武田百合子『富士日記〈中〉』(中公文庫)
★★★★★
中巻は昭和41年10月から昭和44年6月まで。
泰淳の歯が少なくなって、かまなくていいのものを食べたがるという
記述が何度か出てくるうえ、やたらに体調の悪いことが多く、
徐々に死に近づいていくのが感じられてせつない。
それにしても、気が強く口も悪いとはいえ、
この百合子さんの夫に対する尽くしぶりはすごい。
車を運転したりタイヤのチェーンをつけたりとったり、
毎日のように原稿を列車便に出しに行ったり口述筆記したり。
時代の風潮もあっただろうけど、力仕事から家事、秘書の役割まで
なんでもやっているという感じだ。
主人、プリンスメロンのこと「これ、何だ? おいしいな」という。「プリンスメロン」と答えると、ふきだして「また百合子の口からでまかせだろ」と言う。本当にそうなのであるというと、もっと笑う。
(昭和四十二年七月三日の日記より一部抜粋)
なんでもない日常の風景なんだけど、素敵じゃないですか。
数ある一日のできごとの中で、これを選んで書き留めた奥さんの心。
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中巻は昭和41年10月から昭和44年6月まで。
泰淳の歯が少なくなって、かまなくていいのものを食べたがるという
記述が何度か出てくるうえ、やたらに体調の悪いことが多く、
徐々に死に近づいていくのが感じられてせつない。
それにしても、気が強く口も悪いとはいえ、
この百合子さんの夫に対する尽くしぶりはすごい。
車を運転したりタイヤのチェーンをつけたりとったり、
毎日のように原稿を列車便に出しに行ったり口述筆記したり。
時代の風潮もあっただろうけど、力仕事から家事、秘書の役割まで
なんでもやっているという感じだ。
主人、プリンスメロンのこと「これ、何だ? おいしいな」という。「プリンスメロン」と答えると、ふきだして「また百合子の口からでまかせだろ」と言う。本当にそうなのであるというと、もっと笑う。
(昭和四十二年七月三日の日記より一部抜粋)
なんでもない日常の風景なんだけど、素敵じゃないですか。
数ある一日のできごとの中で、これを選んで書き留めた奥さんの心。