Sightsong

自縄自縛日記

ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見を出す前に(3) 「方法書」の問題点

2007-09-19 23:39:32 | 沖縄
今回の環境アセスの対象事業には「飛行場」が含まれている(もうひとつは「埋立て、干拓」)ので、「方法書」には、航空機の種類を具体的に記すことが定められている

環境影響評価法(以下、アセス法)では、「方法書」の作成にあたって、事業の種類ごとに主務省令で定める項目を記載しなければならない。飛行場については、『飛行場及びその施設の設置又は変更の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令』、あるいは、『防衛省が行う飛行場及びその施設の設置又は変更の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令』が、それに該当する。

以下、アセス法抜粋
 第二節 方法書の作成等
(方法書の作成)
第五条  事業者は、対象事業に係る環境影響評価を行う方法(調査、予測及び評価に係るものに限る。)について、第二条第二項第一号イからワまでに掲げる事業の種類ごとに主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)を作成しなければならない。
一  事業者の氏名及び住所(法人にあってはその名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
二  対象事業の目的及び内容
三  対象事業が実施されるべき区域(以下「対象事業実施区域」という。)及びその周囲の概況
四  対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法(当該手法が決定されていない場合にあっては、対象事業に係る環境影響評価の項目)


以下、省令抜粋(『防衛省が行う・・・』)
(方法書の作成)
第二条  令別表第一の四の項のイ、ロ又はハの第二欄若しくは第三欄に掲げる要件に該当する防衛省が行う対象事業(以下「対象飛行場設置等事業」という。)の実施を担当する防衛施設局長又は防衛施設支局長(以下「防衛施設局長等」という。)は、対象飛行場設置等事業に係る方法書に法第五条第一項第二号 に規定する対象事業の内容を記載するに当たっては、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  対象飛行場設置等事業の種類(設置の事業又は変更の事業の別及び変更の事業にあっては滑走路の新設を伴う事業又は滑走路の延長を伴う事業の別。第五条第一項第一号イにおいて同じ。)
二  対象飛行場設置等事業が実施されるべき区域(以下「対象飛行場設置等事業実施区域」という。)の位置
三  対象飛行場設置等事業の規模(設置の事業又は滑走路の新設を伴う変更の事業にあっては滑走路の長さ、滑走路の延長を伴う変更の事業にあっては延長前及び延長後の滑走路の長さ。第五条第一項第一号ハにおいて同じ。)
四  対象飛行場設置等事業に係る飛行場の使用を予定する航空機の種類
五  前各号に掲げるもののほか、対象飛行場設置等事業の内容に関する事項(既に決定されている内容に係るものに限る。)であって、その変更により環境影響が変化することとなるもの


一方、今回の「方法書」には、上の第四号に関しては、次のようなごく簡単な記載のみがなされている。

2.2.4 対象事業に係る飛行場の使用を予定する航空機の種類
米軍回転翼機及び短距離で離発着できる航空機


これが、省令で求められている「航空機の種類」を満たすかといえば、おそらく不十分だろう。この背景には、米軍が開発・配備をすすめているティルトローター機(垂直・短距離での離着陸のため、プロペラに似た回転翼・ローターを、機体に対して傾ける航空機)であるV-22(通称オスプレイ)を、辺野古にも配備する方向であることを明らかにしたくない意向があるようだ。というのは、V-22は試作・初期段階において事故を多発したからである。仮に実戦配備段階では事故が起きないような対策がなされているとしても、確率はゼロではありえない。そして、住民がおり、多様な生態系を誇る森に、万が一、これが墜落したらどうなるだろうか

さらには、滑走路の幅や、護岸工事の図示がない。「方法書」では、護岸について、構造の方式を簡単に示し、「護岸構造の具体的な内容については、今後の詳細検討の結果等を踏まえ最終的に決定します。」と、未決定事項を記載している。

次に環境影響評価について見る。

本来、本格的な「事前調査」は「方法書」確定の前にあってはならないが、政府は「事前調査」を「現況調査」の一部として組み込むことを検討しているようだ。(アセス法破壊も甚だしい。)

仮にその場合、「方法書」に記載してある調査方法に、「事前調査」でなされている方法が組み込まれているはずだ。

表1 ジュゴンについての調査手法

(「方法書」により作成)

こう見ると、「来遊状況」のみが、強行された「事前調査」によってカバーされていることがわかりそうだ。「生育状況」について、沖縄本島全域の航空調査などは形式上容易であろうし、「海藻藻場の利用状況」について、ずいぶんと広いエリア(天仁屋崎から金武湾を含み伊計島までの沿岸海域)の調査を「マンタ法」であれ「潜水調査」であれ実施を阻止することは、きっとこれまでよりも困難であろう。

となれば、「来遊状況」に関しても「方法書」で確定する調査方法に則って順番どおり調査すべきところを、「方法書」を示さず無理やり調査していることについて、認められないと主張すべきだろう。

留意すべきかと思われる点として、「既存調査事例などを参考にして、今後開発される調査手法も含めて現地調査を行います。」と記載していることが挙げられる。「方法書」において、将来の手法を候補に入れるということは不適切ではないだろうか。

【参考資料】
○『環境影響評価法(平成九年六月十三日法律第八十一号)』(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO081.html)
○『飛行場及びその施設の設置又は変更の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(平成十年六月十二日運輸省令第三十六号)』(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10F03901000036.html)
○『防衛省が行う飛行場及びその施設の設置又は変更の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(平成十年六月十二日総理府令第三十八号)』(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10F03101000038.html)
○『V-22(航空機)』(『ウィキペディア』、http://ja.wikipedia.org/wiki/V-22_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F))
○『普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書』(那覇防衛施設局(旧)、2007年8月)
○『辺野古における違法「環境現況調査」の即時中止と、環境影響調査「方法書」の即時撤回を求める声明』(沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団・東恩納琢磨、2007/8/14)
○『アセス方法書学習会 目的も規模も違法』(真喜志好一、『沖縄タイムス』2007/8/27)
○『29日に辺野古アセス学習会 問題多い方法書縦覧』(沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団・土田武信、『琉球新報』2007/8/27)


ジュゴンの棲む辺野古に基地がつくられる 環境アセスへの意見を出す前に(2) 「事前調査」の問題点

2007-09-19 01:18:36 | 沖縄
事前調査」には、方法上の不適切さが指摘されている。勿論、アセス法の正当な順序に沿って「方法書」を作成し、縦覧のうえ多くの方からの意見を取り入れれば、回避できたはず、との謗りを免れないだろう。

ここでは、「方法書」ではなく既に強引に行われている「事前調査」について、専門家や生態系の実態に詳しい方による指摘を整理する。

「方法書」への意見には直接関係しないが、そもそも「方法書」があるべき調査であることを鑑みれば、意見に含めてもよいと思う。

表1 「事前調査」の方法について指摘されている問題点

(*1) 『命湧くジュゴンの海を守りたい』(浦島悦子、『週刊金曜日』2007/9/7所収)
(*2) 『「現況調査(事前調査)」関連資料』(沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団・編集、海上ヘリ基地反対・平和と名護市政民主化を求める協議会・発行、2007年6月)
(*3) 『リーフチェッカー’さめ’の日記 あきれる○○の実態』(ブログhttp://shark.ti-da.net/e1628541.html、2007/6/28)
(*4) 『リーフチェッカー’さめ’の日記 現在の状況・・・さまざまな観点から【追記あり】』(ブログhttp://shark.ti-da.net/e1600167.html、2007/6/6)


【追記】 一坪反戦地主会関東ブロックのYさんからの情報。辺野古実行委員会(35団体で構成)が、山内徳信参議院議員とともに、環境省・防衛省への申入れをした。6月14日に実行委が申入れで要請した「サンゴ損傷をめぐる写真撮影などの調査」は、防衛省は「調査での写真はまだない」「事前調査が終わるまでに調査」との回答だったとのことである。