今度サウジアラビアに出かけることもあって、保坂修司『サウジアラビア―変わりゆく石油王国―』(岩波新書、2005年)を読む。
石油の莫大な収入によって成り立つレンティア国家。本書は、それによる軋みと危さを指摘する。税なるものは基本的に存在せず、サウジ人に限っては分配による生活が成立、それが既得権益化している。この国のイメージと合致しない農業も、補助金漬けであったという。だからと言って安泰ではなく、財政の基盤は揺らいでいる。
本書が出版されてからしばらくは、原油価格が冗談のように高騰を続けた。リーマン・ショックにより一度は落ちたものの、これが、経済構造の危うさが顕在化することを先延ばししたのだろうか。年始のテレビ番組でも、サウジ人にとっては稼がなくても中流以上の生活が可能であるとアピールしていた。
面白い分析がある。中東において、国王が君主や閣僚になれる王国は革命を許さず(サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、UAE、ヨルダン、モロッコ、オマーン)、なれない王国はすべて革命によって打倒されている(アフガニスタン、エジプト、イラン、イラク、リビア)。しかし、「アラブの春」を通じて、例えばモロッコでの国王権限縮小やヨルダンでも同様の動きがあるなど、これまでの政体だけで王国存続を決定づけられるわけではないように見える。サウジアラビアにおいても、本書でその胎動を報告していた女性参政権が認められる方向であるらしい。