熊本市近郊の建築現場に、設計前の調査に入った。いろいろ調べていると、近所の人が二三人物珍しげに集まってきた。「何のでくっとですか(何が出来るのですか)」などと話し掛けてくる。それなりの返事をすると、納得したかのように世間話に話題が変わったようだ。「どうか、ああたはようらくさげて」そんな会話が聞こえて、「あッ」と思って振り返ると、老女が隣の女性のスカートにまつわりついている、枯れた雑草のようなものを払いのけてやっている。初めて聞いた言葉だった。「なんですか、貴女は瓔珞下げて」とでも言う事になるだろう。
作家木崎さとこ氏が、ある小文に書かれていた言葉で、気になってメモしていたものだ。「ああ、熊本でも使っている人がいるんだ」と、感動してしまった。
さて何処に書いてあったかを思い出すのに一苦労をする。四・五冊ひっくり返していたらベスト・エッセイ集(99年版)のなかに「瓔珞」という題の文章を発見した。氏の文章によると、「スカートの裾などがほつれて、糸などが垂れているような時」に使うと書かれている。一寸状況が違うが同様の事だろう。瓔珞とは古代人の冠に下がっている飾りのことだが、これがゆらゆら揺れる状態に比喩している。
「あーらありがと」老女たちの明るい笑い声が遠のいていった。
作家木崎さとこ氏が、ある小文に書かれていた言葉で、気になってメモしていたものだ。「ああ、熊本でも使っている人がいるんだ」と、感動してしまった。
さて何処に書いてあったかを思い出すのに一苦労をする。四・五冊ひっくり返していたらベスト・エッセイ集(99年版)のなかに「瓔珞」という題の文章を発見した。氏の文章によると、「スカートの裾などがほつれて、糸などが垂れているような時」に使うと書かれている。一寸状況が違うが同様の事だろう。瓔珞とは古代人の冠に下がっている飾りのことだが、これがゆらゆら揺れる状態に比喩している。
「あーらありがと」老女たちの明るい笑い声が遠のいていった。