このところ重い話題が続いていたので、息ぬきに10年ほど前の家族の記録を紹介します。
(子どもの頃から、日々の出来事を何でも文字にして書き残しておくのが好きな私。我が家には、長女が2歳になるまでの育児マンガにはじまって、
娘や息子のおしゃべりや家族会議の記録や喧嘩の中継などが、
写真好きの人のアルバムさながらにたまっています。これはその一部)
★家族の記録<思春期の子と父親と>
★<家族の記録 吉本喜劇脚本風に書いたある日曜日の朝>
★マネーゲーム
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<あこがれの高校生>
☆さんは高校1年生です。
知人の娘さんで、以前、勉強を見ていた間柄です。
「元気ぃ? みんなどうしてる?」
久しぶりにひょっこり玄関先に顔を出した☆さんの姿に、家の中から歓声があがりました。
この☆さんは、中学時代、試験が近づいて気分が煮詰まると、
我が家に来てホットケーキを焼くなどしていたので、
うちの子やうちの子の友だちに絶大の人気を博しているのです。
「☆さん~!☆さん~!
私●部には入らなかったんです。▲部入って、それで先輩ねー面白いんですよ!▲部!!」
ちょうど遊びに来ていた娘の友だちの○ちゃんが、声を裏返らせてキャーキャー言いながら話かけるので、
☆さんはニヤッと笑って、
「相変わらずだねぇ~おばちゃんとこは」と言いました。
「☆さんは、今、どうしているの?
うまくやっている?」とたずねると、
「まあね。ぼちぼち。」という返事。
「聞いて~おばちゃん。
今、ふたつもバイト掛け持ちしてんねん。」
「ふたつも?」
「そ。
それにはふかーい分けがあるのよ。最初○歯科に面接に行ったとき、断られてんやんか。
補欠ってことで。
次に、郵便局でバイトはじめてん。そしたら、○歯科から電話があって、バイトの子がやめたから来てくださいって。郵便局は期間が決まっているからそのこと説明したら、それでも来てみてって言われて」
「大変でしょ」
「うん、大変」
「でも☆さんはたいした子だから大丈夫ね」
「がんばるわ」
こんな風にふたつもバイトを掛け持って、
力強く大人への階段をのぼりだした☆さんですが、
小学4年の時の愉快で愛らしい姿は、記憶から消えたことがありません。
ある夏の日、いきなり玄関先に現われて、
「おばちゃん、ものは相談やけど」と息をハァハァ言わせながら言いました。
「あのさ、わたしと○くんと○さんで、秘密基地作ろう思うてんねん。
そこでカメとか虫とか飼おう思て」
「それはいいね」
「それで、おばちゃんとこのベランダ貸してもらえんかと思って」
「……うちのベランダを?」
事情が飲み込めない私。
「……じゃ、うちのベランダでヘビを飼ったり、イモリ飼ったりしよってわけ?」
「ちがうよ!カメとか虫!」
このときは、びっくりしたのと慌てたのと
おかしいので頭の中がひっくり返ってしまいました。
秘密基地案を丁重にお断りしてから5年後、☆さんが、
「友だちとフリーマーケット開きたいと思うねんけど、
おばちゃん責任者になってくれへん?」と言ってきました。
「私が?まぁ、いいけど。
手続きやらお金がいるんでしょ」
「それをおばちゃんにしてもらおう思て言ってるんやんか」
そのときも、「カメとか虫!」と言ったときと同じで、
こちらの飲み込みの悪さをやや非難するような……
頭の中が新しい計画で満杯で余計なことは考えてられないという
様子でした。
「そらそうやろね。でも私も初めてのことやし、調べておくわ」
そうしてチャレンジしたフリーマーケットは、我が家の娘や息子にとっても
私にとっても楽しい思い出となりました。
そして今日、
「あいかわらずやねーおばちゃんとこは」と呆れたように、懐かしむように笑う☆さんを前にすると、
あんなに可愛らしいおちびさんだった子が、
私の背を追い抜いて、大人のような口をきいて、
自分の毎日をがんばって生きているのが嬉しくてたまらなくなりました。
「じゃあね、☆さん」
「んじゃね。また来るわ」
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(子どもの頃から、日々の出来事を何でも文字にして書き残しておくのが好きな私。我が家には、長女が2歳になるまでの育児マンガにはじまって、
娘や息子のおしゃべりや家族会議の記録や喧嘩の中継などが、
写真好きの人のアルバムさながらにたまっています。これはその一部)
★家族の記録<思春期の子と父親と>
★<家族の記録 吉本喜劇脚本風に書いたある日曜日の朝>
★マネーゲーム
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<あこがれの高校生>
☆さんは高校1年生です。
知人の娘さんで、以前、勉強を見ていた間柄です。
「元気ぃ? みんなどうしてる?」
久しぶりにひょっこり玄関先に顔を出した☆さんの姿に、家の中から歓声があがりました。
この☆さんは、中学時代、試験が近づいて気分が煮詰まると、
我が家に来てホットケーキを焼くなどしていたので、
うちの子やうちの子の友だちに絶大の人気を博しているのです。
「☆さん~!☆さん~!
私●部には入らなかったんです。▲部入って、それで先輩ねー面白いんですよ!▲部!!」
ちょうど遊びに来ていた娘の友だちの○ちゃんが、声を裏返らせてキャーキャー言いながら話かけるので、
☆さんはニヤッと笑って、
「相変わらずだねぇ~おばちゃんとこは」と言いました。
「☆さんは、今、どうしているの?
うまくやっている?」とたずねると、
「まあね。ぼちぼち。」という返事。
「聞いて~おばちゃん。
今、ふたつもバイト掛け持ちしてんねん。」
「ふたつも?」
「そ。
それにはふかーい分けがあるのよ。最初○歯科に面接に行ったとき、断られてんやんか。
補欠ってことで。
次に、郵便局でバイトはじめてん。そしたら、○歯科から電話があって、バイトの子がやめたから来てくださいって。郵便局は期間が決まっているからそのこと説明したら、それでも来てみてって言われて」
「大変でしょ」
「うん、大変」
「でも☆さんはたいした子だから大丈夫ね」
「がんばるわ」
こんな風にふたつもバイトを掛け持って、
力強く大人への階段をのぼりだした☆さんですが、
小学4年の時の愉快で愛らしい姿は、記憶から消えたことがありません。
ある夏の日、いきなり玄関先に現われて、
「おばちゃん、ものは相談やけど」と息をハァハァ言わせながら言いました。
「あのさ、わたしと○くんと○さんで、秘密基地作ろう思うてんねん。
そこでカメとか虫とか飼おう思て」
「それはいいね」
「それで、おばちゃんとこのベランダ貸してもらえんかと思って」
「……うちのベランダを?」
事情が飲み込めない私。
「……じゃ、うちのベランダでヘビを飼ったり、イモリ飼ったりしよってわけ?」
「ちがうよ!カメとか虫!」
このときは、びっくりしたのと慌てたのと
おかしいので頭の中がひっくり返ってしまいました。
秘密基地案を丁重にお断りしてから5年後、☆さんが、
「友だちとフリーマーケット開きたいと思うねんけど、
おばちゃん責任者になってくれへん?」と言ってきました。
「私が?まぁ、いいけど。
手続きやらお金がいるんでしょ」
「それをおばちゃんにしてもらおう思て言ってるんやんか」
そのときも、「カメとか虫!」と言ったときと同じで、
こちらの飲み込みの悪さをやや非難するような……
頭の中が新しい計画で満杯で余計なことは考えてられないという
様子でした。
「そらそうやろね。でも私も初めてのことやし、調べておくわ」
そうしてチャレンジしたフリーマーケットは、我が家の娘や息子にとっても
私にとっても楽しい思い出となりました。
そして今日、
「あいかわらずやねーおばちゃんとこは」と呆れたように、懐かしむように笑う☆さんを前にすると、
あんなに可愛らしいおちびさんだった子が、
私の背を追い抜いて、大人のような口をきいて、
自分の毎日をがんばって生きているのが嬉しくてたまらなくなりました。
「じゃあね、☆さん」
「んじゃね。また来るわ」
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