という記事のなかで、、子どもの能力、興味、学習、表現スタイルの好みについての情報を体系的に集め、
「全才能ポートフォリオ」という形で記録するという海外の学校の取り組みについて書きました。
先生方は絶えず子どもの得意な分野に関心をしめして、情報を収集し、情報を更新しているそうです。
虹色教室でも、ひとりひとりの子どもの得意分野、才能、興味、学習や表現スタイルについて、どんなささいなことも把握し、親御さんと共有するようにしています。
また、それぞれの子の個性の芽が見えたら、それを育む機会をたくさん設けるようにしています。
どれもほんのささいなことばかりなのですが、どんな風に個性の芽を感じ取り、育もうとしているのか、プレ年少のAくんのレッスンの様子から、紹介しますね。
ここのところのAくんは、何だか元気がありませんでした。
年中のお兄ちゃんのBくんといっしょに教室で過ごす間、十分、Aくんが楽しめそうなゲームなども、緊張した面持ちで、「できない。難しい」と言ったり、
自分で遊びを選ばず、周囲の流れになんとなくあわせながらつまらなそうにしていたり、笑顔が減って、言いかけた言葉を飲み込んでしまったりする姿が目立ちました。
Aくんらしさがきちんと発揮されていないのを感じたので、お兄ちゃんとは別日にAくんだけのレッスン日を設けることにしました。
そうして、Aくんが自分のやりたいことを誰にも邪魔されずにやりつくしたり、Aくんのお母さんもわたしも、Aくんが話す言葉にていねいに耳を傾けたり、
Aくんという子がどんな子なのか、どんなことを考え、どんなことに好奇心を抱き、どのような才能や可能性を秘めた子なのか、全身で感受することにしました。
Aくんのレッスン日、0歳の弟くんといっしょにニコニコしながら教室に入ってきたAくんは、これまで教室でしたことがある遊びをひとつひとつていねいにやりはじめました。
新幹線や電車のNゲージを横一列に隙間なく並べてから、サイズの大きな恐竜や動物の人形を4体ずつ対面で並べました。
どちらも、以前Aくんがそうやって並べだしたら、お兄ちゃんのBくんや他のお友だちがおもちゃを借りたがって、結局、貸す貸さないの小競りあいで終わった遊びでした。
恐竜や他の動物を対面させながら、Aくんは、「これは同じ種類、これは、こっちと同じ種類、これはこっち」と言いながら、
どれをどちらの仲間に入れるか、あれこれ試しながら、そうして迷うことを心から楽しんでいました。
そういえばAくんは、2歳代の頃、動物のフィギアのなかから水の中に生息する生き物を選び出して、ブロックの海の基礎板(南極か北極の海を表現しているプレート)の上に並べていくことが好きでした。
当時も、Aくんは誰かに教わったわけではないけれど、1匹も間違わずに水のなかの生き物と陸の生き物に分けていました。
当時は迷いがなかったのに、成長したAくんが、今、頭を悩ませつつ恐竜や動物を分けているのは、水の中の恐竜とくじらは同じ仲間に入れてもいいのか、
自分が大好きな強い生き物たち」というくくりはセットにしていいものか、小さい恐竜と大きい恐竜は同じ種類でも同じ側においてもいいものか、
また対面で向き合わせるということは戦わせることでもあるので、それなりに、どれとどれがあうのか考えなくてはならないけどどうしたものか、
Aくんのなかにある分類の仕方が複雑になってきたからのようでした。
いったん「こうだ」とおいてみてから、「やっぱりこれはちがうのかな」と差し替えるときに、自分で自分を納得させる理由に思いをめぐらせることや、
それを言葉にして表現することに何よりも意識を集中させているところにAくんらしさがありました。
いったんは別の種類としながら、算数のレッスンのときに、「2の数の玉」の上に好きな生き物を選ぶ課題で復活していた恐竜同士ではないけれど、水のなかで暮らしている2匹。
この選んで仲間同士で集めることは今のAくんを心からわくわくさせるようで、算数レッスンの際は、数ごとにおいた動物をばらして元に戻さずに、
「全部並べておいておいて」と言って、どんどん大きな数になるまで続けたがった後で、数ごとに並べた人形の前に鎮座して、いろいろな思いをめぐらせていました。
次回に続きます。