Sightsong

自縄自縛日記

中国で粘膜をやられた、CDM、『悪霊島』

2007-09-09 22:51:49 | 中国・台湾

中国の空気は、山西省に入ると極端に悪くなった。石炭が採れるため、製鉄工場や石炭火力発電所が多く、大気汚染の一因となっている。また乾燥していることも、それに拍車をかけている。実際に、水不足は恒常的であり、市民は風呂にもあまり頻繁に入れないらしい。郊外もそうだったが、省都の太原(タイユワン)でも、ちょっと散歩して戻ると靴は真白になっていた。

それで、鼻、眼、喉の順で粘膜をやられた。もう体調は最悪で風邪っぽい。明日病院に行こう。


山西省の道 昼間であり天気が悪いわけでもないのに向こうが煙っている

==========

WWFジャパンのお誘いで、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)主催のセミナー「クリーン開発メカニズム(CDM)質の向上のための課題」(2007/9/25)で話をすることになった。こういった講演自体は年に何回か引き受けているが、ほとんどは企業対象の「セミナー会社」主催のものか、特定の産業界主催のものだったりするので、環境NGOの主催は珍しい。

といっても、対象はやはり途上国でCDM事業(温室効果ガスを削減するための事業)を行うことに関与する企業の方だと思うが、排出権の良し悪しに興味を持っている方も参加して面白いものだと思う。 →プログラム

==========

横溝正史『悪霊島』を気分転換に読んだが、暗いしそれはないだろうという話なので、気分転換にはならなかった。これは初めて読んだが、中高生のころ横溝正史の諸作品は好きだったのだ。

映画も、運良く放映したのを観た。市川崑ではなく、篠田正浩が監督を務めている。そして妻の岩下志麻を最重要人物として登場させている。金田一耕助に鹿賀丈史。昔、映画のTVコマーシャルで「鵺の啼く夜は恐ろしい・・・ギャー」といっていたことを覚えている。

改めて感じたこと。横溝正史による、地方の封建的な家やどろどろと繋がりあった血縁を描くには、ゆっくり頭のなかで登場人物の関係性を整理しきれない、しかも2時間程度の映画では難しいのだろうということだ。逆に、いつもの市川崑のモダンでセンス溢れる作品は凄いのだということも。


北京的芸術覗見(3)

2007-09-09 00:59:02 | 中国・台湾

北京798芸術区の続き 「罐子書屋」という書店の入口付近では、孫紅賓(サン・ホンビン)の写真展「夜・山水」を展示していた。あえてブレボケを多用した方法によって、ゆらぎや瞬きの顕在化が試みられていた。

 

オーソドックスな彫刻もあった。「任哲彫塑工作室」では、任哲(レン・ツェ)による昔日の武人の彫刻が並んでいた。格好いいもののそれだけ、若いオタクの作品にしか見えなかった。パッと観に格好いい作品といえば、「鯉設計工作室」に展示された抽象画もあった。

親しみを覚えた、可愛い作品が、「海峰芸術空間」に展示された、老孟(ラオ・メン)作品展。中に入ると若い女性が自分かなと思えるような女の子の絵を描いていた。あの女性が老孟なのだろうか。ちょっとブームになってもいい感じだ。

写真ギャラリーは芸術区には少ないというが、「798 Photo Gallery」と同じくらい面白かったのが、「Paris-Beijing Photo Gallery」における「群展」。4人のグループ展であり、特に亜牛(アニウ)ルー・シャンニによる作品が印象深かった。

亜牛は「Times of Fantasy」シリーズの写真で、暗く澱んだ人々の姿を示している。展示では、人それぞれの中には窺い知れない闇があるとの考えが書かれていた。コミュニケーションに対する絶望が巧みに作品に昇華されているようだ。またルー・シャンニは、中国の苗族の男達を極めて美しい銀塩プリントに仕上げている。


亜牛「Times of Fantasy」、ルー・シャンニ「Black Miaos」

映像作品もあった。張連喜(ツァン・リャンシ)による「東郭先生的”困惑”」(Long March Independent Space)では、小さい部屋のなかで、土の上を這いずり回る様々な小さい虫の映像を延々と流していた。東郭先生とは、中国の故事に出てくる、狼を助けながらも恩を仇で返されそうになる書生のことのようだが、この虫はいかに。

大掛かりなプロジェクトとしては、中国美術学院がチベットを訪れ、そこで住民から得た「絵に対する考え」のアンケート結果用紙を使ったインスタレーションや地図など、さまざまなものを寄せ集めた展示「Why Go to Tibet?」があった(Long March Space)。面白いが所詮は企画もの。


絵に対する考えの回答用紙と、それを使った寺院的インスタレーションなど

北京城にもあった「Red Gate Gallery」では、蒋巍涛(ジャン・ウェイタオ)のテキスタイルのようなピカピカの油絵の展示をやっていた。あまり好きなものではなかった。

ここまでで時間切れ、タクシーの乗車拒否に遭いつつも4台目で何とかつかまえ、北京空港に戻った。数時間ではとてもまわり切れない。また、カフェがいくつもあり、画廊は大抵無料なので、一日中居ても快適に刺激的な時間が過ごせるだろうと思った。北京市内からでもタクシーでアクセスできるので、次にチャンスがあればまた訪れたいと考えている。