Sightsong

自縄自縛日記

サタジット・レイ『チャルラータ』

2012-02-21 11:25:26 | 南アジア

ドーハからの帰途、カタール航空の機内で、サタジット・レイ『チャルラータ』(1964年)を観る。

カルカッタ(現在のコルカタ)。チャルラータは美しい。インテリの夫は、金持ちも怠惰ではいけないと新聞を発行し、リベラルな政治への運動に関与している。オペラグラスで窓の外を眺めたり、刺繍をしたりとヒマなチャルを心配した夫は、能天気な大学生の従弟アマルを呼び寄せる。姉のようにアマルに接し、何か社会に接しなさいと文章を書かせて雑誌に投稿させるチャル。それが雑誌に採用されるや、自らの外部への発信意欲を刺戟され取り乱す。チャルもアマルに促され、エッセイを書いたところ、雑誌に掲載される。しかし、チャルはさらに気持ちを掻き乱され泣いてしまう。一方、夫は親戚にオカネを騙し取られ、新聞事業を頓挫させてしまう。今まで顧みなかったチャルとの生活を再開しようとするが、既にチャルの気持ちはアマルに向いていた。家庭は一気に崩壊し、もう元に戻ることはない。

チャルラータの描写はきめ細やかで素晴らしい。歩きつついくつもの窓から外の人をオペラグラスで覗き続けるテンポ。アマルが草の上で昼寝する横でブランコ遊びをするチャルが弾みをつける足、アマルの横顔ごしに捉えたブランコの動き、ブランコとともに流れる背景とチャルの顔。自我がコンクリートのようにへばりついたチャルの背中と顔。

サタジット・レイ(ショトジット・ライ)の手練の技を見せてもらったという印象だった。

●参照
サタジット・レイ『見知らぬ人』