Sightsong

自縄自縛日記

石川真生『Laugh it off !』、山本英夫『沖縄・辺野古”この海と生きる”』

2009-02-21 23:40:05 | 沖縄

広尾にできたばかりのギャラリー「TOKIO OUT of PLACE」で、石川真生の写真展『Laugh it off !』をやっている。石川真生というと、高文研から出ている沖縄米軍の写真などしか知らなかったのだが、今回訪れてみて、相当驚かされた。

まずギャラリーに入って右側から正面まで、写真家本人の<セルフポートレート>で占められている。最近、腎臓癌、直腸癌を患ってから自身の肉体にレンズを向けはじめたということである。ヌードのお腹には手術跡や人工肛門があり、アップで撮っていたりもする。ケータイか何か解像度の悪いデジカメで撮られたらしきその写真群は、ある一線を超えている。ところで、手にはニコンFM2(またはニューFM2)を持っている。

ギャラリーの左壁には、80年代のモノクロ写真として、<Life in Philly>(1986年)、それから<Filipina>(1988年)が展示してある。エッジがやや黄ばんだ当時のプリントを、たくさん、クリアファイルに入れて壁にピン止めしている。これがまた迫力がある。

<Life in Philly>は、沖縄からフィラデルフィアに帰還した米兵を訪ねて撮られたものだ。家の中や街路など日常生活だが、そこへの入り込み方が尋常でない。寝室で交わる男女や裸で弛緩して寝っころがる女たちまで捉えている。おいおい!!

<Filipina>は、沖縄の金武町に出稼ぎに来ているフィリピン女性たち、そして里帰りしている姿を撮っている。これもまた、記録ではなく、一緒になっている石川真生の<かたち>なのだ。

キャンプ・ハンセン周囲の歓楽街を石川真生と比嘉豊光が撮った写真集が、閲覧用にあった。そこには、撮るためなのか、一体化するためなのか、そこで働き蠢く石川真生の姿がある。巻末にアラーキーが寄せた文章があった。記憶では、次のように書かれていた。「ビックリした。私は、男として、写真家として、石川真生に嫉妬した。脱腸したイヤ脱帽した。

いやいや、予想外に圧倒された。トークショーも見に来ればよかった(大盛況だったらしい)。

山本英夫『沖縄・辺野古”この海と生きる”』は、東中野のギャラリーPAOで開かれている(2/22まで)。辺野古での新基地建設強行を拒否する人たち、そして本来の辺野古近辺の素晴らしい自然が記録されている。

私もささやかながら賛同したのだが、他に、太田昌国さんや花輪伸一さんの名前もあった。

以前にスライドショーで山本さんの写真は見ていたから(>> 記事「新基地建設に襲われる海とシマ。人々は闘う」)、素晴らしい写真が多いことはわかっていたが、やはり良かった。辺野古近辺の自然環境では、無数のミナミコメツキガニが蠢く河口、白いクロサギ(本当)など。そして、理不尽な暴力に抗いつづける内外の方々の姿に迫真性がある。

ペンタックスLXを使っていることは以前に聞いていたから、レンズについても今回確認した。望遠は、(1000mmなどは高いし反射レンズは解像度やボケなどに癖があるので)通常の500mmまでだ、ということだった。

山本さんの写真が掲載された『パトローネ』(2009/1/1)には、このようにある。「私は、可能な限り現地に行くべしと考える。それはたんなる支援のためではない。美ら海を体験し、そこで頑張っている人たちの日々の努力を知り悩みや焦りについても触れ、私たち自身がそれぞれ地元で活動するエネルギーと手法を創造するためだ。また、私の任務は、記録と伝達であり、左記の通り写真展を行う。