7月21日に解散して、8月30日投票で、40日間という長丁場の選挙戦ですから、まだ折り返しで、公示日も迎えていません。この長丁場がどのように作用するのか、誰かを利することになるのか、まだ誰にも分かりませんが、解散直後の熱気がややしぼみかけている感があります。
バランス感覚か権力か
解散前後は民主党政権確実というような雰囲気でしたが、長丁場で中だるんで来ていることに加え、マニュフェストが出揃ってからは、マスコミは早くも次期政権に対するように民主党の財源問題、外交・安全保障問題のぶれなどをチクチクと指摘し始めました。知事会や経済団体等各種組織も各党のマニュフェストにそれぞれの評価を下しました。
これはよく言えば、公正公平な報道とか、バランス感覚ということになるのでしょうが、マスコミも権力批判と言いながら、その実その裏返しで、自分たちの言説によって国民を左右したいという権力への欲求を持っているように思えてなりません。そうした思いが、取材現場などでの上から目線や、断定的な物言いにつながっているのではないかと思います(次元は違うとマスコミ関係者は言うかもしれませんが、千葉の女性殺害・娘連れ去り事件、押尾学薬物事件、酒井法子覚せい剤所持事件などの狂騒を見ていると、大衆を支配する欲求と結局のところ視聴率という目に見えない大衆に支配されている構図の矛盾を感じてしまいます。現場での関係者への物言いは社会全体を背負ったかのように大上段から振りかぶっていますが、その人たちが人気料理店の行列待ちのようにぞろっと居並ぶ姿は滑稽ですらあります)。
何が争点だったのか
誰のコメントか忘れましたが、東京都議会議員選挙の時、「〇〇〇〇(忘れてしまうほど、普段私たちとは縁のない事柄)という都議会本来の選挙の争点がぼやけていたと言った識者がいたが、考え違いも甚だしい。都民は、誰も知らないような都議会の争点ではなく、国政に対しての答えを投票で出したのだ」という主旨の発言には大いに共感しました。
今回の衆議院選挙でも同じことが言えると思います。もちろん、財源の問題や外交・安全保障がどうでもいいということではありません。しかし、そもそもの争点というか、国民の問題意識は、麻生さん、自民党じゃダメ、ということだったと思います。自民党は半世紀にわたって政権を担ってきたので、それなりにノウハウはあり、そこそこ外れのないことは出来るでしょうが、そのやり方ではいよいよ本当にダメだと思い始めたのです。自民党の支持基盤であった農家、医師会などですらです。もちろん、自己改革出来れば、自民党への支持がここまで落ち込むことはなかったでしょう。何て言ったって、参院で負けても、衆院で議席を減らしても、ハプニングで下野した時以外、半世紀政権を失ったことがないくらい信任(放任?)されてきたのですから。しかし、他人(小泉元首相)のふんどしで3人も首相をたらいまわす、それがダメダメでも対抗馬すらいない、批判勢力も最後は腰砕けで茶番の握手という、あまりに内向きな姿を見て、呆れた果てたことがそもそもの発端でした。
時間の魔法
しかし、時間というのは恐ろしいものです。いい意味で、時がすべてを癒すとか、時間が解決するとか言いますが、時間が経つほど記憶が薄れていくのは必定です。そういう意味では、解散前後には民主党に思いっきり針が振れていたので、時間の魔法は、民主党に不利に働く公算が大です。
あとは、これを押しとどめるエネルギーがどれだけかで結果は大きく変わってくるでしょうね。また、選挙戦で誰かが調子に乗って変な発言をしないかどうかでしょう。直接は見ていませんが、一昨日の党首討論も、国会での党首討論に比べ鳩山党首は切れ味、全体感を欠き、麻生首相の方が堅実な主張をしたようです。鳩山さん自身が、最近のマスコミ等の主張に影響されてしまっているのでしょうね。しかし、まだ折り返しの段階で守りに入ったら、ちょっと勢いが心配になってきます。民意は実はマスコミの論調の中にはありません。それを肌で感じた人だけが流れを作り出せるのだと思います。ここのところ、自民党が政権政党の責任を強調し、民主党の財源問題、安全保障問題を責めて攻勢に立っていますが、これはオセロゲームのように問題をすり替えられているわけで、民主党が同じゲームに参加すべきでありません。国民は自民党の政権投げ出し、失言・お友達内閣の失態などにもかかわらずそれに代わる人がいないなどの「無責任さ」に苛立っているのであり、「責任」を強調させてはいけませんし、そもそも責任政党が後だしジャンケンで声高に勝ちを主張すること自体がおかしな話です。また、財源問題はじめ民主党の政策の「実現可能性」を責められても、一度は政権を担わないことには証明できないわけですから、そんなことを批判させてはいけないわけです。
民主党も東京都議会選挙の大勝で勝利モードに入り、妙な守りの姿勢に入り、また首脳陣の頭合わせが出来ていなかったことから、ここのところややあたふたして自民党の点を稼がせています。ここまでは、時間が自民党に有利に作用している印象です。しかし、まだまだ折り返しです。このままでいくかどうかはまったく予断を許しません。
個人的には、白黒をはっきり付けてほしいものです。民主党が微妙な勝ち方で過半数を取れないとか、自民党が公明党とその他保守系の小政党をかき集めて政権維持なんていう中途半端はやめてほしいものです。ぜひとも白黒つけ、その結果がダメなら、政権を変えればいいのです。それが国民主権です。どの政党が政権をとってもいいのです。決めるのは、国民です。