さて話はそれたが本論にもどそう。
その工場から患者を収容し救急車で病院に戻った。救急外来では上の先生方は待ち構えていてくれていた。今でも覚えているが彼らの顔を見たときは正直ホッとした。これから先は研修医の自分には手術などできる腕はない・・・、ということは、自分はここでお役御免なのである。処置には随分もたつきながらも、自分は当時の己の能力と技術をフルに活用し患者を生きて病院まで連れてきたのだ。正直この達成感は嬉しかった。そして「おぉ、よく上手いこと連れてきたなぁ」というお褒めの言葉も少しは期待した。部長に期待されて自分が送り出されたのである(本当は他に誰も人がいなかっただけなのであるが)。いずれにせよ不安はもうどこへやら、「選ばれし者の恍惚」のみに酔いしれようとした、その次の瞬間・・・。