雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

生きとし生けるもの ・ 小さな小さな物語 ( 187 )

2011-01-12 09:52:32 | 小さな小さな物語 第一部~第四部
梅雨明け十日、といわれるように、梅雨が明けた後の十日ばかりはカンカン照りの日が続くのが普通のようですが、それにしても今年の梅雨明け後はすさまじい暑さです。
当地は、梅雨明け後昨日まで一滴の雨もみていません。あちらこちらから雨の便りはあり、比較的近い地区でも降ったようですが、そのいずれもが激しい豪雨のようです。何だか今年は、荒々しい夏のような予感がします。


ただ、この猛暑に、蝉たちはいたって元気です。私の家の近くでは、例年に比べ蝉の鳴き声はそれほど多いとは感じないのですが、それでも朝早くから元気な声を聞かせてくれていて、暑くなれ暑くなれと合唱しているように感じられます。
毎年わが家の庭のあちらこちらから飛び立っていくのですが、今年も蝉の抜け殻が木の枝などにからみついています。木の根っこ周りには、驚くほどの数の穴があいています。地中深くから這い出てきて飛び立っていったのかと思うと、短い地上生活を満喫して欲しいと願う気持ちが強くなります。


この季節庭いじりをしていますと、一番困るのが蚊の襲来です。今私が必死に取り組んでいます枕草子の第二十五段にも、蚊がいっちょ前に羽音を立てて飛び回るのがとてもにくらしいと紹介されています。どうも、蚊は千年前から嫌われ者のようです。


しかし、考えてみますと、蝉にエールを送り蚊を憎むのも、勝手といえば勝手なものです。彼らも彼らなりに真剣に生きているわけですし、生きとし生けるものそれぞれに大切な命を持っているということは頭では分かっているのですが、ところが、さて、蚊に好きなだけ血を吸っていただくだけの度量はなく、自分の植えた花は大切にしながら横に生えてきた雑草は憎々しげに抜いてしまうのです。
幼い子供たちの命が粗略にされているニュースを見ますと、激しい怒りを感じ生意気なことを言ったり書いたりしてしまうこともあるのですが、命を大切にするということは、それほど簡単なことではないのかもしれませんねぇ。

(2010.07.28)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 子供は神様のもの ・ 小さ... | トップ | 時間を計るもの ・ 小さな... »

コメントを投稿

小さな小さな物語 第一部~第四部」カテゴリの最新記事