村上春樹というと、音楽(ジャズ喫茶経営)、翻訳(小説の気晴らしも兼ねるとある)、アメリカ進出(日本では風当りがきついのと海外で長編執筆というスタイル)という印象しかなかったが、これを読むと骨があるのが分かった。職人としての、体の維持、退路を無くし追い込む姿勢、毎日決まった10枚の原稿執筆、決定を人任せにせず自分で段階毎に意思決定など「きちんと」している。
恐らくは、営業などでも頭角を現せたであろう気質と管理がある。確かに、酒浸りの文学とは正反対で、現代の時代背景に合致している。
知見を羅列する:
・小説はゆっくりした物語のヴィークル(乗り物)、「例えば」を繰り返す、「置き換え作業」、「鈍臭い」作業
・頭が良くない「Streetwise」な実地的で学術的ではない、大学に興味が持てなかった
・Epiphany(本質の突然の顕現)は神宮球場外野席で、英語で書いて、日本語に「移植」手法を編み出す
・オリジナルとは①独自のスタイル、②自分の力でヴァージョン・アップ、③スタンダード化し人々のサイキに吸収、引用源となる
・オリジナルな文体は「引き算」、「楽しくなれるかどうか」が判断基準
・「イマジネーションは記憶」から、「記憶とは頭の引き出しに蒐集される物置」
・新しい世代にはマテリアルがあり、運ぶヴィークルが設定、この相関性から小説的リアリティーが生まれる
・一定を書き、書き直す「とんかち仕事」
・走るのは魂を収める「枠組み」である肉体を確立
・「数値重視」の硬直性と「機械暗記」的な即効性・功利性志向に対する「個の回復スペース」の一つが小説
・風圧、ネガティブな出来事から「観察」へ、そして海外で張り詰めた環境と新しいフロンティアをめざす
・海外では段階毎に責任をとり決断、手間がかかり、語学力が必要
じつに為になる