1リットルは何デシリットルか?
1センチは何ミリメートルか?
100だったけ?
10だったっけ?
とこんがらがって間違いやすい単位の変換です。
忘れないためのコツを教えますね。
牛乳の1リットルのパックは
どこのお家にもありますよね。
これが1リットルであることを、牛乳パックを出すときに
何度か言うようにします。
「これが1リットルか~」とわかった時点で、
「1リットルは何デシリットルでしょう?」という問題を出して
「ヒントは手の指です」と言います。
子どもは「5?」とか「えっ、10?」とか答えることと思います。
そこで、「10!両手で10!」と言って
しっかり10の手を見せてあげます。
そして、「1リットルは、10デシリットルです」と牛乳パックを見せながら言います。
こうして、牛乳パックと、広げた手を目に焼き付けておくと
めったなことで忘れません。
子どもは、1メートルは100センチメートルということを
習ったとたんに、それまで覚えていたものも
たちまちあやふやになってきて、「どうだったかな?」となってしまいがちです。
数字だけで暗記させるのではなく、
目で見る記憶に残すようにするのが、忘れないためのポイントです。
1センチは10ミリメートルの場合、
物差しを使う時に、
1センチを10に分けているミリの目盛りに注目させて、
「1センチメートルは、10ミリメートルよ」と、
手で10に包丁で切る真似と、両手で10を作って見せるようにしていると
忘れません。
子どもたちと工作しているときに、
私はこうした単位の変換や角度(親指と人差し指で90度を作って見せるなど)を
記憶に残る形で、
何度も見せるようにしています。
子どもの性格タイプについて考えることで どんないいことがあるの? 8
という記事で、子どもの発達を促すために、
ちょっと手を抜いて、あえて隙だらけで接する面も作って、
子どもが自分で自分を作り上げていくのを見守ることも大切といったことを書かせていただきました。
でも、それだけでは言葉足らずで、
どういう意味なのかピンとこなかった方もたくさんおられたことと思います。
そこで、もう少しくわしく説明させていただくことにしました。
ずいぶん前に、「よく見ることは、あまり見ないということ…?」という記事を書いたことがあります。
この記事の「あまり見ない」という姿勢が、今回、書こうと思っている隙を作るということと
近いかもしれません。
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このブログでは、何度も、
子どもを「よく見る」とか、「よく観察する」ということを
書いているのですが、
この「よく見る」ということほど誤解されやすいことは
ないような気がします。
「よく見る」というのは、ただ目の前の子どもの行動を
より細かいところまでチェックするという意味ではないのです。
むしろ普段、それまでの自分の思い込みや先入観という色眼鏡を通して、
近すぎる位置から子どもを眺めていたのを、
かなり後ろまでさがって、
ぼんやりした視界の中で見直してみる。
理性で見ていたものを、
感情や直感を通して眺めてみる。
自分が子どもにとって全てを知っている神様みたいな位置で見ていたものを
意識して「見ない」部分を設けて見る。
そんなさまざまな「見る」の形は、
極端に言うと、「よく見る」って、「あまり見ないこと」なんだ~
とも言えたりするのです。
どうしてこんなことをするかと言うと、
子どもって
いずれ変化して成長していく存在なので、
今、現在の様子を数値化するような形で観察してしまうと、
とんでもない間違いをおかしてしまうからです。
例えば、パンダの赤ちゃんってすごーく小さいのはご存知ですよね。
そのサイズとか、能力とかを
細かく観察して、あひるのヒナと比べるとします。
すると、いずれこうなるに違いない…
と思う予測が、巨大なアヒルと手乗りパンダ…みたいに、
ケタ外れにおかしなことになってしまうんです。
ですから、よく観察するというのは、
自分の見方の偏りを修正して、
大きな視野で心で見る
ということでもあるんですね。
つい子どもの行動にうんざりしたり、叱ったりすることが多くなっている時は、
それが必要だと思います。
それと大事なのは、
「あえて見ない」
と言う事です。
過干渉の害は分かっていても、
子どもを見るという事に関しては、ついつい行き過ぎが起こりがちなのが
今の時代です。
でも私達の子ども時代も、
自分の失敗やら、欠点やら、発達途中の多くの事柄を、
隅から隅まで親に把握されていたとしたら、
きっときちんとした大人になれなかっただろうし、
生きることにうんざりしてしまったように思うのです。
私たち大人が、今を元気よく生きれているのは、
大人の目が、「ふし穴」だったからでもあるんですね。
現在は、軽度発達障害児の問題行動なんかも、
つぶさに大人に観察されています。
特別な配慮が必要なので、
それも大切だったりはするのです。
でも、それが、かえって子どもの成長の足を
引っ張っていないのでしょうか?
昔は、子ども時代、大人の見えないところで
たくさん悪さをしながら過していた人も、
大人になるとしっかり生活している方がたくさんいたように思います。
今は、見ることによって、
大人たちから投げかけられる醜い未来像のせいで、
そのイメージどおりの悪い未来を歩んでいる人が多い気がします。
見るとき、理性で見ることと、
感情や直感で見ることのちがいを例にあげると、
こんなことがあります。
刑務所に入っている人に対して、
感情や直感を通して見る時には、
その人が、きちんと人生を建て直し、
心を愛情で満たして人間らしく生活する姿が見えると思います。
しかし、理性で数値化しながら見るならば、
今現在の問題点ばかりが目に付いて、
一生そのまま犯罪にまみれて生きる姿しか見えないと思います。
そしてそういう見方が、その人の人生を決定付けてしまうように感じます。
それは極端な例ですが、
子どもに対しても、
近視眼的に見すぎることは、
未来に悪い影響を及ぼすこともあることを
わかっていただけたのではないでしょうか?
知人の陶芸の先生の息子さんのことでこんな話を聞きました。
その子の偏差値が30台だった時、
その子が医学部に行きたいといったので、
周囲の人はバカにして笑ったそうです。
でも、お母さん(陶芸の先生)だけは、
その子を正しく見ていて、
「きっとあなたなら行ける」と応援していたそうです。
その息子さんは、最終的に京大に進まれました。
よく見るということは、こういうことだなぁと思っています。
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子どもを成長させる大人の側の「隙」って、どんなものかというと、
具体的に言うと、たとえば次のような場合そうじゃないかと感じています。
6月のユースホステルに参加してくれていた2歳の■くん。
語彙の量が多くて、知恵がしっかり育っていました。
内向的で考えることが好きな性質だけど、外の世界に積極的に関わっていくところもあり、
甘えるときはたっぷり甘えて、
日々、健やかに成長しているのがわかりました。
■くんのお母さんの話では、ご近所中のお年寄りが
総出で、■くんを可愛がっているそうです。
それと「隙」にどんな関係があるのかというと……
今の時代、赤の他人のご近所さんから、
「可愛いね」「可愛いね」と幼いわが子の相手をしてもらうことって、
なかなかできないと思うのですよ。
ご近所付き合いに対して何となくわずらわしさもあるだろうし、
1、2歳児も習い事やら、サークルやら、公園通いで忙しいですから。
近所のおじいちゃんおばあちゃんが
暇にまかせて子どもを構って 可愛がる姿を、
リラックスして楽しみながら眺めようと思うと、
「意識できる範囲での理想的な子育て」から、
ちょっとはみ出している部分も
大らかに受け入れていく感性が必要になってくると思うのです。
でも、そうしていろんな人から大事にされることは、
同年代の友達とたくさん遊ばせる以上に、
いろいろな習い事に連れていくよりもっと、子どもの言葉や知恵を育て、
人への信頼感や社会性を育むための助けになる場合も多々あるのです。
おまけにタダ。
「助かるわ~」とリラックスして、親御さんが
そうした親切に甘えることができるとしたら……。
子どもにとって良いものとか、子どもを成長させるものって、
世間一般で「子どもにとって○○がいいらしい」と捉えられているものの
枠外にあることの方が多いように思うのです。
たとえば、子どもを本好きにしようとして、本の読み聞かせをするよりも、
親が本好きで、子育てから解放される時間に、自分のための読書を楽しんでいる姿を見ていた方が、
子どもが本好きに育つ場合もよくあります。
大人の視線が子どもだけに注がれているのでなくて、
大人自身の知的な好奇心で外の世界に向かって広がっているなら、
子どもは自然とその視線の先に自分の興味を広げていくものですよね。
子育てをするとき、もしていねいに愛情を込めて育てているとすれば、
後はそうした良い育児に、時折、小さなほころびとか、小さな隙のようなものがあれば、
いいんじゃないかなと私は思っているんです。
たとえば、この間のユースホステルでこんなことがありました。
年長さんの●くんがカブトムシを2匹描いて、それを木に登る仕掛けを作って
動くようにしてほしいと頼んできました。
そこで、私は大雑把に2匹のカブトムシを切り抜いて、
1匹に糸を貼り、糸の一方を曲がるストローに貼りました。
曲がるストローを茶色い色画用紙の上部に付けて、
くるくる巻きあがる仕掛けを作ってあげました。
すると、●くんは大喜びで、「もう1匹は?」とそちらにも仕掛けをつけてもらいたそうでした。
が、他の子の頼みごとを聞くうちに、
●くんの「もう一匹のもして!」という願いは、そのまんまになっていました。
●くんは、もう一匹のカブトムシを手にして繰り返し、
「これは、これはどうなるの?」と言っていました。
「ちょっと待っていてね。次には、それにも仕掛けをつけてあげようね」と答えた時、
●くんは、「あっ、そうだ!」とひらめいて、「これにテープで付けるといいよね」と言うと、
1匹目のカブトムシのお尻に2匹目のカブトムシの頭を貼りつけました。
すると、巻き上げ機を回すと、2匹同時に上に登っていきました。
そこにいた一同、大感激!
自分のアイデアで、うまく問題を解決した●くんは、とにかくうれしくってうれしくって
飛び上がらんばかりの喜びようでした。
すると、その傍らで、年中さんの○くんが、自分の描いたカブトムシを切り抜いていました。
細い足も角の部分も、それはていねいに細かいところまで
切り抜いています。
私の大雑把な切り方と大違い。
●くんと○くんの姿を見て、私は自分の持っている「隙」に感謝しました。
自分の側に、どこか不格好なちょっと足りない部分を残しておけば、
子どもに花を持たしてあげることができるなぁっと。
(そういうこととは別に、物忘れと家事の怠け癖はビシッと直したいところですが……)
子どもにすれば、大人から「自分で考えなさい」なんて指示ない時に、
「そうだ、自分で考えればいいんだ!」ってところから 自分で思いついたら、
とってもうれしいですよね。
それに、「先生より上手に切っちゃうぞ」というのも、
やりがいのある仕事でしょう。
そんな風に、「そう出たか!」と大人の方が虚を突かれるような
子どものアイデアや考えが生かせる場面というのは、大人が気付いていない
大人のコントロール下にない「隙」にあるものですね。
『大工さんごっこ』のおもちゃって、男の子のおもちゃの定番品のひとつですが、
2歳を過ぎる頃には飽きてしまう子が
多いのではないでしょうか?
いかにもおもちゃっぽい作りで、
トンカチで2回もトントンすれば、力を入れなくても
釘が打ててしまいますし、
ネジにしてもただ穴に入れて留めるだけでは
発展性がありませんよね。
そこで、空き箱にえんぴつを使って穴を開けて、
釘を打ったり、ネジをとめるようにすると、
おもちゃの難易度が上がって、2歳以上の子たちにも楽しめるようになりました。
箱を重ねて、えんぴつで穴を開けると、
トラックなども簡単に作れます。
写真は大工さんのおもちゃのねじではなく
100円ショップの木工コーナーで売っている木製のねじです。
5個100円くらいだったと思います。
段ボールで作ったタイヤです。
竹ぐしや針金を使うと、壊れた時に怪我をするといけないので、
ストローを軸にしています。(タイヤが回るようにストローを二重にしています。)
ティッシュペーパーの箱にタイヤを取りつけて
車の工作の基本のパーツとして用意しておくと、
上に取りつける箱次第で、トラックや清掃車や除雪車などが
幼い子にも自分で作れますよ。
2歳4ヶ月の★ちゃん、2歳6ヶ月の●くん、2歳7ヶ月の☆くん、2歳8ヶ月の○くんのレッスンの様子です。
2歳児さんたちは、「自分で!」という強い思いを持っています。
その「自分で!」の気持ちの幅を広げ、質を高めて、
「環境や大人から学びながら
目的を持って最後までやり遂げた」
「自分で判断し、自分で考え、身体や感情のコントロールができるように」
といった経験をたくさん積めるようにサポートしています。
具体的なサポートの様子は、
2歳児さんグループの工作や遊びの様子をもとに
説明させていただきますね。
何かを見たり聞いたりした時に感じる
「不思議」「面白い」「楽しい」「自分でやってみたい」「ちょっと怖いけどワクワクする」
「あれれ?どうして?」といった気持ちは、
いっしょにそれを眺める人の雰囲気や反応によって、より豊かになったり深みを増したりします。
子どもが興味を持ったものや、感動しているものに
大人もいっしょに関心を抱いて、
できれば物作りやごっこ遊びの中で
それを活かすようにすると、
子どもが物事に能動的に創造的に関わるようになっていきます。
2歳児さんたちのグループレッスンでは、
そんな風に見る力や聞く力や感じ取る力を高めて、
それらが自ら行動する力につながっていくように配慮しています。
ブロックのきりんを気に入っていた子がいたので、「きりんを作ってみる?」と
誘うと、うれしそうにこっくりしました。
色画用紙を渡していると、「~くんもする」「~くんも」と
他の子らも集まってきました。
2歳児さんたちとする工作では、時折、「本人がわかるし、できる」というレベルの
手本を見せています。
でも子どもがその通りにせずに
自分の好きなように作りだしても、そのまま見守っています。
できるだけ自由にのびのびと作業に熱中できるように
だけ気をつけています。
ただ見守るだけでなく、熱中している姿から、
その子がどのような作業に魅力を感じ、
どんな課題を抱えているのか、を読みとるようにします。
そうして子どもの今、発しているものを受け止めたら、
丸める、切る、切り刻む、テープで貼る、のりで貼る、
折る……といった本人にできそうな工作技術を教えたり、道具を用意したりします。
また作品を、劇遊びやごっこ遊びの世界で使うことを提案しています。
子どもの作品を大人が見本通りに作り変えないように
注意してください。
見本を見せて、子どもが自分の感じたように真似たら、そうした真似ようとする
姿勢があるだけで、2歳児さんとすればすばらしいことと思います。
この日は、子どもたちが自由に作ったきりんを
操り人形のような形にする方法を教えました。
☆くんはきりんの顔の部分を2つも貼りつけていました。
それでも、大人が、「顔はひとつでしょ」と言ってはがしてしまうようなことは
しなかったので、「きりんが口を開いて、何かを食べているところ」ということにして、
その部分が一番気に入っている様子で遊んでいました。
トンネルを作ってミニカーをくぐらせると、
☆くんが、「ぼくも作りたい」と言って、見本を参考にして
トンネルを作っていました。お母さんに押さえててくれるようお願いして、セロテープで
貼っています。
こんなにシンプルで簡単な工作でも、「できあがりの見本を見て、自分で材料を探してきて、はさみで切って、貼りつける」
という一連の作業をやり通すのは2歳児さんにとって
なかなか難しいものです。
小さなミスをする度に、
ダメ出しされたり修正させられたりしていたら、こんな風に最初から最後まで
全て自分の力でやり遂げようとする力は育っていきません。
2歳児さんたちの「自分で!」の気持ちを大切に扱って
応援していくことと、子どもの能力を見くびらないことが大事だと思っています。
算数タイムに、玉を操作していくおもちゃで遊びました。
どの子もやりたくてたまらなかったらしく
身を乗り出して、のぞきこんでいます。
最初に、どの順番でおもちゃを使うのか説明したところ、
子ども同士で指さししながら、次の番の子に譲っていました。
使い方がわからない時も
少し待っていると自分なりに考えて
扱っています。
いちいち指示を与えるのではなく、
注意深く、こちらの教えるお手本を見るように言うと、
真剣な表情で学んでいました。
ハンディーキャップのある5、6歳の子たちの
工作指導に行ってきました。
工作をする時、「こういうものが作りたいな」「~を作ってよ」と
作りたいものや作ってほしいものがイメージできるようになる
ことが大事だと思っています。
最初は、その子が興味をしめしたおもちゃや触りたがるものを
いっしょに作るのがおすすめです。
この日、子どもたちが触りたがっていた
あんぱんまんの自動販売機です。
お金を投入したり、取り出し口から物を取り出したりできる
機械は、ハンディーを持った子たちも、とても喜ぶ工作です。
切りとる部分は、カッターは使わず、えんぴつを押しつけて穴を開けて、
その穴からはさみを入れて切るようにします。
このように手本の段階で、その子が次から自分でできるレベルに
調整しておきます。
子どもは、「自分にできそうか、難しすぎるのか」判断しながら、大人の作業を
観察しているものですから。
話が脱線しますが、
「えんぴつを押しつけて穴を開ける」という作業は、
紙コップの底でやらせてあげると、かなりハンディーが重い子でも
できる場合がけっこうあります。
「自分の力を上手にコントロールできた」という達成感が味わいやすいようです。
砂場用シャワー、ありさんのお家、などになります。
あんぱんまんの自動販売機を作るとすると、投入口と取り出し口を作って、
本人にボタンにするシールなどを貼らせると、できあがり。
子どもたちには、もとになった立派なおもちゃの自販機より人気でした。
コインを入れて、ボタンを押すと、(手動で)取り出し口から粘土の塊が出てきます。
ハンディーのある子にとって、「コインを入れ、ボタンを押し、取り出し口から商品を取る」
という一連の作業をこなすのは、
真剣にやらないとちゃんとできないけれど、
声が裏返るほど魅力的で面白い作業だったようです。
手動でするこうした機械は、本人の理解力や発達に合わせて
課題を調整することができるのがいいところです。
たとえば、赤いボタンを押すと、赤い塊が出てきて、黄色いボタンを押すと黄色い塊が出てくる
という遊びの、商品を出す係(赤や黄色の塊を出す側)を子どもにやらせてあげることもできます。
カメラが大好きな子に教えたカメラの作り方。
紙コップの底やペットボトルのふたなどを
レンズにして貼りつけ、
ビーズやペットボトルのふたなどを、シャッターを押すボタンにします。
子どもに「できそうだ」「作り方がわかった」という感覚を持ってもらうような
手本を見せます。
たとえば、写真のような
シャッターを押すボタンにしても、「テープで上からかぶせるように貼る」
という作業は難しい子がいるかもしれません。
「ここらへんに貼ろう」と目標を定めて、テープをつけて貼らなくてはならないからです。
そうしたイメージすることに困難がある子には、箱の側に先に
裏返したテープを付けて置いて、ビーズを乗せただけで
ひっつくようにしてあげるのもいいです。
このお菓子の箱は、開く面が面白い位置についていたので、
紙に子どもの顔を描いて、写真ということにして
入れておきました。
こうすると、「写真を撮るよ」と相手に向かってカメラを構えて、撮って、写真を取り出して見せることができます。
おそらく子どもたちにとったら、
「ハイポーズと言って☆ちゃんを撮ったから、
☆ちゃんの写真がカメラから出てきた。☆ちゃんを撮ったのに、★くんの写真だと、あれあれおかしいな?」
という気づきがなかなか生まれないかもしれません。
でも、これくらいシンプルな作りだからこそ、
繰り返し遊ぶうちに、理解につながる気がしています。
風船を膨らます道具は人気がありました。
穴を開けて、お札のおもちゃを入れています。
手先に器用さが要求される難しい作業。
でもどの子も必死になって、お札を穴に入れようとがんばっていました。
☆くんは、ブロックのはちの巣のありかをしめす標識を見つけて、大はしゃぎ。
3本も標識を並べた先に
左右対象にていねいに組み立てた木を立てました。
木の右横にぶらさがっている黄色い塊は、はちの巣なのだそうです。
☆くんのお母さんの話では、以前の☆くんは
きれいな仕上がりやデザインを考えて作品を作ったことなどなかったのに、
★くんといっしょにブロック遊びをするうちに、
色や配置に気を配って作るようになってきたそうです。
★くんはブロックが大好きです。色や形に統一感のあるとても美しい作品を作ります。
ほとんど他者との会話が成り立たなかった時期から、
★くんが作りだすブロック作品は、★くんの言いたいことを詰め込んだ言葉のように
見えました。
☆くんは会話力も見立てる力も高い子で、
「こんな作品が作りたい」と目的を持ってブロック制作に取り組めるのですが、
色や形がバラバラな大雑把な仕上がりになりがちでした。
といっても、大人の指導に素直に従えるタイプではありませんから、
他者の作品を参考にして、自分の力を高めていくのは難しいのです。
それが、親しい★くんとなると別なのでしょう。
★くんが、「トラの車だよ」とトラの子をたくさん乗り物に乗せた作品を作れば、
自分のコーナーにも
トラやキリンをたくさん集めて飾り、★くんが美しいデザインで作品を作れば、
自分も左右対称さや色に気を配った作品を作っていたのです。
工作の時間に、★くんがモールをいじっているうちに
「はち」のような形ができました。
「★くん。これ、☆くんにあげてもいい?」とたずねると、「いいよ」という返事。
モールのはちに糸をつけて、☆くんのはちの巣につるすことを提案すると、
☆くんは素直に喜んでいました。
(以前はわたしがちょっと手を加えることを提案しようものなら、
「やめてよ。ぼくのに変なことしないでよ!」とキレていた☆くんにすると、
ずいぶん寛容になったものです。お友だちの力でしょうか)
★くんにしても、☆くんが化学実験や工作が大好きなこと、「算数は好きだよ」と断言するのに
影響を受けたのか、
時間割にそって遊ぶ学校ごっこにちゃんと参加していました。
わたしの問いかけにも、きちんと返事をしていました。
以前は自分のファンタジーの世界に閉じこもったまま、
話しかけても返事をしないことが多かったのに、
お友だちとの心の結びつきがもたらす成長の大きさに驚きました。
☆くんは時間割を書く前から、「ブクブク泡がでる実験がしたいよ」と繰り返していました。
前回のレッスンで、おフロ用の発泡剤を使った実験をしたのが
印象に残っていたようです。
そこでわたしが、「それなら時間割を書いて、1時間目は理科よいうことにしようね」と言うと、
「いいねぇいいねぇ」と乗り気でした。
次に、★くんに向かって、「2時間目は何がいいかな?」とサラッとたずねてみると、
「工作」という答えが返ってきました。
★くんの自然で素早い反応に、あれっとびっくりしました。
それに工作というのは、★くんがようやく
ほんの少しだけ参加するようになったものなのです。
「★くん、工作で何が作りたいの?」とたずねると、「逆上がり板」という答え。
逆上がり補助板のことでしょうか?
「★くん、☆くん。3時間目は算数でいいかな?」とたずねると、
「いいよ。算数好きだから」と☆くんが答えました。
1時間目の理科の時間。
花びらをすりこぎでつぶして、色水を作りました。
それにクエン酸や重曹を加えて色の変化を楽しみます。
途中で試験管の中にスポイドを落としてしまいました。
☆くんは、こうしたささいなトラブルに時に、「どうしたらいいかな?」とわたしといっしょに
アイデアを出していって、解決することが
大好きです。
今回のトラブルで、最初はピンセットで取ればいいかと思ったのですがうまくいかず、
ストローの先にガムテープを貼って、釣る形で取り出すことができました。
☆くんは、そうした解決案のひとつひとつに、
考えている間も、成功した時も、
小躍りしそうな勢いで喜んでいます。
2時間目は工作。
「工作がしたい」と自分から言っていた★くんですが、いざ、「2時間目です。
工作の時間よ、椅子を持ってきて」と言うと、不安そうにゴロッと床にうつぶせになっていました。
★くんにとって、何をするのかイメージしにくい工作は
まだ不安の対象なのでしょう。
そこで、100円ショップの切符セットを用意して、最初は切符を切符切りでカットする作業に誘って、
途中から切符が出てくる券売機を作る作業に誘うと、
いつの間にか楽しそうに工作に参加していました。
「切符はどこから出てくるのかな?切ってほしいところを教えて」と言うと、
★くんは、箱の下の方を指さしました。
この時の対応も自然です。
以前の★くんだったら、こんな風に自然なやり取りが成り立つのは
とてもめずらしいことでした。
たすねていても、聞こえていないようだったり、
しつこく聞くと、スーッと遠い場所に行って、ひとり遊びを始めたりしていましたから。
でも、今回のレッスンでは、1度として★くんが返事をしない、ということはありませんでした。
返事がすぐになくても、少し待っていると、
きちんと返事が返ってきました。
わたしは★くんが指さした部分を切りとってから、
箱の上部も切りとりました。そして、画用紙を箱の中に滑り台風になるように入れました。
「★くん、ボタンを押してみて、切符が出てくるよ」と言うと、
「ボタンがついていない」と箱の表面を探しています。
「そうね、ぼたんをつけなくちゃね」と言って、ペットボトルの蓋を用意し、ガムテープでぺったんテープを
作る方法を見せると、そこにボタンをつけていました。
ボタンを押すと、切符がでてきます。
この工作は★くんにとってわかりやすくて、魅力的なものだったようです。
次回に続きます。
自閉っ子 と 学校ごっこ の★くんと☆くんの今月のレッスンの様子です。
前回のレッスンの後で、☆くんのお母さんからこんなコメントをいただいていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昨日はレッスンしていただき、ありがとうございました。
遊びの中とはいえ、☆が学校ごっこがこなせたことに驚きました。
脱線しそうになると、指摘すればその都度修正できていたのも意外でした。
☆に時間割を決めさせていただけたからでしょうか?
先生や★くんとの結びつきの中で、少しずつ他の人や状況に合わせて行動することを身に着けてくれればと願っております。
どうぞ宜しくおねがい致します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☆くんは好奇心旺盛で知力も高い子です。
それが広汎性発達障害の子の特性ゆえに
自分発でやりたがることは意地でもやり通そうとする反面、
その場の状況が☆くんに求めていることや
他者から誘われたことは頑としてしようとしないところがありました。
まるで他の人の誘いに乗ると、
自分自身を失ってしまうとでも思っているように
激しいパニックを起こしたり、攻撃的になったり、自分の殻に閉じこもることが
よくありました。
それでも、時間をかけて関係を築いてきたので、
わたしと☆くんの間では、工作やブロックやお人形遊びなら、
わたしが誘うと、「いいねぇいいねぇ、なおみ先生はいいことを考えたねぇ」と
大人びた口調で言いながら、いっしょに活動するようにはなっていました。
が、まだまだ「○○の時間ですよ。席に着いてね」といった誘いには強い抵抗があるようで、
そうした話題が出ると、「そんなこと言わずにさぁ、ぼくの作ったゲームをしようよ」とか、
「それはしたくないんだよ」「今はさ、ブロックしているんだよ。なおみ先生もしたらどう?ブロック?」
と、何とか自分のペースにこちらを巻きこもうとがんばる姿がありました。
それが前回のレッスンで、時間割を作って、学校ごっこをしたところ
まだまだ完璧とはいかないものの、
約束したスケジュールに沿って、自分の気持ちをコントロールして活動することができていたのです。
そうした流れで、今回も時間割を作って学校ごっこをすることにしました。
すると、とてもびっくりする変化がありました。
前回の学校ごっこでは、受け身の状態で、☆くんとわたしがしている学校ごっこに、
何となく参加させられていた感があった★くんが、
時間割作りの段階から、積極的に加わる姿勢を見せだしたのです。
次回に続きます。
小3、小4の子らの科学クラブの様子です。
「ひかる!ホタル液」という液体をいただいたので、さっそく実験させていただきました。
NASAのアポロ計画用に開発されたものだそうです。
かなり長い間、しっかり発光していました。
前回の科学クラブで自分で描いた設計図に基づいて
潜水艦の一部を作っていた★くん。
お家で改良したそうです。スイッチを押すとプロペラが回る仕掛けです。
迷路を脱出すロボットで遊びました。
迷路を作って走らせるうちに、ロボットが障害物の情報をどんな風に
読みとっているのかわかってきます。
科学クラブの子どもたちにも、午前の難問算数研究部で解いた問題と同じものに挑戦してもらいました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
右の図のように、1辺の長さが3㎝の立方体を積み上げて、
立体を作っていく。このとき、次の問いに答えなさい。
①5番目にできる立体の体積を求めなさい。
②29番目にできる立体の面の数を求めなさい。たとえば、2番目にできる
立体の面の数は10枚である。
③面の数が602枚になるのは何番目のときですか。
(慶應義塾湘南藤沢中等部 平成21年度)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
科学クラブのメンバーのうちのふたりは、難問算数研究部にも参加していた子たちなので、
①と②はさっさと解いていました。
問題は、③番。
午後の科学クラブのみに参加した子らも①と②は解いて、
③で頭を抱えていました。
「え~わからない??」と騒ぐ子らに、
まずわかっている事柄から整理していくように伝えました。
「何が確実?もう分かっている数は何?」とたずねると、
「前から見たのと、後ろから見た面は、2つ。
それから、底は1つ」と言いました。
「わかった!」と意気揚々と解きだした●くんは、勘違いして、
602番目の面の数を計算していました。
ミスに気づいた●くんに、わからない数字を□の状態のまま
整理するように教えました。
そうして順番に、
正面、底、上から見た数、右横、左横から見た数……と
みんなで紙に
整理していくことにしました。
ずっと黙りこくって考え込んでいた☆くんが、いきなり答えを
書きました。
暗算していたようです。正解していたのでいいのですが、
(それにすごい計算力ですが……)できるだけ紙に書いて、
手を動かして解くように注意しました。
最初に、「チームで解いていいでしょ?」とちょっと自信なさげに問題を解き始めた
◆くん■くんも、途中から一生懸命参加していました。
子どもたちのほとんどは、まだ□のある複雑な計算の求め方を知らないので、
今回はみんながわかる範囲の方法で、□の求め方を説明すると、
「そっか~」と感激して答えを出していました。
正解は、
①25×(3×3×3)=675
②1×2+29×2+57+1=118
②2+4×□=602 □=(602-2)÷4=150
今回、一番子どもたちを夢中にさせていたのは、慶應義塾湘南藤沢中等部の上の問題です。
(慶應義塾湘南藤沢中等部の受験問題は、算数にしても国語にしても、
子どもたちから、考えることへの愛情を引き出してくれるような問題が多いので大好きです。
思考力は必要でも、公式などは知らなくても解けるものがたくさんあるので、小3や小4の子たち
も解くことができます。)
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右の図のように、1辺の長さが3㎝の立方体を積み上げて、
立体を作っていく。このとき、次の問いに答えなさい。
①5番目にできる立体の体積を求めなさい。
②29番目にできる立体の面の数を求めなさい。たとえば、2番目にできる
立体の面の数は10枚である。
③面の数が602枚になるのは何番目のときですか。
(慶應義塾湘南藤沢中等部 平成21年度)
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①はどの子にも易しかったようで、すぐに解いてしまったのですが、
②には頭をひねっていました。
それぞれ必死に考えていて、正解にたどりつけた子は小躍りして喜んでいました。
③は算数難問研究部の後、午後からある科学クラブで(そちらにも参加していた一部の子たちに)
解いてもらいました。
②を解く前に、
<たとえば、2番目にできる
立体の面の数は10枚である。>
ということを、立方体の積み木で、数え方を確認しておきました。
そんな風に「小さい数を扱っている段階で、自分の理解をしっかりさせておいて、
大きい数を扱う推理に役立てる」ということを
学習中です。
子どもたちが夢中になって算数の問題に取り組むようになるのに、
最初はチームで協力しあって解いて、途中からこれは自力で最後まで解けそうという子が
チームから抜けて個人で答えを出す、
という方法がうまく機能することが多いです。
かなり難しくて、それでいて、知識はなくても思考力があれば解いていけるような問題を、
みんなで解いていくのです。
難解な図形の角度を求める問題だと、
どこにも角度が書いてないので、自分で補助線を引いて、
角度を作りだして解いていくことがあります。
そんな時には、「正三角形を見つけ出せ(60度が生まれるから)」
「2等辺三角形を見つけ出せ(底辺の両端の角が同じなので、そこから答えが見つかるから)
「直角をさがせ」「対角線を引いて45度を作りだせ」といった
探しっこゲームのような形で楽しんでいるうちに、
しまいに最後まで自分で答えを突き止めたいという気持ちになっていきます。
それと同じ要領で、文章題の線分図に隠れた秘密を見つけ出すような
調子で楽しむうちに、自力でしっかり解くようになっていました。
文章題にしても、図形問題にしても、子どもたちは
自分なりの考えで正解にたどりついていたため、答えはあっているものの、
解答欄にあった解き方とは異なる子たちもいました。
より効率的な解き方を学ぶために、
答え合わせをして正しい解き方を確認するのも大事でしょうが、
それぞれが自分の思考力で答えを導きだす力を持っていることも
大切にしていってあげたいと感じています。
算数の学習の前に子どもたちが協力して電子工作の
「申し訳ない」とえらい人が頭をさげる人形を作っていました。
設計図を隅々まで読んで、自分たちだけで
こうしたものを仕上げることができるのは、
頼もしいです。