幼児期の子どもが心的なパターンを創造していくには、どんな環境が必要なのか。
レッジョ・エミリアにしても、モンテッソーリにしても、そのほかの幼児の認知の発達をていねいに研究している方々にしても、さまざまな貴重な実践方法を提示しています。
そうした実践のひとつひとつに向き合ってみたら、どうだったのか。
上手くいかない場合、どのような工夫が必要だったのか。
自分の子らや虹色教室の子どもたちと過ごす中で発見したことを順に整理していきたい、と目論んでいます。
とはいえ、あれもこれもと盛り込もうとすると、読んでいる方々に混乱を与えてしまうでしょうから、
まず最初に、赤ちゃん期から青年期までの子どもに必要な働きかけと、発達研究の成果をバランスよく伝えてくれる
『よみがえれ思考力(ジェーン・ハーリー著)』で取り上げられている<就学前の子向けのガイドライン>をベースにして教室で発見したことについて書いていこうと思います。
ここから下の赤い文字で書いている部分は、『よみがえれ思考力』からの引用です。
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★六歳以前の子どもの仕事は、周りの世界を理解する方法を学習することであり、学習に関わる神経構造が関与しない意味のない教材を丸暗記させることではないことに気をつける。
★心的パターンは感覚連合のネットワークの上に作られる。
感覚的な世界のパターンに注意を向かせるように子どもたちに仕向ける。たとえば、「これはどんな味がする?」とか「それは何の形に似てる?」という問いかけをする。
★日常的な出来事の中で、子どもが関係や意味を理解できるように助けること。
たとえば、子どもがくどくど聞き続ける「なぜ」という質問は、出来事のつながりをつけたいニードの表現法の一つである。
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上の3つのことは、幼児との関わりでとても大切なことですが、親子関係でも園などの先生と子どもの間でも軽視されがちなことのように感じます。
幼児は、目で見ること、耳で聞くこと、手触りや匂い、味などに注意を向けて、言葉で大人と共感しあう中で、感覚的な世界のパターンに気づいていきます。
幼児の暮らしが、「とにかく何かをしなくては」「できるようにならなくては」とアウトプットをして周囲に評価されることを中心に回っていることはよくあります。
そんなふうに忙しくしていると、長い時間、何かを覗きこんでみたり、耳をすませたり、砂や粘土の感触と戯れたり、匂いを嗅いだり味わったりしながら、
大人とおしゃべりする時間は、どれも無意味で無駄な時間のようにしか感じられないかもしれません。
でも、それは大きな間違いのようです。
幼児の心的パターンは、感覚連合のネットワークの上に築かれるのですから。
以前、こんな記事を書いたことがあります。具体的な方法を知りたい方は、リンク先に飛んでくださいね。
★幼児が「よく考える」ようになるためのいくつかのステップ 1 <見る>
★幼児が「よく考える」ようになるためのいくつかのステップ 2 <見た後で>
★幼児が「よく考える」ようになるためのいくつかのステップ 3 <聞く>
★幼児が「よく考える」ようになるためのいくつかのステップ 4 <聞いた後で>
★幼児が「よく考える」ようになるためのいくつかのステップ 5<感じる>
子どもが関係や意味を理解できるようになるために、子どもの体験するさまざまな出来事をていねいに解説を添えたり、子どもが自分でやってみれるようにしたり、
子どもにもわかるレベルの間違った推理をして、「ちがうね~」と考えさせる機会を作るようにしています。
ちょっとした工作をするのも、役立ちます。
次のリンク先は、2歳6ヶ月の◆ちゃんのレッスンの様子です。
◆ちゃんの一つひとつの体験に、ゆったりていねいに付き合うことで、◆ちゃんはさまざまなことに疑問を持ち、周囲の物事を関連づけ、
論理的に考えていく力を発展させていきました。この春、年中さんになりますが、観察力、ゲームのルールや物語などの理解力、分析する力、言葉で表現する力、エネルギッシュに物を作り出す力など、どれもしっかりと育っています。
これは、春休みの算数クラブに来た新年長さんたちの工作風景です。
ゴムで飛ばす鉄砲のようなものや弓矢のようなものを作って得点ゲームを作っています。
ゴムが引っかからず、うまくいかないとき、「どうすればいいのかな?」と一緒に作品を眺めていたら、「そうだ、引っかけるところを作ればいいんだよ」と言いながら、ハサミで逆三角形の切り込みを入れていました。
また、お友だちの作品と同じものを作ろうとして、真似してストローを貼り付けたものの、実際、ゴムをかけてみると、ゴムがストローと鉄砲の間に食い込んで飛びませんでした。
「どうしてだろう?」と、うまくいかない部分を観察していると、「わかった、セロテープを真ん中らへんに貼ってるからだ。だから、ゴムが入っちゃうんだ」とうれしそうに言っていました。
「こうよ」と教えるのではなく、「どうすればいいかな?」「どうしてだろう?」と一緒に首をかしげながら、物をさまざまな視点から観察してみる体験は、見る力の質的な変化をうながします。
次回に続きます。