吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

羹に懲りて膾を吹く その4

2017年03月21日 06時18分57秒 | 日記
「1日500人の外来患者では個別の対応はできない」という病院側のコメントも正しい。しかし患者さんの要望や訴えの中で「緊急性」「重要性」の高いものを選択して、そこの部分は逃さずきちんと対応できる能力こそ必要である。
 「個々の要望には対応しない」というマニュアルを四角四面に固持しているとこのような不幸な結果が出る。
 今回亡くなられたパーキンソン病患者さんは、歩行障害は当たり前である。介護タクシーに乗れなければ歩いて帰るしかない。でも4kmなど歩けるはずがない。この患者の「10円貸してくれ」という要望は「緊急シグナル」であったはずである。それに気が付かなかった病院職員は事務職員とは言え医療従事者として失格である。
 対応マニュアル通り患者さんのその他多くの緊急性のない要望には「個々の要望には対応しない」と突っぱねてよい。訴えの中で重要なシグナルだけを見落とさないことが重要である。
 対応マニュアル通りに行うことは組織の規約として、また業務の簡便化として重要であるが医療は接客業ではない。
 本来の目的は生命安全の管理、健康の維持である。「患者個々の要望には応じない」という対応マニュアル(院内の約束事)があったとしてもそれを逸脱してかまわないのは当然である。