Sightsong

自縄自縛日記

本谷有希子と吉田大八の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

2010-06-13 23:29:12 | 思想・文学

テレビドラマ『その街のこども』や『離婚同居』を観ていたら、佐藤江梨子って良いよなと思い、主演作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』吉田大八、2007年)を観た。いや実はその前に、本谷有希子による原作(講談社文庫、原著2005年)を読んでおいた。

いや面白いんだけど、何か突破力が感じられるわけでもないし、妹のたくらみという仕掛けも読めてしまう。いかにも演劇出身という感じ。高橋源一郎は解説で褒めちぎっているが、そんなもの真に受けても仕方がない。姉が妹に熱湯を呑ませるという虐めは、筒井康隆『乗越駅の刑罰』と同じネタであり、しかも、筒井作ほど苛烈でもシュールでもない。

サトエリ見たさの映画版では、そのシーンすら骨抜きになっている。これではただの不愉快な虐めのシーンに過ぎない。それでも呪いの鬼と化すラストシーンを楽しみにしていたが、それも勇気がなかったのか、救いのある話にすり替わっている。駄目。


新良幸人の声は太丸

2010-06-13 17:00:35 | 沖縄

珍しく、NHK沖縄製作の番組『故郷想う歌の旅 ~新良幸人・下地勇 古謡を受け継ぐ~』が全国放送された(>> リンク)。

新良幸人下地勇が連れだって、自分たちの故郷(石垣島、宮古島)に伝わる古謡を教わりに帰郷する。いまではひとりしか歌うことができない唄である。ずいぶん難しいようで、新良幸人は「コード進行上、こう来るだろうという流れにならない」と苦笑いしている。練習のあと、彼らはステージ上で古謡を唄う。新良幸人の声は太く丸く、すこし普通でない感覚があって、とても良いことを発見(これまであまり聴いていなかった)。何かアルバムも探して聴いてみよう、山下洋輔が「エルヴィン・ジョーンズのようだ」と驚いた太鼓のサンデーと一緒に演奏しているものを。

ところで宮古古謡の歌詞で、ありえない半濁点(マル)が付いている文字があるが、あれは何だろう。


新良幸人、2006年 Leica M3、Summicron 50mmF2.0、Tri-X(+2)(たぶん)、Gekko 2号(たぶん)