金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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94:武田百合子 『富士日記<上>』

2007-07-22 23:33:19 | 07 本の感想
武田百合子『富士日記〈上〉』(中公文庫)
★★★★★

戦後の作家・武田泰淳の妻である筆者が、
富士山麓の山荘に滞在していた期間の生活を記した13年間の日記。

あちこちのエッセイで取り上げられていたので
気になって読んでみました。
目まいのする散歩』で武田泰淳が奥さんの豪傑ぶりを記していたけれど、
半分ギャグのようなサービスかと思ってました。
しかしほんとに豪傑だった。おもしろすぎる。
血の気が多くて気が強く、他人に悪態をついたりケンカを売っては
泰淳に叱られたりたしなめられたり。
喧嘩したりののしりあったりしているのだけれど、
だんなさんのことが大好きなんだなあ~。
運転中、車内でものすごい夫婦喧嘩になって暴走する話があるのだけど、
「この人と死んでやるんだ」というところに愛を感じました。
出版を前提としていない、家族だけの内輪日記なので
退屈に感じる人もいるかもしれないけれど、
日常日記に抵抗のない人にはおすすめ。

それにしても昭和四十年という年は、梅崎春生に江戸川乱歩、
谷崎潤一郎とやたらに人が死んでいる。
コメント
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