『東京新聞』(2009/2/12)の報道によると、市川塩浜の危険な護岸の整備に向けて、千葉県が予算の2/3を出すと市川市に回答したようである。
もともとこの護岸は、堂本知事が三番瀬の埋立を白紙撤回する前に、埋立を前提に仮の護岸として整備された程度のものだった。三番瀬埋立がとりあえずは消え、しかし護岸は宙ぶらりん。最寄の市川塩浜駅から護岸までは工場地帯であり、ひとがあまり近づくようなところではないためゴミが散乱し物騒。護岸に辿りついても、垂直護岸なので、干潟があることなどまったく意識できないようなつくり。最近では地震で崩落する恐れがあるということで立ち入り禁止、しかし釣り人は入り込んでいるような状況である。
昨年(2008年)末頃にNHKで放送されたところによると、毎年実施されてきた「クリーンアップ作戦」(市民によるゴミ拾い)は、このあたりが再び宅地になるということで、今年からは実施されないようだ。
すなわち、護岸そのものが如何に整備されるか(干潟の環境配慮、市民の親水性)、それからここへのアクセス(仮に宅地になったとして、市民が安全に訪れることのできる生活空間となりうるか)、という2点の問題がなお残っていることになる。
主に前者については、粗いプランが市川市により提示されている(2008/11/18資料、>> リンク)。もっとも、これだけでは全然わからないが、さらに葦、アマモなどの再生を目指すなら、方向性は間違っていないように思える(船橋海浜公園、葛西臨海公園、お台場などの人工干潟より良いものにしないと)。問題は遊歩道を生活空間と接続できるかどうか、だろうか。また、総予算が示された資料を見つけることはできなかった。
市川市によるイメージ
三番瀬埋立を公約どおり白紙撤回させた堂本知事だが、その後8年間、次のプランが進捗しなかったことへの批判は強い。このことが、次の知事がやりやすい土壌になっているのだとすれば逆成果ともなってしまう。塩浜護岸の件は、知事の最後の置き土産なのだろうか?
2009/3/29投票の千葉県知事選には、5人の候補者が立候補する見込みである(敬称略)。
●吉田平 三セクの「いすみ鉄道」元社長。千葉の生まれ育ち。堂本知事の後継として立候補予定。民主党が推薦予定。三番瀬等については、「これからは環境を政策のベースに持たないといけない」との発言(2009/2/8、毎日新聞地方版)。
●森田健作 俳優、元衆議院議員。前回知事選で堂本知事(再選)に惜敗。三番瀬については「白紙に戻して原点から見直したい」と発言(2009/1/27、東京新聞地方版)。なお、羽田・成田間のリニア構想については批判があり(>> 川本県議会議員のブログ)、その用地はどこを想定しているのか気になるところだ。
●白石真澄 関西大学教授。三番瀬については、民主党千葉県連と結んだ政策協定のなかで、「三番瀬保全条例の制定とラムサール条約登録」を謳っている(2008/12/15、産経新聞地方版)。しかしその後、民主党千葉県連は白石氏の推薦を取り消している。マニフェスト(第2版)(>> リンク)によると、「ラムサール条約への登録を目指しつつ、環境モデル先進地域としての三番瀬の賑わいづくりを進める」とあるが、一方では、交通インフラの拡張も謳っている。また三番瀬を潰す「第二湾岸」が浮上してくるおそれはないか。
●八田英之 千葉勤労者福祉会理事長。共産党推薦。八田氏を擁立した、千葉県の労働組合による「明るい民主県政をつくる会」では、三番瀬に関して「「三番瀬再生・保全条例」を制定し、ラムサール条約に登録。第二湾岸道の計画は中止。」と謳っている(>> 『機関紙ちば労連』2009/1/31)
●西尾憲一 千葉県議(自民党)。三番瀬については、2007年12月の県議会では、「猫実川河口域は、まさにヘドロ状態でございます。(中略)そして地元の漁師の方々も、その河口域は魚もアサリもとれず、海の中に入ると腰までヘドロに埋まって身動きがとれず危険であるから、ぜひ埋め立ててほしいと言われています。」と発言している。なおこれに関しては、実態に即していないものとの批判もある(>> 川本県議会議員のブログ)。西尾県議は、埋め立てた後、「県民の森と渚公園」を作りたいと発言している(>> 稲毛新聞2008/12/5)。
全員が必ずしも三番瀬についての姿勢を明確にしているわけではないが、変に開発したがること、変に埋め立てたがることには注意しなければならないように思える。
●三番瀬
○三番瀬(5) 『海辺再生』
○猫実川河口
○三番瀬(4) 子どもと塩づくり
○三番瀬(3) 何だか不公平なブックレット
○三番瀬(2) 観察会
○三番瀬(1) 観察会
○『青べか物語』は面白い
●東京湾の他の干潟
○盤洲干潟 (千葉県木更津市)
○盤洲干潟の写真集 平野耕作『キサラヅ―共生限界:1998-2002』
○江戸川放水路の泥干潟 (千葉県市川市)
○新浜湖干潟(行徳・野鳥保護区)
●泡瀬干潟(沖縄)
○泡瀬干潟の埋立に関する報道
○泡瀬干潟の埋め立てを止めさせるための署名
○泡瀬干潟における犯罪的な蛮行は続く 小屋敷琢己『<干潟の思想>という可能性』を読む
○またここでも公然の暴力が・・・泡瀬干潟が土で埋められる
○救え沖縄・泡瀬干潟とサンゴ礁の海 小橋川共男写真展