「あれから1年」が報道されています。
長年定期購読しているNZZ(新チューリヒ新聞)の3月10/11日号でも3ページの特集。
(日曜日は休刊日なので、10日付に特集記事)
一面トップ記事
見出し部分を少しアップ
直訳すると「日本は動いている」ですが、内容からは「日本は前進する」または「前進せざるを得ない」といったところでしょうか。
冒頭では「同時に発生した未曾有の三重大災害にもかかわらず、現地の被災者自身を筆頭として、日本国民が優れた自己規律によって沈着冷静に行動し、パニックが起こらなかったことは賞賛に値する。同じ三重大災害が、地球の他の地域で起こったらどうだろうか?社会情勢不安な国々でなくとも、ここヨーロッパでも、多くの国々では大混乱に陥っただろう」と日本国民を絶賛しています。
但し、
日本における原発と政府と官僚の癒着を指摘、日本の政治家はいまだに、特殊な「カースト」であり、内輪もめと利権争いに極めて大きなエネルギーを浪費している、こうした現状が改善されなければ、予想されている次の大地震に効果的に対応することは不可能であろうとの評価です。
しかし、それは東電や日本政府の不備だけの問題ではなく、実は全世界の専門家が唖然として事態の推移を見ていたのであり、当時、拠り所になるような専門家の発言はなかった。これからの方向として、ドイツとスイスが決定した完全脱原発への道が現実的であるかどうかも今後の課題である。日本だけでなく、全世界が安全なエネルギーへの道を切り拓かなければならない、と結んでいます。
印刷版NZZには載っていませんが、NZZのHPには、日本留学中に大地震を体験した2人のスイス人留学生の経験談が紹介されています。地震直後2人とも両親の希望でスイスへ帰国しましたが、数ヵ月後から日本へ戻って再び留学生活を続けています。1人は「日本の政治体制は極めて保守的だから、あまり変化は期待できない」と懐疑的ですが、もう1人は「この大災害を機に新たな日本が生まれると思う、ますます日本が好きになった」と語っています。
NZZ・HPの
該当ページ(ドイツ語)
同じ3月10/11日付NZZの見開き2面特集
仮設住宅(福島県)
立ち入り禁止区域の自宅へ短期帰宅を待つ人々
ボランティア活動の人々
4つ本文記事の概略
牙のない番犬:国際原子力機関(IAEA)の問題
これまで核兵器生産の監視、原子力平和利用推奨が中心で、核エネルギーの安全性監視の面がおろそかにされていたのではないか。
帰郷できないもどかしさ
浪江町、川内村を例に、多くの被災者が仮設住宅で暮らし、不安な生活を強いられている現状を紹介。とりわけ放射線に汚染された瓦礫が大きな問題となっている。復旧作業には、ボランティアが活躍し、日本人だけでなく外国人も参加している。
殆ど全ての原発が稼動停止している日本
これまで節電によってエネルギー不足の問題は起こらなかったが、その他の発電システムにも問題が無いわけではなく、また輸入資源による発電は極めて高くつく。
大きなエネルギー革命への小さな第一歩
福島原発事故後、脱原発を明確に打ち出したのはドイツ語圏(ドイツとスイス)である。しかし、脱原発のため従来の発電方法へ戻れば、排気ガスによる大気汚染が再び問題となる。再生可能で環境を汚染せず安全なエネルギー源が求められるが、世界的に見て脱原発は、そう簡単ではない。現在30ヵ国が原発を利用しており、更に160の原発が計画されている。
追記
重要
ドイツ語圏3国は人口・国土面積の順にドイツ、オーストリア、スイスの3国です。夫々タイプが違います。
ドイツは保守党が原発推進、緑の党を中心とする革新党が反原発で、現実には30の原発がありますが、福島の原発事故後、保守党のメルケル首相が直ちに脱原発路線を打ち出しました。
オーストリアは約30年前の国民投票で原発反対が多かったため、国内には一切原発がありません・・・が、近隣諸国の原発が国境近くにあるという問題を抱えています。
スイス(原発5基)は国民の半分以上が原発支持だったのですが、福島原発事故で一挙に考え直し、脱原発に大変身。スイスは「君子豹変す」で、決定・実行がスピーディーです(多分、小国として周囲から圧迫され、グズグズしていられない長い歴史的経験があるせいでしょう)。その国から見ると、日本の政治はもどかしいと思います。
2月29日のNZZ記事:初めて外国人記者も原発を視察
3月3日のNZZ記事:独立した調査委員会が東電と政府を批判
長くなりましたので、これらの記事の内容紹介は省略。
東日本大災害に関する以前の記事
西班牙と日本
これからも
日本は沈まない
失敗から学ぶ
副作用
日本人への評価