虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子と DIR治療プログラム 2

2011-08-13 20:56:43 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子
私は双方向のコミュニケーション能力が弱くて
自分の世界の没頭しがちな自閉症スペクトラムの子たちと
自然に親しくなっていくことがけっこうあります。

人を避けて自閉的な無意味に見える行動を繰り返しながら
うろうろしている子たちとも
割合、早い時期に仲良くなっていくし、
一度、心が通じ合えるようになると、人から学ぼうとしなかった子から
私の行動を真似て、何かを学び取ろうとする意欲を
引きだすのが得意です。

前回の記事の◎くんとも
翌朝にはすっかり気持ちが通じ合うようになっていました。

朝食後のレッスンでは◎くんはいきいきした表情でこちらにちょっかいをかけてくるように
なっただけでなく、
作ってあげた工作作品で遊ぶことも受け入れてちょっぴり遊び、
他の子たちと同じ場所にいることも楽めるようになっていました。

外から見ると微々たる変化です。

でも私は◎くんの表情と態度から、◎くんの内面に私に対する親しみや好奇心が
育っているのを感じました。
いろいろなことをこちらから学ぼう、体験を広げてみようとするほどに。


独り言を言いながら、自分の世界に入ってうろうろしている子と
どのようにコミュニケーションを取るのか、
どのようにして親しくなっていくのか、
さっぱり見当もつかないと感じる方がいるかもしれません。

でもそれは、自閉症スペクトラムの子たちの言動が
周囲の期待に反している時に、
それらの全てを無意味で恥ずかしいことで、変だからすぐにでもやめさせたいことという
ネガティブな捉え方で眺めているからかもしれません。

慣れない場所では、自閉症スペクトラムの子たちは、
独り言をぶつぶつ言ったり、くるくる回ったり、
服の裾やかばんの一部を口に入れたりしているときがあります。


自閉症スペクトラムの子たちは、自分の心の中の変化や不安な気持ちや願望を捉えて、
それを言葉にして相手に伝えるすべがない子がたくさんいます。

そのため、その子の中で何らかの気持ちが生じてアウトプットしているはずなのに、
(単に嫌だからその行動に逃げ込むようなものもアウトプットとするなら)
その気持ちも「こうだったら……このようにしてくれたら……こういう順序なら……
こういう環境なら……安心、うれしい、ホッとする」という願望も
伝わらない場合がほとんどです。

外からは、困った行動にしか見えない場合が多いからです。

それを「ああ、またやっている。早くやめさせたい」と思っていると、
そこから何も得ることはできないのですが、
そうした言動から自閉症スペクトラムの子が発信していることを
こちらが少しでも理解しようとすると、
子どもとの距離は急速に縮まっていくことがよくあります。

そうした無意味にも見える言動から、こちらが察することができるのは、
「これ以上近づかないで」だったり、
「このくらいのペースならいい、それ以上展開が早いと不安」だったり、
「とても楽しい」だったり、
「それは知っている、昨日と同じ」だったり
「ぼくから先にさせて、話させて」だったりします。

もちろん、「こうかな?」と感じても、その正確さは定かではありません。

でも、赤ちゃんが泣いている時のことを思い浮かべていただけば、
「これはおむつかな?」「今度はおっぱいかな?」「この泣き方は甘えているのかな?」と
母親には何となく察することができるし、
だいたい合っているものですよね。

それと同じで
自閉症スペクトラムの子の言動から「こういうことかな?」と察して、
フィードバックを返してあげると、
急に記憶や思考が明晰になったかのような言葉を発したり、
ホッと落ち着いた様子でニコニコして活動をはじめたり、
こちらのことが大好きになってくれたりするのです。


DIR治療プログラムの話が後回しになっていますが、次回に書かせていただきますね。

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子と DIR治療プログラム 1

2011-08-13 16:14:46 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子


今回のユースホステルのレッスンには双方向のコミュニケーション能力が弱く、
すぐに自分の世界に没頭してしまう自閉症スペクトラムの小学1年生の◎くんが参加していました。

最初にココプラザの和室でレッスンをはじめたとき、
◎くんは独り言を言いながら自分の世界に没頭しているとはいえ、
機嫌良く過ごしていました。
が、途中で、「部屋全体を使って街やお店や道路などを作ってみよう」という流れになって
集まった子らが積極的に動き出すと、
「いや~!帰る!」「お家帰る」と不安そうな表情で小声でつぶやきながら、うろうろしはじめました。
そして和室でのレッスンを終えて、いよいよユースホステルへ移動という段になって、
「お家に帰る!帰る!」「帰るよ!お家に帰るよ!」と騒いでパニックを起こしていました。

その時には、他の子らはすっかり打ち解けて手を取り合って移動していましたから、
◎くんのお母さんは肩を落として、「ちょっと無謀な参加だったでしょうか……」と
困惑しきった様子でおっしゃっていました。

先のことはわからないし、
その時の◎くんの拒絶の仕方からすると
とうてい「帰る!帰る!」の騒ぎは収まりそうになかったけれど、
私はなぜだか◎くんと仲良くなれるような予感がしていました。

運よくこの日は個室希望の◎くん親子のために室内に
お風呂がついているツインルームの予約ができていました。
(ツインルームの数が少ないためなかなかこの部屋の予約が取れないのです。)

そこで、◎くん親子には、
ユースホステルに着いた後のオリエンテーリングや学習タイムに
部屋でゆっくりしていただくことにしました。

夕食の前に心配しいしい◎くんの部屋をたずねると、
◎くんはお風呂に入って気持ちが良くなったらしく
ニコニコしていました。

夕食は海老フライにフィッシュフライにハンバーグにポテトサラダに五穀米というこってりメニュー。

◎くんの好物ばかりでした。
私は◎くんの左隣で食事をすることにしました。
◎くんは私が隣に座っているということと、初めてお会いしたとはいえ優しく接してもらっていた
★くんのお母さんが斜めに座っているということが
とても気に入っている様子でした。
双方向のコミュニケーションには発展しないものの、終始ニコニコしています。
◎くんは上機嫌で大人顔負けの量を食べていました。

夕食後のプログラムは7時半から美術工房でスライム作りや工作や学習をして
子どもたちが眠くなったら部屋に戻り、
晩はボランティアの女の子に眠った後の子どもたちの見守りをお願いして親の勉強会をする予定でした。

◎くんのお母さんは、後のプログラムはどちらも諦めて
そのまま休む心積もりでおられたのですが、
◎くんたちの部屋を訪ねて
「◎くん、いっしょにスライムで遊ぶ?」とたずねると、
以前、スライムで遊んで楽しかった経験のある◎くんは、
「スライム、する、スライム、する」とピョンピョンはねながら喜びました。

7時半まで他の親子がお風呂に入っている時間を使って
◎くん親子の個別にレッスンをし、(どうしても参加していただける時間が減ってしまいそうだったので)
7時半から◎くんが疲れるまでの時間に参加してもらい、
晩の大人だけの勉強会も他のお母さん方に協力していただいて、
◎くんのお母さんにも少しでも参加していただけるように
することにしました。

7時半まで、私が◎くんのお母さんの相談に乗っていると、
◎くんははじめのうちは小さな声で
「終わり、おしまい、先生あっち」と私を追い払おうとしていましたが、
少しすると、椅子の隙間から手を出して、
私がそれに応じて手に触れると、嫌がる風でもなく
遊んでいました。

その後は、◎くんが私を拒絶したり追い払ったりする言葉は
皆無に等しくなりました。
◎くんが私を受け入れはじめているのがわかりました。

7時半からの美術工房でのレッスンでは、
グランドピアノの周りをぐるぐる回っているときもありましたが、
かなり長い時間スライム作りに参加したり、
マジックサンドで遊んだりすることができました。





スライムでお勉強 (50センチ以上ってどれくらいの長さ?) 2

2011-08-13 13:59:13 | 理科 科学クラブ


スライムを使って「途中でちぎれずに50センチ以上にできるか」を競う遊びをしました。

50センチの物差しを用意。

スライムの小さな塊を持って、伸ばしていきます。
より小さな塊を50センチ以上になるように伸ばせた方が勝ち。

こうした遊びを通して「50センチ以上」の時には、50センチも含む
といったことを学びます。




白黒なのに、回すと色が出てくるコマも作りました。
楊枝の先から2センチのところと、5センチのところにしるしをつけて
軸を作っています。
「2対3に分けてね」と比率について
理解するように声をかけています。

スライムでお勉強 (スライムで浮き袋)1

2011-08-13 13:28:24 | 理科 科学クラブ


1年生の◆くんと、
固めに作ったスライムを薄く広げて空気を閉じ込めて
浮き袋を作りました。

「水に浮くか試してみたい」というので
水を用意すると、プカプカ浮きました。



浮き袋にしていないスライムは水に入れると
沈むのですが、
練っているときに少しだけ空気が入り込んでいて
水の下の方でプカプカ浮く場合がありました。

スライムの浮き袋を見るうち、「くらげに似ているね。くらげって、身体の中が浮き袋みたいになっているのかな?」
と興味が湧きました。
そこで「魚・貝の生態図鑑」を調べてみると、
くらげの身体の中は空気ではなく、寒天質が詰まっていると書いてありました。

「寒天質って、こんにゃくゼリーみたいなものかな?」と話あいました。

図鑑を見ると、魚の体内の浮き袋について興味が湧きました。
気道を持たず、浮袋が消化管から孤立している魚では、
浮力の調節は血液中の気体を出し入れして行われているそうです。

自立心が育つ関わり

2011-08-12 16:32:11 | 教育論 読者の方からのQ&A
前回の続きは明日に書きますね。



↑ 水風船や風船で金魚を作って
金魚すくいで遊びました。


今回のユースホステルのレッスンには
ダウン症の小学2年生の○ちゃんも参加していました。

○ちゃんは自立心に富んでいて、さまざまなことを自発的に責任を持ってしようとする姿勢があり、
いっしょに参加した他の子らのよいお手本となってくれました。

みんなでエレベーターで移動する際、みんなが降りる時に○ちゃんは自分から「開」ボタンを押して、
最後に私と○ちゃんだけがエレベーター内に残ると、
「先生、先に出て」と言うと、ボタンを押している自分は最後に出てきました。

私は他の子たちに、
「今から、クイズを出します。
○ちゃんは、どうして一番最後にエレベーターから出てきたのでしょう?」とたずねました。
すると、「めんどくさーい」が口癖の☆くんが、「はいっ」と手を挙げて、
「みんなが降りるまで開くのボタンを押していて、エレベーターのドアが閉まらないようにしていたんでしょう?」
と言いました。
「正解!」


こんなこともありました。
2段ベッドの上の段の電気がついたままになっていたので、
「○ちゃん、消してきてちょうだい」と頼んだところ、
○ちゃんは靴下を履いている最中でした。
それで片方の靴下を手に持ったまま2段ベッドのはしごを登ろうとしました。
「○ちゃん、靴下履き終わってからでいいよ」と言うと、
「いいの。上で履くの」と言い張ります。

ヒヤヒヤしながら見守っていると、
上のベッドに着くなり
靴下を履き始めました。
靴下を履くときは靴下に集中しきっているという様子だったので、
○ちゃんのお母さんが、「○、電気」と声をかけました。
すると、○ちゃんは憤慨したように、
「これが終わったらしようと思ってたの! わかっているのに~言わないで!」とキッパリ。
なかなかたくましいなと感心しました。

○ちゃんは美術工房でスライム作りなどをして遊んでいたとき、
テーブルで強く頭をぶつけてしまいました。
相当痛かったらしく涙を浮かべて、ワッと泣きだしそうになるのを
ぐっとこらえて、「大丈夫」と言いました。
冷やしてもらうために部屋を出ていく間、こぶしを握って我慢しているのが見えました。


○ちゃんは上に中学生のお姉ちゃんがいるので
その影響でアイドルグループの「嵐」の大ファンなのだそうです。
「嵐」のマジックペンを持ってきていて、
それをお友だちに貸したくて仕方がありません。
○ちゃんがそのペンを出してくるたびに、「嵐」についていろいろ質問すると、
○ちゃんはとてもうれしそうに
嵐が出演しているドラマの話やメンバーの話をしてくれました。

今回のレッスンでは、女の子のお友だちと工作で大きなお家を共同制作したのが
それはうれしそうでした。
(嵐のペンを毎回出してきて、「はいどうぞ!」とできますしね)

○ちゃんのお母さんによると、
「自分を外に出しても受け入れてくれる場だと
積極的に自立した行動が取れます」というお話でした。
温かな人間関係のなかで、
子どもたちの自立心を育んでいきたいと強く実感しました。





早期のLDの可能性の判断の仕方?

2011-08-11 10:28:19 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子
教室の年長さんの親御さんが
発達の遅れを気にして通っている病院で
担当医にLD(学習障害)の可能性をたずねたところ、「そんなもの、学校にあがってみないとわかるか!」
と笑われたそうです。

確かに「診断」という点のみでLDについて考えるとき、
学校での学習もはじまっていない幼児に対して先々LDの可能性があるかどうか
などと考えるのはバカバカしいことなのかもしれません。
タブーであるとも言えます。

文部科学省が発表した定義によると、
LDというのは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないけれど、
聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論するのうち、
特定の能力の習得と使用に
著しい困難を示すことです。
中枢神経になんらかの機能障害があると推定されています。

私は医者ではないので、LDかどうかの診断をすることはできません。

でも、子どもがやってもやっても勉強ができるようにならない場合、
困っている根本的な原因を突き止めて、
できる状態に導くことには強い関心があります。

その子がLDなのかどうかという事実に関心はないけれど、
どのような補助をするとその子の困り感が減るのかということには
とても興味があります。

そのように子どもにどのようなハンディーがあると、
学習上でどのような困り感が生じてくるのかを
観察していると、
小学校に入ってLDと診断されて、学習に困難をきたす子が、
幼児期にその兆候が全くなかったのかというと
そうではないのです。

それを医師でもないものがLDの可能性と呼んでしまうと
語弊があるのかもしれません。
でも、そうした兆候が目立つ場合、親御さんには、
「小学校に入ってからLDの問題が出ないように
家庭でちょっとした訓練をしておくといいかもしれません」とはお伝えしています。

幼児のうちにそうした兆候に気付いて、
さまざまな訓練を開始すると、
極端なほどに目立っていた特徴も
1年もするうちにはかなり軽減し、学校に就学してからも
それほど困らずに勉強についていけるケースが多々ありますから。

幼児期が学習障害の可能性を見つけるといっても
学習をさせながら気付くというのは難しいです。

でも、4歳以上の子と絵本を指さしておしゃべりしているときや、
工作で遊んでいるときなどに、
明らかに形が違う2つの物を、「おんなじ!おんなじ!」と子どもが認識している場合、
先々、文字を書き移す際の困難や、漢字を覚える困難につながるかもしれません。

また、子どもの月齢より易しいレベルの「まちがいさがし」の問題で、
ごちゃごちゃと他の絵が描かれていると
目的のものを見つけることができなかったり、
そうした探す作業に極端なほど疲れを訴えるときには、
それが読みの困難につながる子もいます。

また知能が高い年中さん、年長さんとブロックで
遊んでいるとき、簡単な見本を真似るように言うと、
左右のバランスが明らかに違う「えっ?」と思うような作品を作るときも
要注意だと感じています。

頭は良い子なのにななめの線が書けない

物の見え方にゆがみがあるように見える

視線の動きがあちこちに飛びすぎて、作業を最後まですることができない

口べたすぎて、言いたいことが表現できないように見える

数の概念の理解が同じ月齢の子に比べて
極端に遅れている

「どうして水がこぼれているの?」といった理由をたずねると、
「コップだから」とか「水だから」など、推理力に極端な弱さが感じられる答えが返ってくる

といったときも、
他の場面ではどうなのかできるだけ具体的で正確な情報を集めるようにしています。

そうした問題が今後の学習のどのようなつまずきにつながるのか、

そうした先の問題を避けるには今、どんな体験を増やすといいのか、

明らかな問題がなかなか軽減しない場合、困り感を減らすツールや方法に工夫できないか、

について幼児のうちから
親御さんとよく相談し合いながら対処していくと、
学校へ就学するころには
苦手だった部分が、得意分野に変化していく子もいます。
(空間認知に問題がある子に
たくさん工作やブロック制作をさせていると、
問題が消えてしまう場合があります)


夏休みにお金の計算ができるようになる

2011-08-11 10:03:03 | 算数
今日は、またまた……午後からユースホステルでのレッスンに行ってきます。
次の更新は明日の午後以降になります。
いくつかの記事がとちゅうまでで終わっているので、時間があるときに続きを書きたいのですが、
なかなか時間がとれません。近いうちに、書いていきますね。




100円玉を見せたら、「100円」
50円玉を見せたら、「50円」と言える子も、
「150円あるよ。120円使うとおつりはいくら?」という問題は
さっぱりわからなくなる子がいます。

10円のチップを用意して、
150円なら15枚並べてみたり、
15枚と交換したりする遊びをします。

チップのかわりに
紙に丸を描くだけでもいいです。

チップ一個が10円という概念が
わからない子には
まだやらせない方がいいです。

数をようやく理解しはじめた子とは、
チップ1枚を1円として、
簡単なやり取り遊びをします。

計算が得意になるボードゲーム   ラミィキューブ

2011-08-11 09:57:41 | 算数


2桁の暗算が得意になるゲームに
ラミィキューブがあります。

The ゲームナイト


色画用紙で枠組みを作ると、
概数の理解や
数を組み合わせて大きな数や小さな数を作る問題
などの理解に役立ちます。


たし算、引き算が大好きになるゲーム

2011-08-11 09:45:44 | 算数


東京から虹色教室に遊びに来てくれた1年生の★ちゃん、4歳の妹の☆ちゃん。
お気に入りのゲームをお家から持ってきてくれました。


ピッグテンです。

You Tubuで遊び方の映像を見つけました。

とてもよくできているゲームで、
大人も遊びに夢中になるほど、ゲーム性が優れている上、
遊ぶうちに、自然に足し算や引き算が得意になっていきます。