昨年は344冊、予定の300冊より意外と多かった。重い本が少なかった印象があり、特にマクロ経済でそうだったのが原因かもしれない。風俗などはその反面面白いのが多かった。大きいのより、身近な歴史なのかも知れない。
経済学は面白いのが少なく、大家の想い出話が多かった。その中で、読みやすいベストセラーの「教育経済学」を推す。
「学力」の経済学 中室牧子 家庭と幼児教育の大切さ、自制心とやり抜く力が大事、教師の能力測定、データ取得方法など参考になる
歴史ものは勉強になる。京都の祭りと都とも下水に着目、下水歴史学があると都市分析として面白い。
ローマ人の物語 10.すべての道はローマに通ず 塩野七生 ローマのインフラまとめ、感心した、ローマ時代の資料を読み込み、伸長し、さらに現代に知恵を生かすスタンスは見事
京都の神社と祭り 本多健一 京都の祭礼と都市を取りまとめ、平安京の下水までに論説、素晴らしい
京都〈千年の都〉の歴史 高橋昌明 京都の都市を巡る、権力、生産、納税、ごまかし、宗教、衛生(下水関連)と疫病を楽しめる
建築や産業の裏側が面白い
非常識な建築業界 森山高至 設計、施工、経済と時流、建築家の性癖とオリジナル志向などまとまりがよい
ロケット・ササキ 大西康之 シャープの裏にいた佐々木のスパイラル戦略で友人をつなぐ、共創の発想は驚愕
風俗は全体に分析が良くなり、「風俗学」ができないかなと思う。納豆の分析は民博レベルか、足で稼ぐのは頼もしい(高野秀行さんは文春にもコラム連載となった)
ちろりん村顛末記 広岡敬一 雄琴のトルコ風呂の素晴らしいルポ、文章がうまい、優しい目線、名作だ
江戸の売春 永井義男 仕組み、立地、客層、値段、建築など体系的で百科事典的に使える、関西版も欲しい
謎のアジア納豆 高野秀行 納豆をテーマに東南アジアの納豆を開拓、木の葉や羊歯から納豆ができる文化と日本を自分の足と舌で開拓、文章もうまい早稲田探検部出身
アメリカのミステリ名手はやっぱり上手い
ザ・カルテル(上・下) ドン・ウィンズロウ 大作でメキシコのカルテルと味方と敵の変容、魅力的な登場人物と殺人、暴力と疲弊、素晴らしい筆力
証言拒否 リンカーン弁護士(上・下) マイクル・コナリー ローン破産の反対首謀者が冤罪と見せかけて、真犯人と殺人が露呈、弁護士から判事へ転身
暗殺者の反撃(上・下) マーク・グルー二ー グレイマンを追う理由がやっと明らかに、大活劇
過ぎ去りし世界 デニス・ルヘイン 引退したマフィアの30代は息子を育て組織争いと旧友の裏切り、そして不倫、昔の幻の先にあるのは凶弾
生か、死か マイケル・ロボサム 一日前に脱獄した男は、死んだ妻の連れ子と真犯人たちへの復讐に、小柄なFBIの女捜査官が活躍
日本もミステリ名手が活躍
罪の声 塩田武士 グリコ森永事件の真相を下敷きにした事件と人間関係の交錯、楽しめる、読みやすい
ガラパゴス(上・下) 相場英雄 派遣の不安定さと自動車メーカーの欠陥ハイブリッド車告発での殺人を捜査、利権と政治、警察の力関係、読ませる文章
架空通貨 池井戸潤 地域通貨、計画倒産、私募債、マネーロンダリングと復讐、家族愛が交錯、読ませる
千両花嫁 山本兼一 京都の古道具屋、駆け落ち、明治維新前と道具立てがそろい、収まる推理と度胸、人情、これはうまい
赤い博物館 大山誠一郎 犯罪資料館の雪女館長は北森鴻の蓮丈那智に話し方もそっくり、考えられたプロットで姉妹殺人の解き明かしに感嘆
コンゲーム系も楽しい
アリバイ会社にご用心 新藤卓広 父親の冤罪を晴らすためアリバイ会社に就職、殺人事件の濡れ衣を着せられそうになるが、刑事と友人の知恵で解明、謎が深い
秘密結社にご注意を 新藤卓広 だんだんまとまるコンゲーム、黒幕の女性とイカレタ3人組、ヤクザ、変態エリートが面白い
任侠書房 今野敏 ヤクザのしのぎ、お仕事、役割、プロトコールが分かり、出版の要点もわかる、しかもハッピー・エンドで爽やか、とせいを改題
しっとり来る、円熟のミステリ3冊。なんとも良い雰囲気で、哀しさも
少女の時間 樋口有介 柚木草平シリーズ、警視庁開闢以来の女たらしのライターが連続殺人事件を捜査、ほのぼのローンに頼る貧乏のなか美女らに惑わされ最後の真相が悲しい、最後の場面が笑える刑事と編集者の女の闘い
希望荘 宮部みゆき 宮部らしいゆったりとした描写と複合した謎、そして人間の性と悲しみ
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 東京バンドワゴン 小路幸也 暖かい家族愛、4世代の共存、集大成のようなまとまりの下町の人間関係
今年はまた研究もするため、読書量を減らす予定。今年は空海弘法大師のさらなる読込や、密教への拡大を考えている。