フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

1月16日(火) 晴れ 

2007-01-17 02:52:25 | Weblog
  午前中から大学へ。10時半から運営主任会。昼食は、今日も長丁場になるであろう教授会のことを考えて、途中で腹が減らないよう、「たかはし」の豚肉生姜焼定食にする。ここの生姜焼きは肉が軟らかで、肉汁が旨い。たっぷり付いてくるキャベツの千切りにこの肉汁を絡めて食べるといくらでも御飯が食べられそうだ(どんぶり飯なのでお代わりはしませんけどね)。教授会の始まる時間まで、フェニックスで食後の珈琲を飲みながら、ジェイ・ルービン『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』の続きを読む。『羊をめぐる冒険』について、村上がカリフォルニア大学バークレー校で行った講演(ユナ講演)の中で、こんなことを言っている。

  「この『羊をめぐる冒険』という小説を書きはじめたとき、どのようなプログラムも僕の頭の中には出来ていませんでした。ただやみくもに最初の章を書き始めました。それから話がどう発展していくかということは、僕にはまったく予想できませんでした。何故なら、そこにはたしかに物語が存在しているように「感じられた」からです。これは棒を持って水源を探す人に似ています。僕はただそれを感じたのです。ここには水脈があると。そして堀り始めます。
     (中略)
  いちばん大事なことは確信です。自分には物語を語る能力があるのだ。自分の語っていることは必ず水脈に突き当たるのだという確信です。幾つかの要素はやがてパズルのようにきちんと組み合わされるのだという確信です。その確信がなければ、あなたはどこに行くこともできないでしょう。長編小説を書くことはボクシングをするのに似ています。一度リングに上がったら、引き返すことはできません。一度そこに上がったら、とにかく最後までやりとげるしかないのです。
  僕はそういう書き方をする作家ですし、そのように書かれた小説を愛しています。スポンテニアスであることが、僕にとっては一番重要です。
     (中略)
  『羊をめぐる冒険』を書いたことによって、僕は自分が小説家としてやっていけるという確信をもつことができるようになりました。」(96-98頁)

  『羊をめぐる冒険』は村上春樹が村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』に感銘を受け、自分も長編小説を書きたくなって書いた作品である。そのストーリーテリングはとても魅力的だったが、まさか「ただやみくもに最初の章を書き始め」たとは知らなかった。一応のプロット(それが結果的にあれこれ変更されようが)は書き始めの段階であるのだとばかり思っていた。聞いてみないと、わからないものである。
  午後2時から教授会。内職用に私が副査を担当しているT君の修論を持参する。今日はさっと目を通しただけだが、論理展開の上手な論文で、ポイントは理解した。あとは口述試験の直前にそのポイントにしぼって丁寧に読めばよい。本日の教授会はきっちり4時間で終わった。もちろん短い時間ではないが、議題の量から考えて、決して長い時間でもない。われわれは長い会議に飼い慣らされてしまったのだろう。
  7時ちょっと過ぎに帰宅。夕食は豚しゃぶ。昼食に続いて豚肉だが、調理法が全然違うから気にならない。豚肉と白菜とポン酢の組み合わせは、誰が考えたかしらないが、絶妙と思う。
  今夜が第一話のユースケ・サンタマリア主演の『今週、妻が浮気します』を観たが、期待外れだった(途中でビデオのスイッチを切る)。単発ドラマならともかく、妻の浮気(疑惑)というテーマでずっとひっぱるのは難しいのではないか。むしろその後の時間帯でやっていた釈由美子主演の『ヒミツの花園』(第二話)が、先週の第一話を観ていなかったにもかかわらず、なかなか面白かった。超売れっ子の少女漫画の作者、花園ゆり子が実は4人兄弟のペンネームであるというのが「ヒミツの花園」の意味であるが、この4人兄弟の配役(堺雅人、池田鉄平、要潤、本郷奏多)がユニーク。長男役の堺雅人は、この間まで放送していた『Dr.コトー診療所2006』で冷徹な外科医、三上を演じていた役者だが、独特の存在感のある人である。次男役の池田鉄平は、最近では『医龍』でお調子者の医局員を演じていた芸達者な役者だが、堺雅人とのからみのシーンは、2人が互いの才能を意識し合っている感じが伝わってくる。三男役の要潤はどうということはないが(失礼)、四男役の本郷奏多はデビュー当時の安藤政信に雰囲気が似ている。釈由美子の役は花園ゆり子担当の編集者。これを言うと馬鹿にされることが多いので、あまり言いたくはないのだが、私は釈由美子という女優はけっこう好きである。
  深夜、二文の卒業記念誌『D』の担当の学生から卒業生へのメッセージ(100字以内)をいただけないかというメールが届いた。今月末までにお願いしたいとあったが、忘れそうなので、その場で100字のメッセージを書いて返信した。