Sightsong

自縄自縛日記

北京的芸術覗見(2)

2007-09-08 19:49:40 | 中国・台湾

太原から北京への中国東方航空の便が、前日に突然キャンセルになった。実は往路もそうだった。北京空港がパンク寸前ということが理由だそうだ。それにしても無計画・不親切、きっとオリンピックでもいろいろ騒動があるに違いない。

何とか早朝便で北京入りしたので、成田行きの出発まで時間ができた。それで、空港と北京中心部との中間あたりにある、「北京798芸術区」に行ってきた。もともと東独(当時)の支援で造られた798番目の国営工場跡だそうで、今では非常に多くの画廊がある。

9時半ころ着いたが、早く開く画廊でも10時からだ。カフェは早めに開いているので、芸術書の専門店を併設した「Time Zone 8」でエスプレッソ(18人民元)を飲んで休んだ。

まず「中方角画廊」で、馮効草(フェン・ジンカオ)の作品群を観る。染みのなかに潜む着物のような模様のなかに、さらに何かがある。模様だったり、昔日の人々だったり。アイデアは面白いものの、それ以上の魅力はあまり感じられなかった。

芸術区で最も大きい「798 Space」では、徐勇(シュー・ヨン)が、舒陽(シュ・ヤン)が、解決方案」と題した写真と文章の展示を行っていた。ここで主役を張る女性、ユウ・ナは実際に身体を売っていたとのことで、芸術作品への登場というアイデンティティ転換に伴い、生計も身体の代わりに作品を売ることで立てていく、これが「解決方案」だそうだ。真偽はよくわからないしパフォーマンスとして観るべきなのだろうが、面白かった。中国語の文章が読めればもっとよかった。

「798 Space」斜向かいの「798 Photo Gallery」も大きな空間を利用した場所だ。

1階のメインスペースでは、梁衛洲(リョウ・ウェイツォウ)の写真群「Scenery」を展示していた。象牙色を基調として静物をとりまく空間(室内)を多く取った写真だ。瓶などを撮った作品はモランディのような静謐さを持っているが、静物は穴だったり電球だったりもして、生活感も溢れる面白さ。写真はすべてデジタルプリントだった。1962年上海生まれらしい。

2階のロフトのようなスペースでは、ロバート・ファン・デア・ヒルスト(Robert van der Hilst)による「Chinese Interior」という作品群が数点。この写真家は、福岡、キューバ、上海、メキシコなどでも撮影している(→リンク)。闇の中の人物や家具は魅力的だが、クリアに過ぎて、オリエンタリズム的な視点を感じさせるのは穿ちすぎか。

最も「ああ良い」と思ったのが、胡同(フートン)の壁をパノラマ的な横長写真に収めた、王子(ワン・ツィー)のシリーズだ。写真家の海原修平は上海をおさめるために視界の広さが必要としてパノラマカメラを使っているが、それとは別の視点。失われつつある北京の横丁をこのような形にすることは素晴らしいと思った。