虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子ども同士の関わりの中で自己有能感を伸ばすには……? 4

2011-06-22 13:04:37 | 自己肯定感を育む

ユースホステルのレッスンにはまだ2歳になったばかりの□くんも参加していました。
語彙の数も多いし、運動能力も発達している笑顔のかわいい子です。
□くんのお母さんは、□くんをそれはかわいがっていて、たくさん声かけをしています。
□くんも、2歳になったばかりなのに、「こんな言葉を知っているの?」と思うほど
よくしゃべります。

ただ、背後からお母さんに話かけられて、□くんはいつも前を向いたまま
お母さんの方を振り返らずにお返事していたり、
終始ご機嫌はいいものの、
□くんの感情の動きが読み取りにくかったりするところがありました。

「どうしてかな?」と思いつつ様子をうかがっていると、
2歳の□くんがお母さんのお守りをするような形で、
お母さんの声かけに自分を合わせてあげていて、
自分の考えや気持ちは引っ込めているように見えました。

そこで、□くんのお母さんに少しの間、控えておいていただいて、
色画用紙で作ったピンクの豚を□くんの方へ差し出しました。
すると、□くんは、それをトコトコと歩かせるようにして
遊び出しました。
私ももう一体ピンクの豚を手にして、
静かに□くんを真似て豚を歩かせる真似をしました。

ここで私が、「ぶぅぶぅぶぅ~」と言いながら
□くんの方に自分の豚で働きかけたりしなかったのは、
□くんがゆったりとしたペースの子で、
真剣に周囲を観察しながらいろんなことに気づいたり考えたりしている
ようだったからです。

□くんの中からアイデアや気持ちが生まれてくるまで、
こちらは少しの間、静かに待ってあげなくてはならないと感じたのです。

すると、□くんは、急に考え深い表情になって
自分の紙の豚をさかさまにしてお腹を開いて、こんな風になっているのかと驚いたような顔をして、
次に私も同じようにそれを見ているか確かめるようにこちらを見て
パァッーと花が咲いたような明るい笑顔を浮かべました。
それから、自分から「はい」と私に自分の豚を渡して、
「交換しよう」とうながすそぶりで、私の豚を手にとって、うれしそうに笑いました。

□くんは、お母さん以外の人や子どもを見ると、フリーズしたように固まって
茫然と見続けるだけでした。
まだ2歳になったばかりですから、成長としては
それでも十分なのですが、
「怖がっているわけではないのに、どうやって働きかけたらいいのかわからないんだな。今まで
いろいろな人との関わり方のパターンを見たり体験したりしたことが
ないんだろうな」とも感じていました。

この豚の交換のアイデアは、この少し前に、
★ちゃんと○ちゃんがお手紙交換しているのを目にしていたので、
それをさっそく豚でためしてみたのかもしれません。
□くん、なかなか利発な子のようです。

□くんは、□くんのペースを待って、□くんの気付いたことに共感するようにすると、
物と物の隙間の広い狭い、おもちゃとおもちゃの隙間の長い短い、段差の高い低い、
くんできた水の冷たい、ぬるいなどに非常に敏感で、
その微細な差を比べてこちらに伝えようとし、
こちらが□くんの面白いと思うものに共感すると、心から満足そうな様子になりました。

それまで、□くんの非言語のやりとりが少ないことがちょっと気になっていました。
お母さんとたくさんおしゃべりしているわりには、
心のこもらない調子で、質問テストに答案を書きこむような調子で、お母さんの方は向かずに、
よそ見しながら、
お返事している姿が多かったのです。
「見て!聞いて!伝えたいことがあるの!」という□くんから発信するものが
あまり感じられなかったのです。
それが、□くんのペースを待って、□くんの思いをきちんと受け止めるような
接し方をすると、
□くんは自分側から周囲に向かって伝えたいさまざまな思いを抱いていることがわかりました。
大人以上に微細なものまで感じ取り、いろいろなことを考えてもいたのです。

次回に続きます。


子ども同士の関わりの中で自己有能感を伸ばすには……? 3

2011-06-22 07:44:52 | 自己肯定感を育む


前々回の記事に書いたのですが、ユースホステルのレッスンには娘がボランティアとして参加していました。
(朝、ユースホステルから直に学校に通ってました)

そのおかげで、帰宅後、娘からの指摘で、私が気付かなかった子どもたちの姿について
知ることがいろいろありました。(私のうっかり……への指摘もさまざま……)

娘は、「★ちゃんね……おねぇちゃん、隠れよう!隠れよう!って、
すぐに見つかる場所に隠れては、喜んでいてかわいかったわ」と言ってから、


「隠れようってアイデアが、うれしくてうれしくてたまらないみたいだったのよ。
その割に絶対見つかるような場所にばかり隠れたがるの。

でも、★ちゃんって言ってることがしっかりしていて
知的な面で賢い子だったから、
幼いから見え見えの場所に隠れようとしていたわけでもないみたいだった。

最初に、靴箱の中にろうそく(工作で作ったもの)を隠したのが、よっぽど
うれしかったみたい。
それで、その時のワクワクした気持ちを何度も再現したかったみたいなのよね」
とつけ加えました。

それから、こんなことも言いました。

「●くん、2歳なのにしっかりもののお兄ちゃんみたいだったね。□くんもうそみたいにかわいい子だったね。

★ちゃんも、○ちゃんも本当にかわいかったわぁ~。
★ちゃんと○ちゃんと遊んでいるときに、★ちゃんの方を気にかけてあげないといけないように
見えたから、★ちゃんを優先して、何か作ってあげたり相手をしてあげたりすることが
多かったの。

それで、○ちゃんのことが気になっていたんだけど、
○ちゃんって、ときどきかんしゃくは起こしていたけど、
けっこうお姉さんだし、心が強いよ。
自分が後になっているときも、笑いながら、それでもいっしょに遊んでいるのを
楽しめていた。
それに★ちゃんが少し危ない悪ふざけをしているときは、
★ちゃん、そんなことしたらダメだよ、お母さんに怒られるよ、とか注意していて、
悪いことと良いことがよくわかっているしっかりしている面があった」

娘は、私が見えていなかった細かい面まで感じ取っていた模様。
私も勉強になりました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2、3歳の子とその親御さんと1日いっしょに過ごしてみると、
この年代の子を育てる大変さやむずかしさをひしひしと感じました。

私は●くんのいい子過ぎるところがちょっと気になったり……。
といっても、
親御さんが押さえつけているからいい子にしているのでなくて、
ただ発育が良くて心が安定していて、
知能も高いので大人の説得を言葉で理解できるというだけなのです。

創造力や想像力が高い子なので、自分で発散できているのでいい子
ということもあるので、心配するのもおかしいのですが……。

でも、幼い子って揉め事ついでにギャーギャー泣きわめいて、
その結果、
ストレスや疲れが取れて、心がスッキリ気持ちよくなる……
ということもしょっちゅうあるし、
ネガティブな感情にどっぷりつかることも大事だと思うのです。

次々起こるくだらない揉め事が、
ストレス解消と感情の学習のチャンスというか……。

ですから、揉めそうになっても、大人の言葉ですぐに聞き分け良く納得してしまうと、
そういう体験をしそびれるかなぁと気にはかかるのです。
最近は、幼稚園でも、揉め事は、すぐに先生が悪い部分を指摘して、言葉で解決してしまうようです。
怒りやくやしさ、悲しさといったネガティブな感情も
言葉じゃなくて、
自分の感情を興奮させて、その中で身体でわかるのが大事だなとも思っているのです。
きょうだいが少ない子は、こうした体験が少ないですよね。

●くんのお母さんはナチュラルに子育てする方で、
子どもに必要な大人から見ると負の体験の必要さもよくわかっておられました。
ただ、今ある子育て環境の中で、他の親や子との関係の中で、
どのように一つ一つの出来事に
対応していけばいいのか、
親として一本筋の通ったしつけは必要だろうという思いや、
男の子として大人の目のないところで育つものの大事さなどを考えて
いろいろ迷うことも多いようでした。

確かに難しい……。でも、そうして悩めているから、
●くんはしっかりと育っているのでしょうね。


次回に続きます。





子ども同士の関わりの中で自己有能感を伸ばすには……? 2

2011-06-22 05:05:27 | 自己肯定感を育む


ユースホステルのレッスンで「現代の子育ての難しさ」として気になったことがありました。

子ども同士の揉め事の見守り方です。

今回、レッスンに参加してくださっていた方は、
どの方も子どもの気持ちを受容する一方で、しつけもきちんとし、
子どもの自己肯定感を育む雰囲気を持っている優しい親御さんたちです。

ですから、どの場面での対応も、点数をつけるなら100点満点というような
ものだったのかもしれません。

ただ子どもの自己有能感を伸ばすという点で、
私にはちょっと心に引っかかるシーンもありました。
といっても、親御さんが何かまずい対応をしているというより、
現状では仕方がないのか……
と思われもしました。

それでも言葉にしておくことで、
今の子育ての場に、必要なものが提供できる場が生まれてくることを期待して
書くことにしました。

2、3歳の子たちは、年中、揉めます。

人と関わりたい気持ち、
「自分の物」って主張したい気持ち、
他の子がしているとうずうずとやりたくなる気持ち、
眠気や疲れを発散したい気持ち、
自分自身を興奮させて、さまざまな感情を味わって、それを抑える力をつけたいという本能的なもの、

そんな自分を成長させる気持ちに突き動かされるように
しょっちゅうぶつかりあったり、泣いたり、仲直りしたりしています。
揉め事の原因となるような気持ちが薄い子はそれはそれで気がかりですし、
親がトラブルを避けて、子どもの社会性の育ちを阻害するのも問題です。

子どもが揉めれば、

乱暴はダメ、お友だちの物を奪うのはダメ、意地悪するのはダメ……

そうしたひとつひとつのことを、しつけていかなければなりませんから、
親御さんがそうした善悪の基準を持って、子どもに対応していくことは大事です。

でも、問題なのは子ども同士の揉め事の場合、
「わが子」だけではなく「相手」もあるものなので、
ひとことにしつけといっても、「わが家の考え」だけでわが子に接すると、
自分の子の心に小さな傷をつけてしまうこともあるな、と感じているのです。

子どもはそれぞれ、さまざまな発達段階にいて、それぞれのお家のしつけ観で育っています。
その子の持って生まれた性質もまちまちです。

親は「わが子」には自分の考えで注意をしますが、
同じことを子どものお友だちがしていても注意しないですよね。

たとえば、自分の子がよその子のおもちゃを奪い取ろうとすると、「そんなことしちゃダメよ。それは○ちゃんのでしょ。
貸して!って言ってないでしょう!」などと厳しく叱りますが、
自分の子のおもちゃをよその子が奪いにくると、
わが子に有無を言わせず、「貸してあげなさい」と言うこともあります。

子どもは、親が自分に言ったことだけでなく、
お友だちの行動からも学ぶし、自分にされた理不尽なことからも学びますし、
自分の中に湧きあがってくる激しい感情からも学びます。

だったら、しつけの行きとどいた良い子とだけ遊ばせた方が良いのかというと
そうではなく、
子どもはどんな子からも、年上の子からも赤ちゃんからも、
人との関わりの中で学んで、成長するのです。

お友だちの行う「悪いこと」からも、「あんなことをしてはいけないな」という
道徳観の目覚めや自分の行動を他の子の行為を通して客観的に眺めて
「赤ちゃんはダメダメ。お兄ちゃん(お姉ちゃん)になりたい」という気持ちが生じたりもします。

話が脱線しましたが、
1シーン、1シーンでは必要なしつけと思われることも、
子どもにとっては、「○○ちゃんは良いことも、自分だと叱られる。自分は○○ちゃんよりダメな子なのかな? 自分だけがいつもがまんしなきゃならないのかな?」という疑惑につながっていることも
よくあると思うのです。

虹色教室で3、4歳児のグループレッスンを行っていると、

親御さんがいない場で、私と子どもだけで過ごしている場合、
最初はけんかばかりしていた子たちが、
数か月もすると、どの子も精神的にグーンと成長して
お友だちと上手に遊べるようになってきます。

それは私の力というより、子どもたちの成長する力と創造的に問題を解決する力のおかげで
そのようなことが起こっているのです。

私は、子どもたちにちゃんとした行動を取るように厳しく言うことはほとんどないし、
一方で、子どもに遠慮して何も言わないということもありません。
第3者として、親御さんとは異なる立ち位置で子どもに接することができるのです。

何がどう悪いかということをこんこんと言って聞かせることはないし、
それぞれの子が感じる「悲しい」「悔しい」「ずるい」といった気持ちをささいなことだからといって、
無視することもありません。

たとえば、子どもが「貸して!」とおもちゃを貸してもらいたがったのに、
相手が「いやー!」と大きな声で言い返した場合。

まず、ここで、「このおもちゃは◎ちゃんのだから、借りれないよ」と大人の言葉で説明するのも、
◎ちゃんから「貸してあげなさい!」と
無理矢理おもちゃを取り上げるのも、
子どものさまざまな気持ちを無視することになると思うのです。

まず、貸してもらえないのは仕方がないとしても、「いやー!」と大きな声で言われてショックを受けたこと、
すごく貸してほしかった気持ち、自分が拒絶されているんじゃないかという不安などが、
「貸して!」と言った子に渦巻いているでしょうから、
それを言葉にして受け止めてあげる必要があるのではないでしょうか。
「いやーって大きな声で言われたら、びっくりするし悲しいね」「あのおもちゃいいよね。借りたかったよね。遊びたいもんね」
など。
また、◎ちゃんに対しては、「おもちゃ貸してほしいんだって」と説明して、答えが嫌なら、
「あとで、いやじゃなくなったら、貸してね」と言って、取られるのではないかという不安を取って
あげる必要がありますよね。
ついでに、「あのねぇ、いやーって大きい声で言ったら、びっくりして悲しくなっちゃうよ。嫌なときは、小さい声で言っても
貸さなくていいのよ。◎ちゃんの大事なおもちゃだからね」
と言います。

こんな風に、教室では揉めるたびに、
私がさらっと対応して、後は子どもたちの道徳心に任せているのですが、
子どもは自分に決断を任されると、周囲で揉め事を見ていた子が助け舟を出したり、
頑なになっていた子が精神的な成長を見せて進んで優しさを示したり、
揉めた後で、お互いにさらに仲良くなったりするのです。

次回に続きます。


子ども同士の関わりの中で自己有能感を伸ばすには……? 1

2011-06-21 13:15:52 | 自己肯定感を育む

初めての試みだったので、どんな展開になるか
ちょっとドキドキしていたユースホステルでのレッスン。

結論からいうと、予想していたより何倍も楽しくて実りの多いレッスンになりました。
子どもが人と人との関係のなかで学び成長していくことを、
参加した方々みんなで実感することができました。

3歳の★ちゃんは、緊張が強い子で、人と関わりたがらず、
遊んだり笑ったりすることが
これまでは家でも外でもほとんどありませんでした。

親御さんも★ちゃんのそんな様子をずいぶん心配されていました。
今回も、同年代のお友だちを目にしたとたん固まって、お母さんに「怖い」とこぼしていました。

レッスンがはじまると、
最初は、それぞれの子が別の遊びに興じていました。

活発で創造性あふれる2歳の男の子、●くんは押し入れから座布団とたくさん出してきて、
広い自分の部屋を作りました。

おしゃべりで感情豊かな○ちゃんは、算数用の教具を使って
たこやき屋さんをしていました。
ブロックで電車の駐車場も作りました。

最年少の2歳になったばかりの□くんは、電車のおもちゃで遊んでいました。

★ちゃんは最初、ぬいぐるみの白ネコちゃんのおトイレを作って遊んでいました。
途中で、私が水風船を膨らませはじめるとやりたがって、
手伝ってもらいながら、とてもたくさん風船を作りました。
★ちゃんは(おそらく)内向的感覚の思考寄りの子で、慎重で几帳面で、根気がある性質です。

それを紙コップに入れて、「ろうそくよ」と言って並べていました。
それはきれいな光景でした。

すると、お友だちが「ちょうだい」とやってきました。
「いやぁ~!」と★ちゃんは激しく拒絶しました。

★ちゃんのお母さんは、周囲の人にとても気を使う方です。
お友だちにろうそくを譲るように、★ちゃんを説得しはじめました。

私が見たところ、★ちゃんはまだお友だちと一定の距離を保った状態で
個々に遊んでいるだけで、精いっぱいの状態でした。

ですから、まず「自分のスペースに侵入されたり、自分の物が奪われたりしない」ことを
はっきり示して安心させてあげた方がいいように感じました。

そこで、「★ちゃんのろうそくは大事なんだね。
隠し場所に隠しておこう」といって、
座布団でろうそく置き場を作りました。
そうして、「★ちゃんの物を誰も取ったりしないよ」と安心させてから、
「○ちゃんにお手紙を書く?」と郵便ごっこに誘いました。

(この過程で、○ちゃんもかんしゃくを起こしてひと悶着あったのですが……)

自分の隠し場所ができて安心すると、★ちゃんは急に心が外に向かい出し、
お手紙(折り紙に丸やハートを描いて折ったもの)を
○ちゃんとやりとりして笑顔が出ていました。

★ちゃんはお母さんに頼んで、さらに安全な場所にろうそくを隠しに行きました。
何と、くつばこの中。

そうして自分の不安に、自分の望んだ通りの対応をしてもらうと、
★ちゃんは、急に積極的にいろんな意見を言い始めて、お友だちにも自分から関わって行ったり、
ゲラゲラ笑いだしたりしました。


今回のレッスンにはうちの娘にボランティアとして同行してもらっていました。
★ちゃんがどんどん積極的になり、笑いながら人と関わっていこうとしはじめたのには、
娘が大きな役割を果たしてくれました。

普段は「お母さん、お母さん」と言って、お母さんのそばから片時も離れない★ちゃんですが、
うちの娘には打ち解けて、(子どもって、高校生や大学生くらい年齢の「お姉さん」って存在が好きですよね)
ろうそく作りの相手をしてもらいながら
甘えていました。

○ちゃんも「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と言って、抱きついていって
うちの娘を独占したがりました。
でも、ここでは奪い合いという形にならず、
「★ちゃんも○ちゃんも、
お姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんと仲良しでいっしょ、いっしょ」という気持ちを共有するように
★ちゃんと○ちゃんの距離が縮まっていきました。

○ちゃんは今、反抗期で、ちょっとしたことに過敏に反応しがちです。
思い通りにならないことが少しでもあると、当たり散らしたり大泣きしたりします。

そのため、○ちゃんと★ちゃんは、最初のうちは、ちょっと近づいたらバトルになっていました。
それがふたりでお姉ちゃんに甘えて遊んでもらったり、いろんな体験を共有するうちに、
お互いに真似っ子したり、遊びに誘ったり、ゲラゲラ笑いながらいっしょに駆けまわったり
するようになっていったのです。
その様子はとてもかわいらしくて幸福そうで
感動するものでした。

子どもは何かが人より上手だから自己有能感を持つのではなくて、
人との関わりのなかで現実に成功すると自分が有能だと感じます。

子ども同士の関わりで、「自分にできる」ことがわかっていて、自然に友好的に振舞えて、
それを快く受け入れてもらったら自信に満ちてきます。

ユースホステルでの★ちゃんと○ちゃんは、お互い、興味しんしんの様子で
ちらちら盗み見しあっては、積極的に関わりあうことで、どちらも急速に成長していました。
★ちゃんは人との関わり方に自信がつき、外の世界に興味が広がっていました。
★ちゃんのお母さんは、「今までこんな明るくて積極的な★ちゃんを見たことがありません」
とひたすらびっくりしていました。


○ちゃんはメタな視点から自分の困ったちゃんぶりを眺めてみて
(★ちゃんがごねているときに、「私は3歳だから、そんなことしないよ」
とお姉さんぶった意見を言ったりして)人との関わり方に深みが出てきていました。


子どもって本当に創造的で、人や環境との関わりを通して、
自らの力で成長していくんですね。すごいなぁと毎回、感激します。

ユースホステルでは時間に余裕がたっぷりあったので、
知的な働きかけについての発見や成長もたくさんありました。
また別の機会に記事にさせていただきますね。



学習の習慣付けやワークについて、賛否両論飛び交っていますが… 6

2011-06-19 18:44:42 | 教育論 読者の方からのQ&A


「幼児期、それもずいぶん幼い時期から
机に座ってワークをさせる習慣をつけておくと、
小学校に入ってから学習させるのに苦労しない」
と考えている方によくお会いします。

幼児用の通信教材の宣伝で
こうした意見をよく目にするためのようです。
確かに、話にだけ聞くと、思わずうなずいてしまうような意見です。

でも、現実にはそう上手くはいかなかったり、逆効果となることも
あるようです。

その原因は、子どもの学習習慣を付けようとする行為が、
「この子は自発的に勉強しそうもないから、私が時間を決めて管理してあげなくては……」
「子どもが自己主張するようになる前に、やらねばならない義務にしてしまわなくては……」
という子どもへの不信感に基づいていているから
と思われるときがあります。

それが子どもに伝わって、
自分の能力への不信感になって、
子どもに「いやいや勉強する癖」がついているのを
よく見かけるのです。

心配性で過保護気味な親御さんに多いように思います。

子どもに学習習慣のようなしつけをするときは、
親は自分の無意識の心の癖をチェックして、
「子どもの力を信じて、勇気づける」
という態度でするようにすることが大事なように感じています。

わが家仕様の方法で、一般的には通用しないかもしれませんが、

うちの子たちの場合、
「もうダメ、できない」「しんどいから、今日は勉強はパス」という時に、
「どんなことも、やりはじめたら途中で放り出したくなったり、休みたくなるときがあるわよ。
そんな時は、ゆっくり休むことよ」と言って、
それ以上は何のアドバイスもしなかったことが、
「子どもの力を信じて、勇気づける」
ことになりました。

そうして、ひとりで静かにエネルギーを充電する時間を過ごすと、
必ず自分から、「やっぱり、がんばろう」
「目標を立て直してみよう」「今、あきらめるのはもったいない」という
強い意志が生じてきました。

私は子どもが元気なときは、基本的に子どもを放っておきます。
意欲的なときに、親が計画や目標設定に関わるのは、
余計なお世話のように感じるからです。
「こういうことしたい!」という最初のおいしいところは、
親がいいとこどりしたらダメだな……と控えているのです。
でも、くじけているときは、
元気づけるように、フォローしています。



うちの子たちは我が強いところがあるので、
「こうすれば、こうなるよ」なんてアドバイスをするより、
「誰だって、いつも休まずがんばることなんてできないものよ。みんな飽きるの。休みなさい」と言うと、
親のために勉強してるんじゃなくて、自分が勉強したいんだって実感できたり、
「お母さんみたいに気楽なこと言ってられないよ。ちょっとだけでもしておこう」となったりして、
自発的なやる気につながるようでした。

もちろん、子どもの個性はいろいろなので、
どの子にも通用するのかはわかりませんが……。
飽き性だけど、責任感は強い。疲れやすいけど、我が強い。好奇心旺盛で自己肯定感が強い。気が散りやすいけど、けっこうまじめ……なんて性質の子には、このくらいの対応がいいのかも……。

東大生3人を育てた後藤真智子のブログ
という
東大生3人を育てた経験を綴っておられるブログが、
子どもとの関わり方の参考になりますよ♪

私は、こういう適度なゆるさ(失礼ですが……)好きですね。
適度にゆるくなれるって、子どもを信頼しているということでもありますから。

人が「がんばろう」と思うには、
まず自分の能力に対する信頼感が必要ですよね。

前回紹介した『愛と注目欠乏症候群』に、

幼児期のどのような体験が自発性を確立させることになるか、やる気や生きる意欲のエネルギー源となるのかについて
次のように書かれていました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3歳から6歳くらいまでを幼児後期と呼びます。(略)
この頃になりますと、旺盛な好奇心、冒険心、知識欲などに支えられて、
積極的な行動をとるようになります。
「自分で!自分で!」という言葉に代表されるように、
親から自発的に自立しようとするきざしや行動が目立つようになります。
子どもが、胸のボタンを留めようtおしている場面を想像してみてください。
子どもは小さな手で、悪戦苦闘しながら五つのボタンを止めています。
十分もかかってその「仕事」を終えたとしましょう。母親は十分もの間、笑顔でそばにいるだけで、手も口も出しません。
そして最後に一言、「太郎ちゃん、よくできたわねぇ!おかあさん、びっくりしちゃったわ!」と心からほめてあげます。
承認の欲求を満たす言葉かけです。
太郎は失敗や挫折を繰り返しながら、完成した「仕事」に感動します。

これが「成就の喜び」です。
成就の喜びを数多く体験しますよ、自己有能感が芽生えます。
                     『愛と注目欠乏症候群』(池田誠二郎  株式会社チーム医療)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学習習慣付けの話にもどりますね。

学習の習慣付けが良いか悪いかではなく、
自分や親への信頼感や、自己有能感を十分に育てた上で、
子どもの「これやってみたい!」「毎日続けてみたい!」という意志を
支援する形で習慣付けていくことが大事だと思うのです。
幼児の場合、親の気持ちと自分の気持ちを混合しやすかったり、
自分がどれくらいできるのか、何を親と約束したのかよくわかっていないことがほとんどですから、
誘導して騙すような約束を取り付けてはいけないと思っています。
まだきちんと計画を立てれるほど成長していないのです。
幼いうちは、学習の習慣付けといっても、「やりたい!」という意欲に対して、
短期のすぐ達成できるような目標設定を手伝ってあげるのが、
ちょうどよいのではないでしょうか。


学習の習慣付けやワークについて、賛否両論飛び交っていますが… 5

2011-06-19 07:35:21 | 教育論 読者の方からのQ&A

↑の写真は昨日の小学1年生の女の子3人のレッスンの様子です。
自由時間に教室内に自分たちの部屋を作って、せんたくものまでつらして
本格的に遊んでいます。
遊ぶのが上手なパワフルな3人さん。途中で、「工作でお家が作りたい」と言ってお家を作ったり、
いっしょにUNOをして遊んだりもしました。

もちろん、勉強もしっかり集中してがんばりました。学校で学んでいる1年生向けの学習は易しすぎるようなので、
2年生のトップクラス問題集からいくつか問題を選んで学びました。


当たり前なのですが、この3人さん、性質がずいぶん違います。
今回話題にしている「学習の習慣付けやワーク」についてでしたら、
私ならそれぞれの子に全く別のアプローチをします。

また、今できていることを評価するとしても、それぞれに別の基準で評価します。


★ちゃんはこれまで家庭で学校の宿題以外の学習はしていません。
一方で、遊びや生活体験は豊かで、愛情をいっぱい注がれて育っているため
いつもいきいきとして笑顔の多い自己肯定感が高い子です。

レッスン中、他のふたりは、くりあがりのある計算の答えが瞬時に言えるけれど、
★ちゃんだけは間違えたり、時間をかけて指で計算したりしていました。
ただ間違えても、それが自分の自信のなさにはつながらず、
どの課題にも一番熱心に関わっていました。

理解した後も、
教具を使って確認したり、繰り返し練習したりして、★ちゃんは、この年齢の子ではめずらしいほど
意欲と集中力という面では
高い能力を示していました。
ですから、応用問題ではこの日した小2の文章問題や掛け算の練習も、
しっかりできるようになっていました。

★ちゃんの例だけで、「家庭で先取り学習をさせなければ
意欲や集中力が高くなる」という単純に結論つけることはできません。

★ちゃんの学習態度のすばらしさは、
★ちゃんが他の子と比べてできているかどうかを気にかけず、
★ちゃんをあるがままに認めて尊重している親御さんの態度のおかげもあったし、
★ちゃんの生活体験の豊かさや
★ちゃん自身、学習体験こそ少なくても知能の面でしっかり発達している子であることもあります。

想像力を使った遊び、工作、初めてルールを学ぶカードゲームのどれも
リラックスして楽しんでいたし、
遊び終わった時、てきぱきと動いて、他の子らをリードして
お片付けをしていました。
★ちゃんの遊ぶ様子と、学ぶ様子から、
この子が自律という面でかなりしっかりしていることがわかりました。

ですから、もしこの★ちゃんに家庭での学習の習慣付けを考える場合、
★ちゃんの責任感や判断力を信頼して、
フォローはしつつも本人に任せることが大事だろうと思いました。

一方で、音読をがんばったり、自分から練習したいという時には、
自発的に取り組むことのすばらしさを認めて、
できるだけ楽しく心が満たされるように付き合ってあげる必要があるとも思いました。


このグループの☆ちゃんは、創造性が高い芸術家肌の子で、頭の回転が速く算数が得意です。
自由に自分の思ったことを発言する子どもらしい性質で、少し衝動的で我慢が苦手なところもあります。

計算も速いし、文章題もしっかり解けますが、
学習にはいやいや取り組む時があります。
口答えをしたり、「だって、こうしたいんだもん」と言ったりして、
大人と交渉しては、毎回、学習時間を少しでも減らそうと仕掛けてきます。

☆ちゃんタイプの子には、
子どもができる範囲で約束ごとを決めて、
きちんと守らせていくことも大事でしょうし、
ここは親の権限で「やらなくてはいけないことは、しなくてはなりません」と
はっきり宣言する必要もあるように感じます。

「決まり」としての学習習慣付けも大事なのではないでしょうか。

そうしつつ、☆ちゃんの創造的な発想や芸術的な才能が自由にのびのびと
伸ばせるように
配慮するとよいように思いました。


同じ1年生の●ちゃんは、
まじめで慎重で責任感が強い子です。勉強が得意ながんばりやさんですが、
自分に対して求める基準が高いので、少しでもできないかもしれないという状況にぶつかると、
頭がフリーズしてしまうときがあります。
こうしたタイプの子が混乱している時に、不安にさせたり、叱ったりすることは
絶対禁物だと思っています。

●ちゃんは、
お母さんと学習計画を立てたとしたら、きちんと守ってまじめに取り組むでしょう。

このタイプの子と学習の約束をする時は、
週に1、2回は、
勉強の約束を破ってもいい日を設けておくことや、
学習量を少なめにして、やりすぎを防ぐことが大事だと思います。

まじめで責任感が強い子には
親の方が、
子どもが燃え尽きたり、過剰適応したりしないように
配慮する必要があると思っています。
逃げ道を作って、自分の立てた計画にがんじがらめにならないように、
「ルールを守れなかったり、
約束が果たせない時があってもいいんだよ」ということを教えてあげます。





日帰りレッスン締切ました。 By事務K

2011-06-19 00:07:37 | 連絡事項
こんばんは~

昨日18日でしたが…この記事を持ちまして
夏休み日帰りレッスンの募集を締め切らさせて頂きます。

沢山のご応募有難う御座います。

これより参加者様の決定と行きたいのですが、
その前にお泊りレッスンが御座います。

ですから、発表は少し遅くなるかもしれません。

最大限、尽力させて頂きますけどね…
人間誰しも限界が御座います。

抽選にもれる方が多くなること…
ご理解頂けたら有り難いです。

―――――――――――――――――――――――――――――

先日の記事で、私事としてブログ開設の
お話をしましたが、まずは皆様の一般的な疑問に
答えたQ&Aをまとめようかと…

こちらだけでは賄いきれない事務の
進歩状況や連絡事項なんかも
少し書く予定にしています。

まぁ、毎日更新しないでしょうし内容は
事務Kの平凡で怠惰な生活を綴る形ですが…

『お仕事』として少しだけ書く感じですかね~

因みに一般的な質問なんかは受け付けますが、
具体的な教育等に関してはお答え出来るほど
頭が整っておりませんのでご注意を…

以上、連絡でしたm(_ _)m

P.S. 先生へ
   Q&A記事の基礎だけ作って置いときますから、どっかにリンクお願いします。
   では、後日打ち合わせに伺わせて頂きますね~


学習の習慣付けやワークについて、賛否両論飛び交っていますが… 4

2011-06-18 21:55:09 | 教育論 読者の方からのQ&A


人間性心理学の中心人物のひとりであるマズローによると、
人が生きていくためには、
5つの欲求が満たされる必要があるそうです。

5つの欲求とは、

①生理的欲求 (性欲、食欲、排便、睡眠など)

②安全の欲求 (風雨をしのぐ、保護されたい)

③所属と愛の欲求 (愛と集団への所属欲求)

④承認の欲求 (自尊心を保つ、尊敬されたい)

⑤自己実現の欲求 (自己を磨く、可能性、使命の達成)

です。

これらの欲求は、①から順番にそれが満たされると、次の欲求をめざすように
なるようです。
テストで良い成績を取りたいと願ったり、より偏差値の高い学校をめざすのは
承認の欲求が根底にあるからで、
しっかりと認めてそれを満たしてあげると、次にはより高度な自分の可能性に挑戦し、自己を磨く行動へ
向かうことになります。

①~④は欠乏動機、⑤は成長動機にあたるそうです。

『愛と注目欠乏症候群』の著者でありチェヌン大学客員教授の池田誠二郎氏は
次のようにおっしゃっています。

「承認の欲求が十分満たされると、強い成長動機に支えられ、

自己を磨き、可能性や使命に挑戦するようになります。

この段階では、失敗や挫折によって、
自己を見失うような事態にはならず、
むしろ再挑戦していくレベルになります。

でも、第4段階までの欲求が満たされていない場合、人は死に至ることもあります」


人間が生きていくうえで必要な欲求という面から、
子どもの教育を眺めると、
子どもに学習習慣をつけるとか、書きとりとか計算をできるようにさせておくとかいう前に、
基本的な欲求を十分満たしてあげて、本人の中から
より自分を高めたいという思いが湧きおこってくるようにすることが
一番大切だということはわかります。

池田誠二郎氏によると、
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自分を好きになる基盤は乳幼児期に芽生え、
生きる意欲とやる気は幼児期に確立し、
やる気を意欲が自信となるのは児童期なのだそうです。
すると、十二歳から二十歳くらいまでの青年期には、自己有能感と自己肯定感に支えられて、
今までの体験や経験によって身に付けたエネルギーを取捨選択し、秩序づけ、統合していく
作業を進めるようになるそうです。

このように自我同一性確立の成長過程で鍛え上げられた、自発性、自立性、自己有能感、自己肯定感が、
成長動機を支えるエネルギー源となり、本当の自分を生きる、
つまり自己実現をしていく基本的条件が満たされるのだそうです。
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うちの子たちも、十二歳から二十歳まで、揺れながらも目覚ましく成長して、
自分の人生についてしっかり目を向けて
自己鍛錬や自分磨きにいそしむようになったな、と思います。

子どもって、年齢を重ねるほど、

自覚して学び、本当の自分として生きようと精神的に成長していくことを実感しています。

でも、そのために、親が「あれをできるようにさせておかなきゃ」とか「学習習慣をつけなきゃ」とか
「塾が必要か」とか
あたふたしたり、悩んだりするよりも、
まず子どもが安心して過ごせる居場所を作って、リラックスしたり遊んだりできる時間を十分確保することや、
子どもの評価がどんなときであれ、親は子どもの真価を知っていて、きちんと認めていることが
大事なんだなと感じています。


子どもの基本的な要求を満たしてあげることは
親の仕事だけど、
勉強するのは子ども本人の仕事ですから。


親がする仕事をおろそかにしたままで、子どもが判断したり、
子ども自身が努力することに
余計な干渉をしすぎるのは間違っているのかもしれません。

東大に息子さんふたりを行かせているという
e-子育て.comのスタッフブログ~子育て、教育のヒントをお届け~の羊さん宅の子育ても
親の子へのちょうど良い関わり具合を学ばせていただくのに役立ちますよ。


といっても、学習の習慣付けを少し手伝ってあげなくてはならない子がいるのも事実。
放任しすぎも、
それはそれで問題ですよね。



次回に続きます。

学習の習慣付けやワークについて、賛否両論飛び交っていますが… 3

2011-06-18 16:46:37 | 教育論 読者の方からのQ&A

4歳児さんたちのレッスンで、
数玉そろばんの玉を動かしながら、「3たす1は?」 「4たす1は?」 ……「15たす1は?」と
問題を出していって、「59たす1は?」の問いにも「60!」という元気のよい
答えが返ってくるときがありました。

が、次に私が、60からひとつ玉を戻して、「60-1は?」ときくと、
「65!」とか「30!」とか、でたらめな答えが多発しました。

数玉そろばんの動きをちゃんと見ていても、
数の玉は見るからに59という数を示していても、
59たす1の時の足した1がまた元に戻って、59だな」と
納得することはないのです。

つまり、何となく暗記して
数の流れはわかってきているものの、
さっぱりわかっていない部分もたくさんあるのです。

幼児に計算プリントをさせてできるようになっている場合、
こんな風に、根本的なことがわかっていないのに、できるようになっていることが多いです。

そんな風に本当はわかっていないのに、
テストとしてはできている状態で進んでいくと、
ずいぶん後になって、土台からガラガラと崩れていくように
できていた問題が時の経過とともにできなくなったり、
応用がきかなくてひねった文章問題は手も足もでなかったりします。

幼児は目で見て、手で動かしてみて、理解します。
ですから、目で見て、手で操作する教具を使って学んでいくと、
一時期、でたらめな答えを言っていても、しばらくすると、深い理解に達します。

といっても、「それなら、幼児には数玉そろばんのような教具を使って教えていけばいいのね。
それを使って学習習慣をつければいいのね」
といった単純な話ではありません。



元文化庁長官の河合隼雄氏が『子どもと学校』という著書の中で
次のようにおっしゃっています。

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子どもは、うっかりすると相当に早くから、このような知識のつめ込みに
さらされてゆく。実際、幼稚園の段階から、英語などを「教える」ところが
親に大いにもてることは、
驚くべきものがある。
このような状態は、端的にいえば、子どもを育てるうえでの「自然破壊」なのである。
子どもが「自然に育つ」過程に対する干渉が、あまりにも多すぎるのである。
(略)
個性を尊重するためには、個人のもつ可能性が顕在化してくるのを
待たねばならない。
ところが、できるだけ多くの知識を効果的に吸収させようとすると、
それはむしろ個性を破壊することになる。
しかも、評価を「客観的」にするという大義名分のために、「正答」がきまっている問題を
できるだけ早く解く訓練をすることは、ますます個性を失わせることに
つながる危険性をもつ。
             (『子どもと学校』河合隼雄 岩波新書)

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子どもは目で見て、手で操作して、動きながら学びます。

でも、それは常に、その子の可能性が顕在化してきた時に、それにぴったりと合う
タイミングで学ぶべきものです。子どもの可能性が顕在化してくるのを待つのは、
個性を尊重するためだけでなく、
子どもの能力が最善の形で伸びるためにも大切なことだと
思っています。

たとえ、子どもの学び方にそった教え方をしたとしても、
幼児期は大人主導で何かを教えていく時期ではないのです。

計画的に大人が「学習の習慣付け」のためにスケジュールを組めば、
その子にプログラミングされている発達の順序や時間は狂わされてくるでしょう。

そうした干渉は、
河合氏のおっしゃる子どもを育てるうえでの「自然破壊」につながるのでは
ないでしょうか。


次回に続きます。