虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉症等で、遊びが広がらない子、発展しないい子に関わるには? 2

2013-12-22 21:35:11 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

自閉症等で、遊びが広がらない子、発展しないい子に関わるには? 1

の続きです。

子どもの遊びの段階が異なるので、先の記事で紹介したコメント主さんへのアドバイスにはならないのですが、

「外から見ると、それまでとまったく同じことを

しているようにしか見えない状態のまま、質を変えたり、コミュニケーションを取る場面を加えたりする」という

ことについて、

4歳の自閉症の☆ちゃん、コミュニケーション能力に困難がある年中さんの●くん、

言葉を話すことができない年長さんの★ くんのレッスンをもとに、説明させていただきますね。

 

レッスンに来ていた☆ちゃんとわたしが、『どっちがピンチ』という絵本を読んでいた時の話です。

傍らでそれを見ていた☆ちゃんのお母さんは、

「また、その絵本か……」と、焦っているようにもがっかりしているようにも見えるまなざしを

☆ちゃんに向けていました。

というのも、☆ちゃんはこの絵本に数ヶ月前からはまっているからで、お母さんの姿からは、

新しい絵本か、別の新しい遊びに興じてほしい、という思いが伝わってきました。

 

実際には、☆ちゃんの

『どっちがピンチ』との関わり方は、数ヶ月前とずいぶん違っていました。

同じなのは見ている絵本のタイトルだけです。

 

以前の☆ちゃんは、わたしが、「どっち、どっち、どっちがへん?」と声をかけると、

「こっち」と一方のページを指さしながら、忙しくページをめくっていきました。

途中からは自分で、「どっちがへん?」「こっち」と言っては

ひとりでどんどんページをめくり続け、意地でも他の介入を受け付けないような

頑なな態度を取っていました。

 

その時期まで、そうした態度は、絵本だけでなく、どんな遊びでも

見られました。

一度、決まった遊び方を始めると、そこで交わす会話も動作も、

全て毎回同じように繰り返そうとするこだわりが強かったのです。

関わろうとする人が、☆ちゃんの中に作られたルールとは別の声かけをすると、

無視するか、怒ったように相手を払いのけるかして、自分のやり方を押しとおしていました。

 

今回のレッスンで、わたしと絵本を読んでいた☆ちゃんは、

わたしの「どっち、どっち、どっちがへん?」の言葉に、

「こっち」と答えて、一方を指さすところまではそれまで通りでしたが、

その後、わたしが、「どうして?どこがへんなの?」と質問すると、

「ねずみとか「はっぱ」と言いながら、「へん」な理由にあたる個所を指で示していました。

また、わたしが、「そうね、ねずみの方が、ぞうより大きいのへんね。」とか

「ここははっぱじゃないね。ここはお花が咲いている場所ね。」などと言うのを、

嫌がらずに聞く余裕もありました。

おまけに、めがねをまゆげにかけているイラストや

シャツをズボンのように足に履いているイラストの時には、

「へんだね。面白いね。」とわたしが笑うと、☆ちゃんもいっしょにうれしそうに笑っていました。

 

そのように手にしている絵本は同じでも、

☆ちゃんの態度は、この数ヶ月の間に、理解力の点でも、コミュニケーション能力の点でも、

質的な変化を遂げているのです。

そうした変化の過程では、

「前は自分が思っているのと異なる言葉をかけられると、強い拒絶をしていたけれど、

今回は、それほど嫌がらないで聞いていた」とか、

「前は始終、固い表情で絵本をめくっていたけれど、

今回は、表情が柔らかく、ニコニコしている時もあった」

といった、誰も気づかないような

ささいな変化がたくさんありました。

そうした変化を起こすために、働きかけたものの嫌そうにしているから、後戻りしたり、

何の変化もないけれど、根気よく何度も働きかけたりすることの

繰り返しがあります。

 

次回に続きます。

 


年中さんたちのグループレッスンの様子です♪

2013-12-21 19:16:41 | 算数

年中さんの★くん、☆くん、●くんと●くんの弟の3歳の○くんのレッスンの様子です。

 

急に宇宙ブームが始まったという★くん。

教室に着くなりブラックホールについて熱弁をふるっていました。

そこで、周りにあるものがどんどんブラックホールに吸い込まれていく様子にも似た

細かい粒子の砂が円錐型のくぼみを作りながら穴に入っていくところを見せてあげました。

すると、砂の不思議な動きに、どの子もすっかり夢中になっていました。

 

自由に活動する時間、☆くんと●くんはブロックでモノレールとだんだん高くなっていく線路と電車を作ってから、

それらを動かすための仕組みを工夫して遊んでいました。

タコ糸を使った巻き上げしきの装置。

モノレールは帽子用のゴムを使って、自動で動くようにしました。

☆くんは、一度、教室で覚えた作り方を、お家に帰ってからも

何度も再現して作るそうです。

写真のモノレールをあっという間に作ってします姿に手慣れたものを

感じました。

3歳の○くんとわたしの共同作品。カキ氷を作る機械です。

★くんが宇宙の生命体ということにして

夢中になって遊んでいた「砂鉄入りのスライム」です。

磁石を近づけると、ネバネバした液体が動きます。

 

ご近所さんの庭で取れたという枝付きのカキ。

「カキがどんな風になっているのか、子どもたちに見せてあげて」と

いただきました。

○くんが大喜び。「1、2、3!」と元気に数えています。

 

算数タイムには、『ニュートリーコ』というゲームをしたり、

トーマスの数カードで足し算のゲームをしたり、

手作り教具で5の分解のクイズをしたりしました。

 

『ニュートリーコ』の作り方はこちらです。

数の分解を学ぶ教具の作り方はこちらです。

どのゲームも学習もとても面白かったようで、どの子も夢中になって笑いがはじけていました。

 

 

 

 

 


自閉症等で、遊びが広がらない子、発展しないい子に関わるには? 1

2013-12-19 17:54:57 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

「遊びが発展しません。広がりません。どのように関わればいいでしょうか?」

という質問をいただくことがよくあります。

 

「今、こういう遊び方をしている」という状態は同じでも、

子どもの障害特性や個性や発達の段階によって、それに対する答えは

違ってくると思っています。

 

自閉症等が原因で、遊びが広がったり発展したりしにくい子と

関わる時に気をつけているのは、

見たところ前と同じ遊びや活動をしているようにしか見えない場面で、

微細な質の向上や変化を作るようにすることです。

 

たいていの親御さんは、遊び道具や遊び方が別のものに変わらない限り、

遊びの質の向上や変化はないもの、と考えがちです。

でも、実際には、外からはまったく同じことを繰り返しているように見える活動の中にも

さまざまな段階があるものです。

また、工夫次第で、新しい活動への橋渡しになるような

意味を加えたり、体験の幅を広げたりすることもできます。

 

こんなコメントをいただいています。

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工夫をしても興味が薄く、先生の適度な介入が上手くいかず苦戦しています。味噌汁やお皿をつけとく水など、自然にキッチンにある水をおお玉ですくって落とす水の動きと音が好きで楽しそうにしています。遊びとして色々な容器に入れて用意したらやらず、金魚すくい的なことや小豆やビー玉混ぜもやりましたが興味なく、ひとりで静かにしているのがいいようです。
なのでずっとぽちゃぽちゃいい音だね~と声をかけたり、味噌汁を作るねくらいで、注目するわけでなく,出来上がったらどいてとばかりにすくっては落とすを繰り返します。なかなか発展しないのでこの場合先生でしたらどのようにされるのかお聞きしたいです。あまりおままごと的なやりとりより「よそる」など本物(手伝い)に近いことを考えたほうがいいのかなとわからずにいます。

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これまで上手くいかなかった介入の仕方を、

活動自体の変化をもっと減らした上で、工夫するといいのかもしれません。

「活動自体の変化をもっと減らす」というのは、外から見ると、それまでとまったく同じことを

しているようにしか見えない状態のまま、質を変えたり、コミュニケーションを取る場面を加えたり、

楽しい、面白いという気持ちが自分ひとりの世界だけでなく他との関わりの中で感じられるように

していくことです。

相談いただいているお子さんの状態は、4年前からレッスンの様子を記事にさせてもらっている

自閉症のトムくんの会った当初の状態と近いような気がします。

(今のトムくんは、ピアノを上手に弾き、短い日記を書き、国語や算数の問題に自分で答えを書きこみ、自発語も

出てくるようになっています。)

自閉症のトムくんと新しい成長の兆しの記事の、2009年~2010年頃の記録の中に、コメント主さんのお子さんへ

の介入の仕方のヒントが見つかるかもしれません。

 

 

では、次の記事で、

具体的な例に挙げて紹介しますね。

 

 


サイコロの見えない面を推理する教具を作りました。

2013-12-18 21:00:54 | 算数

サイコロの見えない面を推理するための教具を作りました。

100円ショップの半透明のプレゼント用の小箱とドッツシールを使っています。

 

向かい合う面の関係に気づきやすいように同じ色のシールを貼っています。

半透明の箱を使うと

見えない面に対する推理力が働きやすくなりました。


「数の分解」がよくわかるようになる教具の作り方

2013-12-18 19:36:51 | 教材作り

年少さんの★くんといっしょに

「数の分解」の教具を作ってみました。

 

<材料>

お菓子の箱とプリンカップ、数えるための小物。(ここではジュースのキャップを使っています)

 

<作り方>

お菓子の箱のふた部分を半分に切り込みを入れて、

箱の中にプリンのカップを入れるとできあがり。

 

<学び方>

最初は「5の分解」から。

 

① 問題を出す側の人が、5つのキャップを

ふたつのカップに分けて、箱のふたを閉めます。

 

 

② 一方のふたを開けて、

もう一方(見えない方)のカップ中にある

キャップの数を当てます。

 

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★くんも楽しく問題に取り組むことができました♪

 

(こんなこともして遊びました。)

ペットボトルのキャップを転がす坂を作りました。

 

★くんが、「坂を上がっていくようにしたい」と言ったので、

坂の終わりの部分に

逆向きの急な坂を合わせて、

坂を下る力を利用して、坂を上るようにしました。

 

 

 

 

 


ゲーム作り と サイコロの算数問題

2013-12-17 20:45:52 | 算数

今、教室では、クリスマスやお正月に家族で遊ぶための

ゲーム作りが流行中です。

詰将棋のように先を読みながら勝負するゲーム。

裏面には、同じこのマス目を使って、

それぞれの子が

自由に自分で考えたゲームを作りました。

 

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サイコロをいくつか重ねて、

見えない面の数を当てるゲームを

しています。

 

サイコロの見える面の数から見えない面の数を

推理する力は、中学入試でも出題されています。

こんな風に、実際のサイコロを見ながら、面の数を当てて遊ぶうちに

推理するコツがわかってきて、

こうした問題を考えるのが大好きになっていくはずですよ。

 

 

 

 


今年のパワフルなブロック作品の数々

2013-12-17 09:09:15 | レゴ デュプロ ブロック

<小4のおふたりさんの巨大迷路>

<幼稚園の子らと作ったトルコの迷路のような地下都市>

<巨大迷路を女の子たちがお菓子美術館と博士の研究所に>

 

<小学生作。お金を入れるとお菓子が出てくる自販機>

<お姉ちゃんたちの協力で完成。高架の線路>

<九九タワー>

<船>

<立体駐車場>

<水車>

まだまだ紹介したいものがありますが、またの機会に♪。


「やらなきゃいけないことを、さっさとやる」ができない子 必要最低限のことをやってほしい 2

2013-12-16 22:32:36 | 日々思うこと 雑感

「やらなきゃいけないことを、さっさとやる」ができない子 必要最低限のことをやってほしい 1

の記事にいただいたコメントを紹介します。

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久しぶりにコメントします。
先生のところに息子と伺ってからもうすぐ2年になります。
あの母子二人の大阪旅行は、今でも時々息子と話すほどに、心に残る思い出深いものです。

この記事に書かれている内容のコメントは、たしか息子が1年生の時、今から2年少し前の一番大変だった時に先生にコメントかペタで相談した時のものだったと思います。

一番苦しかった1年生の時。

それから2年がたち、息子は大きく成長しました。
苦手なことにも取り組んで頑張れるようになってきました。
あんなに時間がかかった宿題も、だいぶスムーズに進むようになっています。

2年生の秋くらいに理解力の面でも社会性の面でもずいぶんと成長しました。

1年生の頃はついていけなかった算数も、ぐんと伸びています。

虹色教室の記事を読みながら、いろんな面で息子の応援団になってくれる、信頼できる人を少しずつ増やしながら、助けてもらい支えてもらいながらここまで来ました。

まだまだ困ったところもあります。
でも、その多くは「普通の3年生の男の子」の持つ困った感から大きく逸脱はしていません。

悩みながら、泣きながら、もがきながら、でも頑張ってきてよかったと思っています。

先生の記事を読みながらいつも思っていたこと。

偏りがちな子だからこそ、バランスよくいろんな経験をさせられるように努力しよう。

なかなか広がっていかない息子の世界が少しでも広がっていくように手助けをしよう。

いろんな考え、子育て論があるけれど、それはあくまでも参考程度、親の直感と眼の前にいる息子の現在を一番大切にしよう。

怒鳴ったり手が出たこともいっぱいで、いい母ではありません。
何でこんなに大変な子どもが私のもとに、といつも思っていました。
だけど、息子はいい子に育ってくれています。

今は奈緒美先生をはじめ、いろんな方の支えに感謝しながら、思春期に入りつつある息子育ても新たなステージに向かいはじめているのかもしれません。

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難しい子を育てている親御さんたちに勇気を与えてくれるコメントですね。ありがとうございます。

わたしも2年前にコメント主さんとお子さんに初めてお会いした日を懐かしく思い返しています。

すてきなお母さんとお子さんでした。

コメントを読ませていただきながら、わたしも勇気をいただきました。

発達に凹凸のある子たちと向き合うことは、わたしにとっても、

一般的な困り感のない子たちに付き合う何倍も、苦しい時期を耐えて超えていくことを要求される

体験でもあるのです。子どもや親御さんの背負っている重荷をわたしもいっしょに抱え込んでしまうこともあれば、

手間や時間や心を全力で傾けても、むくわれない気持ちを味わうことも

多々あるのです。

それでもわたしは凸凹した部分を持ちながら、自分のペースで成長していく子たちが

大好きで、小さな成長に親御さんといっしょに小躍りして喜んだり、

その言動に度々悩まされていた子がいつの間にかしっかりしているのに感動して

胸がいっぱいになったりすることがしょっちゅうありますから、

結局、こうした育てにくい子との付き合いはプラスマイナスでいうと

プラスの方がずっと多いようです。

 

そんなことを書くうちに、虹色教室をする前、子どもを預かる有料ボランティアをしていた頃に、

書いた『計算』という詩のことを思い出しました。

傘をさしている男の子のイラストは、預かっていた自閉傾向のある幼児がモデルです。

コミュニケーションが取り辛く 
いつも無表情なその子が
大好きなハトを追いかけた後や
風の気持ちのいい日
ふっと見せるきれいなきれいな笑顔を描きました。



よかったら 詩も読んでくださいね

      計算

  嫌なことがあった日に
  フトンの中で計算する
  良いことと 悪いこと
  どちらが多いだろうかと

  世の中を見わたせば
  悪いニュースばかり目につくし
  がんばっても がんばっても
  ままならないことばかり
  …進歩のない わたし

  それでも足したり引いたりしていると
  悪いことより 良いことの方が
  たくさん起こっている気がする

  とりあえず
  今日の帳尻を合わせるために

  心にできた新しい傷口に
  知人にもらった優しい言葉を
  すりこんでおく
  
  ポッカリ空いた小さな穴は
  記憶の中の誰かの笑顔で
  継いでおく

 

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先の記事にこんなコメントもいただきました。

<うちのダンナが書いたかと思いました >

自分自身が、不器用な手と、雑なゴール設定で生きてきたので、不器用なムスメに苛立つことはあまりないのですが、夫は、さっさと、さっさと、を連発し、怒鳴りつけます。私とは違い、ムスメはパニックを連発するヒトなので、園からもまだまだ指摘多く、発達検査も、二回受けました。結果、知能指数では、一部が実年齢の三年先、一つも実年齢以下の項目なしで、二回、一年あけて全く違う系統の検査で、一致しました。
これだけ生きづらい修羅場を毎日やってて、知能指数高いとは、支援もうけられないし、苦笑いです。また、一度、人並になったかと思ったところが、退行することもたびたびあります。夫のいらつきや園からの期待からかばうのに精一杯ですが、ゆっくり付き合うつもりです。
数年したら、おもいでになりますように。小学生までに、というのは、わたしにしても、過大な期待なんでしょう。

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もうすぐ2歳という子と積み木遊び

2013-12-16 07:57:27 | 積み木  ピタゴラスイッチ
もうすぐ2歳になる☆くんと、レンガ積み木で遊びました。
この時期は知能が急速に伸びる時期ですから、
それに応じたさまざまな工夫をしています。

穴ができるように(次回の記事でアップします)積み上げて
ビー球を入れる口を取り付けます。

この時期の子はとにかく
穴に何か入れることが大好きですね。
積み木で穴を作ると、
穴ができたり
なくなったりするので、子どもにすれば不思議でならないのです。

作品を作る手元をしっかり見るようになる。
ビー球を穴に入れる

が、課題です。
積み木遊びは、お家ではレンガ積み木や立方体の積み木。
あそびの教室や科学館のカプラコーナーや園やダイナミックに積み木遊びができる場などで
感性を高め、より創造力の幅を広げるるために、高価なさまざまな積み木に触れる機会を作ってあげるのが
ベストかな~と思っています。
前回の土台の部分です。
これだけでも1歳児、2歳児はおもしろくてたまりません。
大きなビー球、小さなビー球を入れていくと
積み木の作品が膨らんでだんだん崩れはじめます。

☆くんはあわてて手でとめています。
 
積み木で作ったトンネルを、シュッシュッシュッと
積み木の電車が通ります。
後ろから押すと前が出てくる仕組みが
おもしろいです。

これで前後の積み木の数の変化を予測すると、5歳児さんたちを悩ませた
電車とトンネルの問題になります。
 
この時期の子はのぞき穴も大好きです。
横からののぞき穴
縦からののぞき穴を交互に作ります。

立体的に物を把握する力がつきます。

お母さんと子どもで
むこうとこちらでのぞきあいます。

工作やブロックが好きじゃない子も工作やブロックをしなきゃいけないの? 

2013-12-15 13:53:34 | 工作 ワークショップ

 

虹色教室通信では子どもたちが工作やブロック遊びといった物作りを楽しんでいる姿を紹介しています。

そうした画像を見るうちに、

「うちの子は工作やブロックが好きじゃないけど、好きじゃない子にもやらせなきゃいけないの?」

と悩む方がいるようです。

 

もちろんやりたがらないものを無理にやらせる必要はないはずです。

 

ただ、「やりたがらない」の背後にあるものを、

安易に、好き嫌いの問題とだけ捉えて、

「うちの子にはあってないようだから、させなくていいわ」と白黒つけちゃうのは

どうかな、と思っています。

 

別に工作じゃなくてもいいし、ブロックじゃなくてもいいけれど、

子どもには、おもちゃに遊んでもらうんじゃなくて、

自分で遊びを作りだしていくようなシンプルな素材との付き合いが必ず必要だと思っているのです。

 

わたしが子どもの頃は、地面や草木や外の世界にあるありとあらゆるものが

子ども自身が創造的に遊びを生み出していくための素材として利用されていました。

 

「子ども時代、工作もブロックもしたことがない」という方も、

地面に円を描いて石けり遊びをしたり、線を引いてドッチボールをしたり、階段を上り下りしながら、じゃんけん遊びをしたり、

どろだんごを作ったり、草花でままごとの料理を作ったり、フェンスを上って新しい道を開拓したりした覚えはある

ことと思います。

そうした自ら作りだしていく遊びの場では、子どもから子どもへ、伝承されていく学び合いが

常に行われていたし、自分の気持ちを表現したり、

自分の考えを伝えたり、黙々と素材の感触と触れ合うゆったりした時間が

ありました。

 

「こういう風に遊びなさい」と大人に遊びを決められたり、「こういう遊び方しかない」とおもちゃに遊び方を

限定されたすることなく、

その日の気分と自分という個性とひらめきや想像の

全てをオールマイティーに受け入れて、さらなる発展をうながしてくれるような遊びの世界は、

今の時代、大人が意識して環境を整えてあげないと

存続できないようなところがあります。

 

もちろん現代の子どもの周りにも土や草花やフェンスや階段はあります。

でも、それらに自由に働きかけることは

今の子に許されていないし、そうした遊びの手本もありません。

 

異年齢の子どもたちが自由に外遊びをする姿が減り、兄弟姉妹が減り、

遊び時間が減り、

遊びを伝承する子どもの文化が衰退し、

子どもの世界に大人が良かれと思うあれやこれやが侵入しているのが、

今の子の現実です。

 

自分で判断したり、考えたり、工夫したり、

「わたしはこういう子だ」とか

「今はこういう気持ち」というものを表現したりするもの。

 

「やーめた、やっぱりこうしよう」と自分の意のままに変更したり、

破壊したり、塗りたくったり、ちまちました作業に没頭したり、巨大なものを完成させる夢を抱いたり

できるもの、していいもの。

 

物と物を会話させたり、他の子のすることに興味を持ったり、感動したり、

自分の作り上げたものに感激したり、称賛されたりするような

人と人とをつなぐ役割を果たしてもくれるもの。

 

そうした変幻自在に子どもの力で創り上げていく遊びは、どの子にとっても大切なもの、重要なものだと感じています。

 

もちろんそれを「工作」や「ブロック」に限らなくてもいいのです。

 

でも子どもにはそういう遊びの経験がいる、ということは現代の子育てでも

心に留めておく必要があるのではないでしょうか。

 

もし「工作」や「ブロック」に興味がない子なら、「知育玩具」や「パズル」や「絵本」でいい……

というのではなく、

やはり「工作」や「ブロック」ぐらい自由度が高く、能動的に働きかけられるような

「ごっこ遊び」「劇遊び」「お姫様ごっこ」とか「秘密基地作り」とか「冒険遊び」

などが楽しめるような環境を用意してあげることが大事かな、と思っています。

 

以前、近所の児童館で工作教室をしていた時のこと、児童館の館長さんから、

「とにかく遊びというと、物を破壊したり、投げたり、足蹴りしたりすることだけ

で終始する子があまりに多いので、どうしたものかと思っています」

という相談をいただいたことがあります。

 

児童館には毎日、大勢の幼児や小学生が集まっていたのですが、

どの子も成長して子ども同士で遊ぶようになったとたん、

おもちゃを破壊して遊ぶことしか興味を示さない……ということを危惧しておられたのです。

「破壊が創造の第一歩ということはわかります。

子どもだってストレスもあるでしょうし。

でも、破壊しかしなくて、遊びが生まれないというのはどうしたものか……」

館長さんは、そう言って、ため息をつかれました。

 

児童館の館長さんの心配は

ある地域の限られた子どもたちの姿ではなくて、

ごく普通の大多数の子らが大人の管理を離れて、

自由な遊び時間を手にした時に陥る姿だと思います。

 

虹色教室では、子どもの創造的な活動に対する意欲が生まれやすいように、

お友だち間の学び合いや協力が起こりやすいように

さまざまな工夫を凝らしています。

 

物作りの技術を身につけつつ、

人と響き合う楽しさ、アイデアを出し合う面白さ、

自分の全エネルギーを無駄にも思えるような何かに投入してみる満足感、

問題を解決した時のスカッとする気持ちなどを味わうことができるような

環境を物の面でも人の面でも整えるようにしているのです。

そうした種まきや地道に心を耕す過程があってこそ、

子どもたちが主体的に遊びを生み出して、お互いの心を共鳴させあいながら

楽しい時間を作りだすことができているのです。

また遊びがそのまま学びの好奇心になり、学ぶ時の姿勢になり、学習動機や意欲にも

つながっているのです。

 

子どもたちはみんな現代っ子ですから、もともと想像力や創造力が豊かで、

自分で考えて遊びを作りだし、お友だちと協調して遊び、問題が起これば解決することができる子というのは

ごくわずかです。

 

教室に来ている小学生にしても、こちらが遊びを豊かにする方法を伝え、

子どもの心に「豊かさのある面白い遊び」という火を灯さなければ、

それぞれ好き勝手に自分で完結する遊びをしようとしたり、

遊びもしないのに教室を散らかしてまわったり、室内でボール投げをしたりして

ゲラゲラ笑い転げる……という児童館の先生が嘆いておられた「破壊する遊び」だけに興じるところがあります。

それが幼児期に聞き分けよく育ってきた小学生たちが好む遊びだからです。

 

そんな子どもの遊びの世界の質の低下を目にすると、大人たちは教育のことばかり語り合っていていいのかな、

と疑問を抱きます。

子どもの遊び世界とはそのまんま子どもたちの内面世界の現れではないか、

と感じるのです。また、子どもの生きている世界の投影でもあると思われるからです。

 

子どもの遊びの世界が衰退し、瀕死の状態にあるということは、

子どもの内面世界が枯渇し、子どもを取り巻く環境が寂しいものとなっていることを

伝えるSOS信号とも受け取れるからです。

 

 幼い男の子たちが車や電車のおもちゃが気に入ると、

「何が楽しいのかしら?」と呆れるほど、

来る日も来る日も、ミニカーを前に動かしたり、後ろに動かしたりしながら、

遊び続ける姿がありますよね。

 

親御さんに、「この1月ほど、どんな遊びをしていましたか?興味を抱いていたものや、

好きになったものはありますか?」とたずねると、

目の前の子が車を前後に動かす姿に視線を投げながら、

「ずっと、あればっかりです。いつも車でしか遊ばないから、別のおもちゃも……と思うんですが、

それしかしたがらないんです。ひとりで遊んでくれるし、つい楽なんで放っといちゃうんですが、

もうちょっと遊んであげた方がいいでしょうか?」

「プラレールを買ってあげたところ、毎日、レールをつないで電車が走るところを

いつまでの眺めています。それ以外の遊びがないので気になるのですが、誘ってもそれしかしたがらないのです。

いっそのこと、好きなおもちゃ類を片付けちゃった方がいいんでしょうか?」

という質問が返ってくることがよくあります。

 

 本人が好きなことを存分にしているのですから、

いいにはいいのでしょうが、

遊べば遊ぶほど、遊びの幅が狭くなって、

親御さんやお友だちがその遊びに参加する隙もなくなってしまうのは、

ちょっと気になりますよね。

 

遊びのパターンが固定されて、柔軟性が失われると、

いつも同じことが、一貫したテーマで再現されないと落ち着かなくなるし、

遊びが、外の世界を遮断する道具になってしまうこともあります。

 

車の好きな子には思う存分、車で遊ばせてあげたいけれど、

遊び道具や遊び方の一部に、

創造的に変化させたり、

自分の思いを表現できるような柔軟性のある素材や方法を取り入れるようにするといいな、

と考えています。

 

 

ひとつのおもちゃやひとつの遊び方にこだわりが強くなると、

お友だちが近づこうものなら、「自分の遊びを邪魔される」「自分のおもちゃを奪われる」と

身構えたり、威嚇したり、人を避けたり、不安のあまり放心したようにボーツとなってしまう子がいます。

 

お友だちからお気に入りのおもちゃを奪われないかと緊迫した様子で遊ぶ子は、

お友だちが持っているおもちゃが目に付くと、

「それを自分のものにできないんだったらこの世の終わり」とでも

言いたげな態度に転じることがよくあります。

 

お友だちと過ごしている間中、

「自分のおもちゃを触られたくない」という気持ちと、

「他の子の持っているおもちゃが欲しい」という気持ちの間を行き来していて

その中間がないのです。   

すると遊びがいつまでも発展しないし、

遊びが発展しないということは、精神的な成長が停滞することにだってつながります。

 

虹色教室では、子どもの遊びの世界が、外の世界のあり様を受け入れやすい状態を保つよう、

また遊びが身の回りの環境への開かれた窓の役割を担うように……という意味もあって、

1歳、2歳という幼いうちから、遊びに物作りを取り入れています。

 

具体的な例を挙げると、たとえば、電車でひとり遊びをしている子がいれば、

ブロックで隙間を作ってもいいし、空き箱に穴を開けてもいいし、椅子の隙間をそのまま利用してもいいのですが、

それを切符の券売機に見立てて、切符が出てくる遊びを加えるようにするのです。

 

工作といっても、紙を乱雑にチョキチョキするのが楽しい時期の子もいるでしょうし、

細い紙を用意してあげて、一回、はさみを開閉するだけで

チョキンチョキンと切符ができていくのを喜ぶ時期の子もいるでしょう。

お母さんに切ってもらいながら、紙だったものが自分の見立てる力で切符に様変わりしてしまう

魔法に夢中になる子もいます。

「切符!切符!」と遊んでおきながら、ふいに紙をパラパラ散らして、

「雪!」と命名して笑みを浮かべる子もいます。

 

そのように物作りを遊びに取り入れたとたん、

自分の頭の使い道が広がり、「今日、駅で~した」と自分の体験をもっと遊びに入れてみようとしたり、

「切符だけじゃなくて、お金もいるよ」と知恵を披露してみたり、

「ジュースが出てくる機械とアイスが出てくる機械とトーマスの出てくるガチャポンも作る!(作って!)」

と創作することと想像力を使うことで、たちまち億万長者なみに自分の欲するものが手に入る喜びに浸る子も

いるのです。

 

 

↑の写真はビー玉をセロファンで包んで信号機を作っている様子です。(色の順番は

間違っていますが、本人の好きなように)

駅で信号機を発見した男の子の感動を、遊びの中で再現しているところです。

100円ショップのプッシュライトを当てると、信号を順番に光らせて遊べます。

 

こんな風に、遊びにいつでも物作りを取り入れられるようにしていると、

「駅に信号があった!」という子どもの感動が、光の性質や信号機の仕組みといった

ものに広がっていくきっかけにもなるのです。

また物作りを遊びの世界に取り入れると、「お手本をよく見て真似る」

という学びの姿勢を身につけさせる機会が増えます。

 

できるようになったことを、お友だちに教えてあげるようにも

なります。

 

そのように物に固執しなくても、さまざまな心を満たしてくれるものがあることを

知るにつれ、子どもたちはお友だちと過ごすのが楽しくなり、

上手に遊べるようになってきます。

既成の完成されたおもちゃには、たいてい子どものアイデアや想像が入る余地がありません。

 

↑の写真はブロックでケーキを作った子の作品。これから、お友だちとそれぞれ作ったケーキを持ち寄って

パーテーをする予定です。プレゼントを包み、ろうそくを立ててご機嫌の女の子。

急に思いついたように、

赤い部分をはずして、「火が危ないから、ろうそくを消しておくわ」と言いました。

自分が今、思いついたこと、知っている知識、想像したこと、願い事、自分の中に生まれた物語……

そうしたものを、遊びの世界にリアルタイムに活かしていくには、

自由に作り変え、自由に見立てることができる素材が必要ですよね。

 

工作やブロックのように自由度の高い遊びは、

子どもの頭と心の可動領域を広げます。

子どもの内面世界を目で見て触ることができるスペースを作りだします。

 

 工作やブロックが好きじゃない子も工作やブロックをしなきゃいけないの?4

工作やブロックが好きじゃない子も工作やブロックをしなきゃいけないの? 5

工作やブロックが好きじゃない子も工作やブロックをしなきゃいけないの? 5補足