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コード・ブレーカー(ウォルター・アイザックソン):ゲノム編集クリスパーのジェニファー・ダウドナの伝記、研究者の競争とチーム形成、ゲノムの病気と改良の倫理問題、COVID19への応用の3部は読ませる

2023-07-02 02:12:48 | マクロ経済

 上下2巻のジェニファー・ダウドナの伝記は大著だが、すっと読める。MIT、Harvardなど出てきて懐かしい。

内容は3つに分かれ、①理学研究者の競争とチーム、②クリスパー活用での倫理問題、③COVID19への対応と、時流にあった内容だ。

 

知見は:

①理学研究者の競争とチーム

ジェニファー・ダウドナJennifer Doudna

( https://en.wikipedia.org/wiki/Jennifer_Doudna )はハワイ育ち。The Double Helix( https://en.wikipedia.org/wiki/The_Double_Helix )を読み、遺伝子に関心を持つ。その本の中にRosalind Elsie Franklin( https://en.wikipedia.org/wiki/Rosalind_Franklin )の2重螺旋構造を証明するPhotograph 51( https://www.sci.kyoto-u.ac.jp/ja/academics/programs/scicom/2017/201708/01 )撮影の功績があり、女性でも偉大な研究者になれると知った。この女性研究者もテーマとなっている。

 Harvard Medical SchoolのPh.D.を取得。それからRNAの立体構造に着目し、構造生物学Molecular Biophysicsを学び、最初の結婚と離婚、2度目の結婚で堅苦しいケンブリッジから西海岸のバークレイへ乗り換え(研究者の二体問題も解消)。Lawrence Berkeley National Laboratory( https://en.wikipedia.org/wiki/Lawrence_Berkeley_National_Laboratory )などを経る。

 Doudnaの会社員不向きと研究現場志向、チーム形成が効果を発揮しbiochemist( https://en.wikipedia.org/wiki/Biochemist )として、2012年にCRISPR-Cas9を論文発表、その功績で共同研究者のEmmanuelle Marie Charpentier ( https://en.wikipedia.org/wiki/Emmanuelle_Charpentier )とともに2020年ノーベル化学賞を受賞した。女性の教え子と自己資金で起業。

 この2012年の論文について、競合したのがシクニクスであり査読競争と内容のプレゼン勝負があった。

 学・産に政+慈善団体の資金援助が基礎研究を後押しした。

さらに、ヒト細胞への応用について、Harvard:George Church( https://en.wikipedia.org/wiki/George_Church_(geneticist) )、MIT( 正確にはBroad Institute (MIT(ゲノム工学)とHarvard(医療)の共同研究)

https://en.wikipedia.org/wiki/Broad_Institute https://www.broadinstitute.org/about-us ):Feng Zhang(https://en.wikipedia.org/wiki/Feng_Zhang )、U.C. Berkley:Jennifer Doudna 3者の論文の先着と内容の争いと、特許争いとなった。競争が発明を加速させた。

 イノヴェーションはリニア・モデル( https://en.wikipedia.org/wiki/Vannevar_Bush が提唱)ではなく並行的に進む。

(もともと、MITはゲノムなど工学であり利根川進(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%A9%E6%A0%B9%E5%B7%9D%E9%80%B2 )は遺伝子研究、1988年に面会し名刺もある。しかし、利根川も倫理に厳しい東海岸でのセクハラ疑いの事件がありMITを去った。)

 Doudnaの勝利となったが、ここにボストンのヴェンチャー・キャピタル(もともと捕鯨投資が出自)がからみ、Feng ZhangとBroad Instituteの動きもあり、3者の間に軋轢が生じた。

 これは、ITC産業において、「Regional Advantage: Culture and Competition in Silicon Valley and Route 128 現代の二都物語―なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか 」(アナリー・サクセニアン)を思い出す。

 陽気で開放的なスタンフォードなどシリコン・バレーのつながりは、サスペンダーにボウタイという堅苦しいボストンより成長したというのが結論だ。

 茶々を入れたのがBroad Institute のEric Lander( https://en.wikipedia.org/wiki/Eric_Lander )の2016年の小論(Cellにて)はDoudna の功績を認めずMIT Technology Reviewにまで酷評

 

②クリスパー活用での倫理問題

・DARPAによるクリスパー利用での生物兵器無効化

・クリスパーは原爆と同じか(残虐なのが明らかになると使わない)

・治療(遺伝性疾患)か強化(能力や特徴など)か予防か、超強化(新しい能力)

・個人の利益かコミュニティの利益か

・金銭的な不平等が遺伝子治療の不平等につながるか:教育と同じ、富裕層の利益

 The Double Helixの著者 James Watson( https://en.wikipedia.org/wiki/James_Watson )は子供の一人が双極障害である理由が遺伝と解釈、人種・病気についての能力遺伝を公共の場でたびたび発言、物議をたびたびかもす。Cold Spring Harbor Laboratory( https://en.wikipedia.org/wiki/Cold_Spring_Harbor_Laboratory )からの「縁切り」となる。息子本人は「精神の病気ではなく、出来が悪い息子を持ったことが父親の重荷だ」と遺伝的運命を広く解釈している。

・人間欠点があるのは、モザイクだから

 

③COVID19への対応

・科学者の協力と情報のオープン化となった

・DARPA( https://en.wikipedia.org/wiki/DARPA )の支援、

(もともとMITはDARPAと親しい。アメリカ空軍との共同研究のためのLincoln Laboratory ( https://en.wikipedia.org/wiki/MIT_Lincoln_Laboratory  https://www.ll.mit.edu/ )などあり、Internetの応用に強かった)

・Jonas Salk( https://en.wikipedia.org/wiki/Jonas_Salk )はポリオに対し、「殺したウイルス」をワクチンに、Salk InstituteはLouis Kahnの名作( https://en.wikipedia.org/wiki/Salk_Institute_for_Biological_Studies )

 とても面白い内容だ

 なお、MIT周辺 Kendall SQあたりの Technology Square( https://en.wikipedia.org/wiki/Technology_Square_(Cambridge,_Massachusetts) )の開発進行は目覚ましい。Broad Instituteをはじめ、Bio Gen、 Modernaなどゲノム企業が集積している。https://www.google.com/maps/place/549+Technology+Square,+Cambridge,+MA+02139+%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD/@42.3580141,-71.0879146,667a,35y,39.29t/data=!3m1!1e3!4m6!3m5!1s0x89e370ac3e67c919:0x6648bb97c2ca7bc8!8m2!3d42.3642943!4d-71.0925646!16s%2Fg%2F11h08_k8kg?entry=ttu

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