台風が来るというので、早々に帰宅してみると、夏休み最後の日。息子はいつものようになかなか寝ない。ひとしきり本を読んでいると、皆寝てしまったので、侯孝賢『冬冬の夏休み』(1984年)を観る。
侯孝賢独特の静かな長回し、さまよえる視線。無為だからこそ忘れられない時間の流れを感じさせる、アンビエントな音空間。
たぶんヴィデオで観たのは15年くらい前だ。そのときに比べて、感じてしまう部分が明らかに多い。田畑、川遊び、亀、遊び友だち、雨のあとのひんやりした湿気、親戚の家での高揚と怖さ、畳の昼寝、町のちょっと変な人。全部、自分の子ども時代のことだ。台湾も日本も変わらない風景である。もしここに、寺でのラジオ体操が出てきたとしたら、もう泣いてしまうに違いない。
都会の子どもはかわいそうだ。
●参照 侯孝賢『レッド・バルーン』