子どもが社交的でないことを心配する親御さんは、
「自立してほしい」という気持ちが強い方が多いです。
早く親のもとを離れて子どもの集団でいきいきと活動してほしいのです。
でも親御さんの「自立してもらいたい」という気持ちが
子どもの内面の「自立したい」という自然な衝動の大きさよりも
値が大きければ、
親御さんの期待が
漠然とした不安となって子どもの心を覆ってしまいがちです。
恥ずかしがり屋でひとり遊びが好きな子も、年齢相応のその子の個性に応じた
「ひとと触れ合いたい」という気持ちや「ひとを求める」気持ちを持っているものです。
まずその子のそうした気持ちの強さを見極めて、
それと同じか
それより少し弱いレベルの体験を用意してあげるといいです。
たとえば、親御さんとしっかり遊び込むことや、
祖父母やいとこと交流するのもいいでしょうし、
1,2人のおとなしいお友だちと過ごさせて、
いっしょに遊ばなくても、近くで過ごしているだけでOKとする
ことなどです。
子どもと「バランスをとる」というのは、思いの他 難しいものです。
それに、大人にとって、日頃、あまり重要なことのように感じていないものです。
先日の工作のワークショップで
1歳くらいのお子さんを背負った親御さんから
「この子にドッツカードを見せようと思っていますが、どのように始めればいいでしょう」
という相談をお受けしました。
見たり聞いたりすることに非常に敏感になっている
1歳6、7ヶ月の子は、
ドッツカードや絵や写真や文字が印刷してあるカードを
何枚も見たがることがよくあります。
(↓トーマスの絵カードを見ながらそれぞれの名前を読みあげてもらいたがる
1歳7カ月の男の子)
ですから親子の相互交流がしっかりなされて、
さまざまな親子間のバランスが整っていて、
おまけに子どもの側から、カード類を何枚も「見たい、聞きたい、という強い気持ちが
溢れている時は、
そうしたカードを見せることも子どもの能力を飛躍的に伸ばすことに
つながります。
でも、わたしは、「この子にドッツカードを見せようと思っていますが、どのように始めればいいでしょう」
という相談をお受けした方は、まだドッツカードのような早期教育的な働きかけをしない
方がいいように思いました。
そして、そのようにお伝えしました。
なぜなら、その方はおんぶしているお子さんをずっと小刻みに揺すっていたのですが、
その揺するすばやくて激しいリズムが
おんぶされている子の弱弱しくておっとりした雰囲気と
あまりに調和していないように感じられたからです。
もしおんぶされている子が、背後からお母さんを強くキックしたり、大きな声を上げたり、
キャッキャと笑い転げたりするような
活動的なタイプの子なら、親御さんの揺すり方もそれくらい強くてもいいとは
思ったのです。
でも、子どもは、そこにいるのを忘れられてしまうほどおとなしくて、
なん語で「アーアー、ダーダー」と訴える様子もなく、それだけ揺らされていても
されるがままになってぼんやりおぶわれていたのです。
その様子を見て、子どもから発しているものが弱いままで、
これ以上親御さん側の子どもに向けられるものの量が増えたら、
子どもの心や知能の成長に
あまりいい影響を与えないように感じられたのです。
まず子どもの発信しているものをしっかり受信することを第一にして、
親子で交わされるもののバランスをとるように
努める必要を感じました。
親御さんにそうしたことを簡単に説明すると、
何とか理解していただけました。
ただドッツカードのようなものは見せない方がいい、とだけ伝わったかもしれませんが。