走り出した自分を突然呼び止めたのは高齢のご夫婦であった。走り出した時の急ブレーキは精神的、肉体的に気持ちの良いものではない。「うむ、ちょっと道を尋ねたいのじゃが」(といったような上から目線の口調である) 「え~と、何だ、お寺に行きたいのだが何と言ったかな・・・はて今まで覚えていたのじゃ、う~ん、ほれこの辺りにお寺があるじゃろが?」 お寺など、この辺りにはたくさんある。寺だけでは分からない。「おーそうじゃ、地図があった」といって自分の手提げカバンの中を探し始めたが、それも一向に見つかる気配はない。私の足は走り出そうとして小刻みに足踏みしている状態である。ここまで呼び止められてから1分以上は本題に入っていないのである。