テレビドラマ『その街のこども』や『離婚同居』を観ていたら、佐藤江梨子って良いよなと思い、主演作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(吉田大八、2007年)を観た。いや実はその前に、本谷有希子による原作(講談社文庫、原著2005年)を読んでおいた。
いや面白いんだけど、何か突破力が感じられるわけでもないし、妹のたくらみという仕掛けも読めてしまう。いかにも演劇出身という感じ。高橋源一郎は解説で褒めちぎっているが、そんなもの真に受けても仕方がない。姉が妹に熱湯を呑ませるという虐めは、筒井康隆『乗越駅の刑罰』と同じネタであり、しかも、筒井作ほど苛烈でもシュールでもない。
サトエリ見たさの映画版では、そのシーンすら骨抜きになっている。これではただの不愉快な虐めのシーンに過ぎない。それでも呪いの鬼と化すラストシーンを楽しみにしていたが、それも勇気がなかったのか、救いのある話にすり替わっている。駄目。