Sightsong

自縄自縛日記

ジョージ・アダムスの甘甘作品

2012-09-25 07:30:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョージ・アダムス『Nightingale』(somethin'else、1988年)を500円で見つけ、あまりの懐かしさに入手してしまった。とは言っても、自分がこれを聴いたのは発売後数年が経ってからだった。

何でも、アダムスは87年の「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル」において大受けしたのだという。そのアダムスが、日本マーケット向けに投入した甘甘のスタンダード集。ちょうどケニー・ドリューが軟弱なジャケットのピアノトリオ集でヒットしていた頃である。レーベルも、ブルーノートの腰砕け兄弟サムシンエルス。色眼鏡をかける条件はすべて整っていた。

しかし、そこから時代がふたまわりし、いまでは余計なことを考えない。そして、これが悪くないのだ。それまで硬派で鳴らしていたアダムスも、この朗々としたブローを聴かせるアダムスも、まったく違わない。「Bridge over Troubled Water」も、「A Nightingale Sang in Berkeley Square」も、「Going Home」も、ゆったり味わいながら聴くことができる。

もっとも、あとで思い出そうとすると、印象が希薄なのではあるが。

George Adams (ts, fl, ss)
Hugh Lawson (p)
Sirone (b)
Victor Lewis (ds)

『Ballads』(Alfa、1979-84年)も、これに負けず劣らず軟弱路線。やはり軟弱全盛の1991年に、ケニー・ドリューをヒットさせていたアルファジャズが発売している。昔の演奏から、バラードだけをピックアップした作品集である。

基本的には似たようなものだ。しかし、やはり硬派仲間のドン・プーレンキャメロン・ブラウンと組んでいるだけに、ただの甘甘よりは聴きごたえがある。プーレンの掻き乱しピアノは健在だし、ブラウンのぶんぶんと唸る(「Band in a Box」のような)ベースも妙に嬉しい。アダムスの音は太く、中に唾と気持ちが脳髄のように詰まっている。本当は、ハードな演奏の間にあってより光る演奏のはずではあるが、まあよい。

ところで、「Send in the Clowns」がなぜアダムスの作曲となっているのだろう。どう聴いても、サラ・ヴォーンが歌ったあの曲である。

George Adams (ts, fl, vo)
Don Pullen (p)
Cameron Brown (b)
Dannie Richmond (ds)
Don Pate (b)(1曲のみ)
Al Foster (ds)(1曲のみ)
Azzedin Weston (perc)(1曲のみ)

●参照
ギル・エヴァンス+ローランド・カーク『Live in Dortmund 1976』(アダムス参加)
ルーツ『Salute to the Saxophone』(プーレン参加)
デイヴィッド・マレイ『Children』(プーレン参加)


尾崎哲夫『英単語500でわかる現代アメリカ』

2012-09-25 00:14:45 | 北米

尾崎哲夫『英単語500でわかる現代アメリカ』(朝日新書、2008年)を、kobo touchで読む。TOEICの試験もあるし、と、さもしい気持ちで買ったものである。米国の時事ネタを解説しつつ、そのキーワードになる英単語を併記するというスタイルだ。

何しろ4年前、オバマ大統領誕生前夜だ。当時の盛り上がりは記憶に新しいような、もう昔の話になってしまったような。

本書も、冒頭を「2008年の大統領選」と題して、その経緯や背景について書いている。そんなわけで、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョン・マケインの生い立ちやキャラクターなどを紹介しているのだが、やはり時代の熱気があるせいか、まるで英雄譚になっているのは仕方がない。

その後は、「アメリカの政治制度」、「アメリカの司法制度」、「アメリカの政治風土」、「人種問題」、「ポリティカル・コレクトネス」、「アメリカ人とは?」、「中絶論争と女性の権利」、「同性愛をどう見るか」、「建国「以前」から現代まで」、「星条旗の歴史」、「国歌の歴史」、「道路と交通」、「ITが変えた生活」、「アメリカの音楽」と続く。通読すると、忘れていたことや、へええと驚いてしまうようなことも多い。

それにしても、米国は、生まれも育ちも面倒で困ったちゃんなんだな、と痛感する。もっとも、それは各国各様であるけれど。

英単語も、普段の仕事や雑談では使わないボキャブラリーであるだけに、なかなか勉強になる(だからこそ覚えられない)。微妙な言葉の使い分けも面白い。例えば、同じ「道」であっても、street、avenue、boulevard、sidewalk、lane、alley、rowはどう違うか、など。

TOEIC対策になるかどうかは置いておいても、米国を俯瞰するひとつの本として良いのではないかと思う。今度の大統領選後にでも改訂すれば、また読み応えがある本になるに違いない。

●参照
成澤宗男『オバマの危険 新政権の隠された本性』を読む
ワールド・サキソフォン・カルテット『Yes We Can』