理科実験についてこんなコメントをいただきました。
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4歳の娘がいます。
工作はいつの間にか親の発想を超えたものを作るようになりました。
子どもってどんな子も工作が天才的な時期があるんじゃないかなぁと
実感しています。
そんな娘を見て、そろそろ科学の実験みたいなことはどうだろうと思い、
自由研究大図鑑のような本から実験をしてみようかとやってみるのですが、
なにぶんうまくいきません。
まず、本に載っているような明確な結果が出ず、たいてい失敗します。
そうすると、何をしたかったのか私も子どももよくわからなくなり、
実験とは離れた別の遊びになりうやむやに終わるといった感じです。
私自身が理科の授業の実験が苦手でした。
答えが教科書に載っているのにどうしてやらないといけないのかと
思ったし、実験ってあまり教科書通りにいかないですよね。
結局、失敗したけれど本当は教科書のものが答えですというような授業の
流れも苦手でした(^_^;)
お風呂の中で子どもが自分で思いつくような実験ぽいものは楽しんで
やっているので、今はまだその段階でよくて、
実験の意味を理解し、結果の予測みたいなものができるくらいになる
時期までもう少し待ったほうがいいのでしょうか?
いつか実験を楽しみたいと思ったときのために、先生が子ども達と実験を
するときに大切にしていることって何なのかお時間があるときに
教えていただけると嬉しいです。長文失礼いたしました。
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3~5歳の子たちと理科実験をする時に大切にしていることを書いた
過去記事を紹介しますね。
幼い子たちと理科の実験をするとき、
手品のようなすごい科学実験よりごくごく素朴で当たり前で、
大人にとってはそんなの実験と言えるの?というくらいのものの方が、
物の科学的な性質がわかって喜ぶことがよくあります。
写真は氷と湯(お風呂の温度くらい)を使った実験です。
氷と湯(お風呂の温度くらい)が入った容器と水に浸けられるおもちゃを
用意します。それだけ……です。
湯につけた指を氷につけて感じる変化を楽しんだり、
お湯の中に氷を入れて、溶ける様子を観察したり、
子どもはさまざまな実験をしてみるはずです。
「お湯だと氷がすぐ小さくなるね。水だとどうなるの?」とたずねられたら、
水の入った容器も用意してあげるといいですね。
氷に塩をかけたらもっと冷たくなるのは本当か試してみるのもいいです。
氷が溶けるのにどれくらい時間がかかるか調べてみると、
そんな単純な実験もその日の気温や氷のサイズや
氷の凍り具合などで異なることがわかるでしょう。
氷で遊んだあとは、プリンの容器などに花びらや葉っぱと水を入れて
氷を作る実験も楽しいです。
氷が溶けること、水が凍ること
そんな小さなことでも、子どもは不思議で満たされるものです。
3、4歳の男のたちのグループレッスン。
男の子たちはとにかく好奇心を刺激されるような遊びが大好きです。
教室にある科学の実験用の箱を開けて、
「これしたい!」「あれしたい!」と大騒ぎです。
いろんな水と空気の実験をしました。オブラートに絵をかいて
水に浮かべたり、水の中での光の屈折を利用した実験をしたりしました。
水でふやかす園芸用のゼリーを水に浸けています。
ふやかしたあとで、シリンダーに入れて押すと、細かく粉々に砕けて
ジュース作り遊びができるので子どもたちはとても喜びます。
3,4歳児さんたちと理科遊びをする時は、
「ピンポン玉にフーッと息をかけたらどうなるかな?」
「うちわであおいだらどうなるかな?」といった質問をして、
「きっとこうなるよ」「ああなるんじゃない?」といった予想を
子どもたちに立てさせるようにしています。
そうすることで、物の性質や原因と結果のつながりについて理解が深まってきます。
理科遊びを楽しく実りのあるものにするには、いくつかコツがあります。
一つには、大人が実験を用意するということです。
子どもにさせるのではなく、子どもが抱いている興味に気づいて、
それを広げたり深めたりするような実験を用意してあげるということです。
たとえば、外で影を踏んで遊ぶのを喜ぶ時や、
「どうしてぼくの影はぼくより背が低いの?」と質問した時などに、
人形にいろんな方向からプッシュライトを当てる実験をしたり、
「ガラスのコップに入れた水の影は何色かな?」とか
「セロファンを使った工作をして、きれいな色の影を作ろう」と
誘ったりすると、子どもは乗り気で取り組むことと思います。
もう一つは、実験のなかに、創作活動を取り入れるということです。
実験して理解した原理を工作のなかで活かすようにすると、
興味がより深まるだけでなく理解が進みます。
↑日常のひとこまひとこまに、「どうして?」「なぜ?」と
不思議を味わう機会はたくさんあります。
ビー玉が転がり落ちる仕組みを作った後で、
穴の切り方によってでてくるビー玉のサイズが変わることを不思議がる◆くん。
確かに、穴を開けなくても、十字に切り込みを入れるだけで、
丸いものが通ってしまうのは不思議なのです。
わくわくさんを神とあがめている(お母さんの弁)◆くんは、
この日も、「わくわくさんは、こうやってこうやって作ってたんだよ」
と言いながら大量に紙コップを消費した後で、
最後に自分で考えた2階建ての家を作り終えて大満足の様子でした。
もとはわたしが作ってあげた「がちゃぽん」だったものに、
もう一つコップを重ねただけなのですが、
とにかくわたしでも……わくわくさんでもなく……自分で思いついて
作ったということでうれしくってたまらなかったようです。
2階があるのはどんなにすごくて面白いことか、
お友だちに自慢げに話してきかせていました。
ほかの子らは屋根の高さによって電車が入らなかったり
入ったりすることに苦戦していました。
何度も屋根を取っ払って作りなおし。
「あれぇ?」「あれぇ?」という声が聞こえていました。
この日、お迎え時に◆くんの小学1年生のお姉ちゃんも来ていました。
将来、宇宙に関わる仕事がしたいという宇宙大好きのお姉ちゃんです。
そこで、お姉ちゃんに先生になってもらって、宇宙の実験道具が入って
いる箱の中身について解説してもらうことにしました。
子どもたちはお姉ちゃんを取り囲んで宇宙の絵本などを楽しんでいました。
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5歳の☆くん。毎日、お父さんとお母さんを、「なぜ?」「どうして?」と
質問を責めにしている様子です。
先日も、
「地球は丸いのに、どうして海の水はバシャーンってこぼれないの?」
とたずねてきて、答えに迷ったそうです。
確かに地球が丸くて、逆さまになっている部分があるとしたら、
海の水がこぼれないのは不思議ですよね。
☆くんと、簡単な理科工作。
ペットボトルに目打ち(プッシュピンでもOK)で小さな穴を開けます。
穴の部分に水道の絵などを描いておきます。
水を入れて蓋をしめると、穴から水はこぼれませんが、
蓋をゆるめたり、手で押して軽く圧力をかけると、
ピューッと水が噴き出します。
↑ テレビです。
段ボールの細い箱に切り込みを入れて、
虫めがねを差し込んでいます。
覗くと、虫めがねにテレビのような画像が映っています。
懐中電灯をあてて
お化けをつかまえるおもちゃを作りました。
どうして、見えなくなったり、見えたりするのか、
不思議だったようです。
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<寺田寅彦のエッセイと夏の理科遊び>
小学生の頃、学校の図書室で、岩波少年文庫の
『科学と科学者のはなし』寺田寅彦エッセイ(池内了編)を読んで
えらく感激した記憶があります。
古本屋でその本を見つけたので、買ってきてさっそく目を通しました。
今、読んでも、とても面白かったです。
読みながら、紙芝居か、実演で、子どもたちにこの本の面白さを
伝えたいな~という思いが湧き上がってきました。
まぁ、そんな大がかりなことをする前に、教室の科学クラブで子どもたちに
この本をもとに小さな実験をいくつか見せてあげて……
それからブログでこの本を紹介して、
夏休みにこの本に目を通した親御さん伝いに、寺田寅彦の思いが
少しでも子どもたちに浸透していくといいな~と感じて……
さっそくブログの記事にすることにしました。
まず、大好きな『茶碗の湯』というエッセイ。
物理学者の寺田氏が、湯の入った茶碗ひとつを前にして、繰り広げる話です。
茶碗の湯って、何のおもしろみもないようですが、よく気をつけてみて
いると、だんだんにいろいろの微細なことが目につき、
さまざまな疑問が起こってきます。
湯の面から立っている白い湯気は、熱い水蒸気が冷えて、
小さなしずくになったもの。雲や霧の仲間です。
黒い布をむこうにおいてすかすと、粒の大きなしずくはチラチラ見え、
日光にすかせば、場合によっては、虹のような赤や青い色がついている
そうです。
これは白い薄雲が月にかかったとき見えるのと似ているそう。
茶碗から上る湯気をよく見ると、熱いかぬるいかおおよそわかるのだ
とか。熱い湯は温度が高くて、周囲の空気より軽いため、どんどん
さかんにたちのぼり、湯がぬるいと弱いのです。
湯気が上るときはいろいろの渦ができます。茶碗の上で起こる渦の
大じかけのものは、雷雨のときに空中に起こっている大きな渦です。
白い茶碗に入っている湯は、ひなたで直接日光に当てて底を見ると、
ゆらゆらした光った線や薄暗い線が不規則な模様になって動いている
のが見えます。夜、電灯の光を当ててみると、もっと鮮やかに見えます。
茶碗の湯が冷えるのは、湯の表面の茶碗の周囲から熱が逃げるため。
表面にふたをしておくと、茶碗に接したところでは、
湯は冷えて重くなって下方へ流れ、真ん中は上へ。
ビーカーの底をアルコールランプで熱したときの水の流れが、
湯の中の糸くずの動きで見ることができるのだとか。
一杯の茶碗の湯は、ほかにも「かげろう」のでき方、湖水や海の水の
流れ方、山谷風、モンスーンなどがどうやってできるのかを、
わかりやすく教えてくれるそうです。
寺田氏の言葉に次のようなものがあります。
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俗に明きめくらというものがあります。
両の眼は一人前にあいていながら、肝心の視神経が役に立たないために
何も見ることができません。
またたとい眼あきでも、観察力の乏しい人は
何を見ても、ただほんのうわつらを見るというまでで、
何一つ確かな知識を得るでもなく、ものごとを味わって見るでもない。
これはまず心の明きめくらとでも言わなければならない。
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子どもたちを『心の明きめくら』にしてしまってはいけませんね。
子どもたちとともに、いろんなものをゆっくりじっくり味わいたいな~
と思いました。