自分は一瞬このご婦人が何をしているのかわからなかった。次の瞬間「がんばれぇ~、頑張れ、頑張れぇ~」と決してつぶやき声ではない、明らかに話しかけるくらいの勢いと声量で頭上の木々の枝に向かって声をかけ始めたのである。それは鶯が鳴く度に数度にわたって行われた。彼女は屈託のない笑顔である。この傍若無人な行為で、とたんに興が醒めた。もちろんここで誰が何をしようと勝手である。この半径10m以内に、通りすがりの局外者が入ってきたなら、この「空間」で何が行われるかに気が付かず大きな声で話しながら通過していくかもしれない。これは「無粋」とはいえないだろう。ところがこのご婦人は最初からこの空間に在籍しており、しかも周囲の7~8人と同様な意識でとても安穏とした時間を共有していたはずである。この空間の在籍者であれば、黙って鶯に耳を傾けていれば全員が同様にいい雰囲気を体験できることはわかっていたはずであり、所謂「黙契」であったともいえる。<o:p></o:p>
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