なんとか、右だの左だの複雑な道順を説明した。自分も馬鹿である。「・・・という道順になります。どうですか?分かりましたか?」と、分かったかどうかを確認してしまった。案の定「そんな複雑なもの1回じゃ覚えきらん。もう1度ゆっくり教えてくれ」と・・・。私は(だから最初から複雑だといったじゃないですか、それを「分かる」とも言ったじゃないですか)という言葉を吐きそうになったが、でも嘔気を感じながら美味しくそれを飲み込んだ。今日はたくさん言葉を飲み込む日だ。「では、よろしいでしょうか、この交差点を行くとT字路がありそこを左に・・・」 今度はかなり丁寧にゆっくり話し始めた。メモでも取ってくれれば確実なのに、何となく手ぶらで「ウムウム」と高飛車に聞いている。しばらくして「あっ、そうかこちらがこの男性にメモを書いてさし上げなければいけないのかな」とまで思うようになった(笑)。私をそうまで思わせたのは、きっとこの男性が人生の達人(?)だったからなのだろう。