吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

マスクの有用性 その4

2023年05月26日 05時41分27秒 | 日記
今回のコロナウイルスは、肺の奥にエアロゾルが入り込んで感染するため、ウイルス性肺炎を引き起こすことも稀ではありませんでした。ただし、上気道粘膜に飛沫が付着することでも容易に感染し、咽頭炎を引き起こしてます。エアロゾルから飛沫までの幅広い対策が求められ、実にやっかいな感染症なのです。

■ マスクはエアロゾル感染のリスクも減らす
 インフルエンザ対策におけるマスクの有用性を認めていても、「コロナはエアロゾル感染なんだし、マスクしたって意味ないよね」と考えている人がいます。しかし、これは2つの理由で間違っています。
 まず、コロナは飛沫によっても感染するため、感染者にマスクを着けていただくことで予防しなければなりません。微量のウイルスしか含まないエアロゾルよりも、ウイルス量の多い飛沫を吸い込む方が感染リスクは大きいため、医療現場では患者さんにマスク着用をお願いしています。当たり前の対応です。
 加えて、マスクはエアロゾル排出量も減らします。インフルエンザと季節性コロナの感染者が排出するエアロゾル中のウイルス量を測定した研究では、感染者がサージカルマスクを着用することにより、未着用に比して大幅にウイルス量が減少することが確認されています(Nat Med. 2020 May; 26(5): 676–680. )。
 つまり、感染者がマスクを着用することは、周囲への飛沫感染予防になるだけでなく、エアロゾル感染予防にも貢献しているのです。ここまでは、紛れもない科学的事実です。