雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

子供は神様のもの ・ 小さな小さな物語 ( 188 )

2011-01-12 09:51:15 | 小さな小さな物語 第一部~第四部
このところ、悲しい事件や腹立たしい報道が目立ってなりません。
最近特に多くなっているということではないのでしょうが、死刑執行に関する何か不愉快さを感じる報道、やり切れなくなるような事件、何よりも、幼い子どに対する犯罪や虐待、そして、わが子の養育の放棄・・・。


海亀は、夜砂浜に上がり涙を流しながら数多くの卵を産みます。その姿はテレビなどで報じられることがありますが、卵を産んだ後はやっとの思いで海に帰っていくのですが、その姿には深い感動を覚えます。
鮭は、大海で育った後、生まれ故郷の川に登り、たくさんの卵を産みつけます。そこには、遡上を待ち受けている人間とやらの危険を承知の上で子孫を残すために遥々とやってきて、産卵の後やがて死んでいくそうです。
海亀も鮭も、直接子育てをすることはありません。たくさん産みつけられた卵から、とてもたくさんの子供たちが誕生します。しかし、無事大海原へ帰って行ける海亀や鮭はほんの一握りの数に過ぎず、再び故郷へ産卵のために帰ってこれるものは、さらに少ないことでしょう。
海亀や鮭は、産卵の後は子供たちの命を自然の摂理に任せています。しかし、これを子育て放棄だと考えている人がいるのでしょうか。


犬や猫は複数の子供を産みますが、とても大切に育てます。牛や馬も同じですし、野生の大型哺乳類も、子供を自らの命をかけて守っています。
人間も大型哺乳類ですから、生まれてきた子供を大切に育てる本能を神様から授けられています。ただ、幸か不幸か、人間はたぶん神様の意志に反してだと思うのですが、実力以上の知恵や欲を持ってしまいました。そのひずみの一つとして、子供を大切に育てる本能を見失う瞬間を持つようになってしまったのではないでしょうか。


高齢者に対する社会福祉制度の拡充、とても大切なことだと思います。しかし、高齢者は有権者であり、幼い子供には投票権がありませんから、時の政権は高齢者優遇にはなっていませんでしょうか。
子供手当、保育施設の充実、高校教育の無料化など、どれをとっても大切な施策なのでしょう。しかし、これらの施策の多くが、本当に子供の幸せのために機能しているのか、子供の親の票が目当ての施策ではないかと疑うのは、下司の勘繰りというものでしょうか。
かつて、私たちの国では、七つまでの子供は神様のものだと考えられていたそうです。悲しいかないつの頃からか、自分の子供は自分の所有物であり、他人の子どもは特別関心もない単なる他人になってしまいました。こういう社会では、一つの悲しい事件が起きても、とても胸を痛めたり、あるいは痛めているようなふりをする人はたくさん登場しますが、きっと何度も繰り返されるのでしょうね。
しかし、その対策がいくら難しいからといっても、幼い子供は社会全体で守るという体制を築かなくては、少なくとも心豊かな社会など実現することはないのではないでしょうか。

(2010.07.31)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 古代の謎 ・ 小さな小さな... | トップ | 生きとし生けるもの ・ 小... »

コメントを投稿

小さな小さな物語 第一部~第四部」カテゴリの最新記事