虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

ネガティブな体験が子どもの力になる時 2

2021-07-07 11:17:37 | 子どもの成長

周囲を困らせたり心配させたりする行動が増える理由は、

子供がそれまでとは異なるより高度なレベルの課題に取り組みだした

ことにある場合はよくあります。

新しくて難しい課題に取り組んでいると、思うようにいかないことばかりで、

すぐにいっぱいいっぱいになってしまいます。

Aちゃんの例でいうと、こんな感じです。

体でこなしていたことは、やろうと思ったことをやり遂げたらすんだけれど、

説得したい、思ったことを言いたいという気持ちは、

相手が取り合ってくれなければ、不完全燃焼を起こすのです。

といっても、幼い子扱いされて、

「これしてみる?」「こうしてあげようか?」とご機嫌を取られるだけだと、

余計にイライラします。

 

そんな時は、ちょうど等身大の活動が大切です。

「Aちゃん、先生の部屋に行って、次にみんなでしたらいいと

思うものを見つけてよ。Aちゃんが考えてくれる?」とお願いすると、

口をとがらせていたAちゃんの目が急にきらきら輝きだすのを感じました。

真剣な顔でこっくりします。

Bちゃんに声をかけると、「いっしょに行く」と部屋の靴置き場まで出てきました。

サンダルを履くBちゃん。すると、BちゃんのサンダルとAちゃんの

サンダルは色ちがいではあるけれど、形が似ていることに気づきました。

「いっしょだね。サンダルだね」そう言いながら、お互いの足先を差し出して、

サンダルを見比べるうちに、ふたりの表情はみるみる明るくなりました。

すっかり有頂天になったふたりは、世界中にあるどんなものでも

自分たちで発見できるような勢いです。

すると、小学生のCちゃんが、

「わたしもいっしょに道具を見に行く」と言いました。

「Cちゃんもいっしょにきてもいい?」とたずねると、

ふたりは「どうしようか?」と相談しあうように見つめあって、

ちょっと考えてから、「いいよ」と言いました。

大きなお姉ちゃんが自分たちの後ろをついてくるのがうれしい様子です。

わたしの部屋について、工作道具とゲームを選んだあとで、

Aちゃんはベッドのところで、ごろりと転がってみせました。

Bちゃんも真似してやってみました。

今度はサンダルを脱いで、畳のところにあがって、

一通り部屋を観察してまわりました。

Bちゃんも同様にし、心から楽しそうに笑いました。

Cちゃんは、やれやれという顔をしながらも、

小さい二人がちょっとした冒険をし終えるのを待っていて、

荷物を手に抱えて、「まだ持てるから、もっと手伝えるよ」と言いました。

 

ゆっくりと自分たちのペースで動いてみた後で、AちゃんもBちゃんも、

自分たちの考えを口にし始めました。

「もし、ベッドで寝ている時にごろごろってして、

木のところを飛び越えてしまったら、落ちるんじゃない?」

「このスリッパは、誰かがはいてきて、

置いていったんじゃない?だから、その人ははだしなんじゃない?」

「靴下かもしれないよ」

「この電気とこの電気はいっしょだね。この電気も。でもこれは違うよ。

懐中電灯だから」

そうやって、見たことを言葉にしてみて、フィードバックを得ながら、

論理的に考えたり、イメージを膨らませたり、疑問を抱いたり、

推測したりすることを集中的に試して、

学んでいく時期のようでした。

 

子供たちと過ごす時、わたしは 『多元的知能の世界』という著書に書かれている

「経験の結晶化」と呼ばれる現象が、起こりやすいように気をつけています。

「経験の結晶化」とは、

子どもがある領域に固執し、高い水準スキルを短期間に身につける状態

のことです。

それは、AちゃんとBちゃんが経験したような

日常の隙間にあるささやかな体験から

始まることが多いです。

日常の結晶化は、子供が新しい高いレベルの活動に着手する時

よく起こりますから、子供が困った行動を繰り返すように

見える時期に起こりやすいです。

 

<経験の結晶化について>の過去記事です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 『多元的知能の世界』によると、
知能は発達の時期によって異なってあらわれるので、

評価と育成は、幼児期と学校に通う年になった子では
まったく違う方法をとらなくてはならないそうです。

幼児期というのは、
自分の興味や能力に関する何かを発見することができる時期
なのだそうです。

才能に恵まれた子の場合、
その発見は自然な「経験の結晶化」を通して
自分の力でなされるそうです。

経験の結晶化?

聞いたことがない言葉ですよね。

ある領域における何かおもしろいことに
子どもが強い感情的反応をしるす場合

それは、その子がその領域に相性のよさを感じている…
ことをあらわしているそうです。
特に音楽と数学の領域では、こうした「経験の結晶化」が起こりやすいそうです。

大人が、材料、設備、他の人との出会いをうまく仕組んであげると、
「経験の結晶化」が起こって、
子供たちは自分自身に向いているものを見つける
チャンスも増えるようです。

私も虹色教室で、幼児が、
数学的な秩序の美しさや、論理的に考える思考や、
化学変化の面白さ、鉱物のひとつひとつちがう模様や
ブロックや積み木の作り出す世界に
強く感情を揺さぶられる姿をたくさん見ています。
そうした経験は、その子の潜在的な才能を刺激して
その子の内面に
その後の才能へつながる結晶を作るようです。

子どもの才能はさまざまで、MI理論の指摘する
基本的な7つと1つ(言語的知能 論理・数学的知能 空間的知能 音楽的知能 身体・運動的知能 人間関係的知能 内省的知能 博物的知能)
の中でも、周囲から評価されやすいものもあれば、
その能力になかなか気づいてもらえない知能もあります。

特に、人間関係的知能や内省的知能は軽視されやすいな…と感じています。
この2つの知能に関しては、またの機会にくわしく紹介しますね。

話をもどしますが、

子どもの個性に配慮して教育する

ということは「経験の結晶化」が起こるのをうながす意味でも大切です。
結晶化が起こると、子どもはその領域に固執し、高い水準スキルを短期間に身につけるのだそうです。

「経験の結晶化」すてきですね。

どの子にも自分の才能との良い出会いがあることを…
心から願っています。

 

ネガティブな体験が子どもの力になる時 3 に続きます。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。