小学5年生の自閉症のAくんは、教室に着くなり、「森之宮駅で6分電車が遅れたから遅刻した」と言い続けていました。
それが途中から、「森之宮駅で宇宙人が乗ってきたから6分遅れた」という話になり、
送ってきたお父さんがたしなめても、その話ばかり繰り返していました。
Aくんは同じことを何十回も言い続ける癖があります。
この日も、お父さんから、「その話はやめて先生の話を聞きなさい」と注意されても
どこ吹く風で、「森之宮駅で宇宙人が乗ってきたから6分遅れた」と言い続けていました。
そこで、「Aくん、森之宮駅で宇宙人が乗ってきた話を絵本にしてみる?
画用紙を折って両面テープでひっつけていくと、すてきな絵本ができあがるよ」と言うと、
「絵本作るよ」と乗り気でした。
Aくんはこれまで画用紙に電車などの絵を描くことはあっても、絵本を作ったことはありませんでした。
絵の中に人や動物の姿を描くのも見たことがありません。
イメージすることに苦手があるので、ごっこ遊びをした経験もありません。
そんなAくんが初めて作った絵本なのですが、きちんとストーリーになっていて、
すばらしい出来でした。
勉強の時間が来たのであせらせてしまったため、最後の方が乱雑な塗り方になってしましました。
Aくんは自分の作った本を虹色文庫の1冊にするのを許してくれました。Aくん、ありがとう。