都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

直立二足歩行の人類史(ジェレミー・デシルヴァ):化石の足と足首の研究から二足歩行の歴史と環境をゆったりと語る

2023-07-14 02:07:43 | マクロ経済

 樹上にいた類人猿が地上の草原で直立二足歩行を始める、歴史を化石から分析し、環境を想像する。作者は学者として、抽象に向かうのではなく、感情移入し化石のが生きていたころをの外敵や、ケガ、感情まで「想像」している。印象派でいうと、セザンヌの抽象化ではなく、ルノワールの肌の輝く裸婦など、ゆったりした世界にたゆたう感情移入だ。

 筆者はボストン科学博物館( https://en.wikipedia.org/wiki/Museum_of_Science_(Boston) )のサイエンス・エデュケーターから博士号、准教授のキャリアによるものだろう。

 ホミニン(ヒト亜科)の研究から、二足歩行の足跡からアウストラロピテクスの「ルーシー」( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC_(%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%AD%E3%83%94%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9) )発見が契機となった。

 二足歩行では、なんでも食べる雑食となるが、化石の尿酸や、アルコール代謝を遺伝子解析で分析できるとは驚いた。なお、食物も歯垢や糞から分析されている。

 逃げ足の遅い二足歩行は夕方から明け方まで活動する肉食獣対策として、夜は木の上に集団で生活していたようだ。

 また、歩き方も多様であり、今のホモ・サピエンス( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A2%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9 )の歩き方に至るまで色々あったようだ。

 また、二足歩行は効率的な食物確保ができたため、余剰エネルギーで脳の発達(脳はエネルギーを消費する)ができたとしている。

 ホモ・エレクトス( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A2%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%B9 )に至ると、150万年前は、アフリカから歩いて西は中国、インドネシア、東はスペインに至っている。

 この時期、脳が倍ほど大きくなったが、

①雑食のため植物繊維を消化する必要がないため、腸が短くなり、脳にエネルギーが回った

②火を使い、消化しやすい調理ができた、火で暖を取ることもでた

その結果

①重いものを抱えて動ける

②呼吸制御により多様な声が発達し言語につながった(50万年前位)

そして、ホモ・サピエンスの登場の舞台がととのった

 発達の結果、今の社会では:

・赤ん坊は歩くが、移動そのものを楽しみ、数千歩歩き、何十回と転ぶ

・12ヵ月で歩くとあるが、早い遅いという個人差がありIQなどとの相関はない

・女性はものを運ぶ能力が男性よりも高い:子供を運ぶためか、耐久レースでは女性の優勝が多い、疲労に対して耐性があるため

・足裏のアーチなど現代でも多様:薄い靴のほうがアーチ強化になる

・直立での副作用は椎甲板ヘルニアと膝の軟骨のダメージ、副鼻腔への粘液などの溜まり

・子供の脳と身体の発達のトレード・オフ:先にエネルギーを使う脳が発達、その後の思春期に体が遅れを取り戻し急激に成長する

・人類の祖先の生活はチンパンジー(仲間を襲う)かボノボ(平和主義)だったか:「善と悪のパラドックス」(リチャード・ランガム https://www.nikkei.com/article/DGXKZO67237420R11C20A2MY5000/ )

 

 われわれの「歩く」歴史はこうだったのか!と感じ入る

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする