ・・・
そう思いながら、もやもやと1週間が過ぎた。
なにげなく、M夫人に聞いた。
「あの服、どうでした?」
するとM夫人は、間髪を入れず、
「ダメだったのよ~」と。
「あら、そうなんですか。わたし、引き取ります。お店に返さず、直接わたしに手渡してください」
と、ダメだった理由も聞かず、畳み掛けるように言った。
で、無事、わたしの手に入ったわけだが、
M夫人に、代金の1000円を手渡すと、「あら? なに?」みたいなリアクション。
お金持ちのM夫人のことだから、ひょっとしてほんの100円でも、返金してくれるかしらん・・・と淡い期待を抱いていたら、
なにをなにを。甘かった。
全額受け取ったまま。(まあ、それが当たり前なんだけど)
かくして、その1000円の服を入れたシャネルの紙袋が、わたしに手渡された。
と、それで話がすめば、それはそれで、万事めでたしで、よかったのだか・・・
(つづく)