Sightsong

自縄自縛日記

ダイヤモンドと東洋経済の中国特集

2012-11-06 07:19:08 | 中国・台湾

所用での大阪への行き帰りに、「週刊ダイヤモンド」誌と「週刊東洋経済」誌の中国特集を読む。(ビジネスマンらしい行動にわれながら苦笑。)

週刊ダイヤモンド」誌は、「中国 撤退か継続か」と題した特集を組んでいる。

まずは、加藤嘉一氏(ハーバード大)による、習近平・李克強体制に向けた権力闘争に関する寄稿が興味深い。先日失脚した薄熙来・重慶市書記と広東省におけるライバルであった汪洋との関係が、反日デモにも影響していた。汪は胡錦濤に近い改革派、薄は毛沢東派。汪には反発も多く、既得権益層が反日デモにおいて毛沢東の肖像を掲げ、圧力をかけることになった。汪が中央の常務委員に入るかどうかも争点だという。

分析はやはり中国進出企業への影響。目立つのはターゲットになった自動車だが、それに関係深い鉄鋼や化学、さらに電気機器や観光に影響甚大だった。

8%を切っている成長に関しては、さほど問題ないという論調。キーは不動産投資よりもインフラ投資(不動産バブル抑制)、ただ過剰生産とのバランスをどう取るかというところ。また、投資ばかりが増えてしまい(五輪や万博も起爆剤となり、経済成長をドライブしてきた)、低くなった国内消費をいかに増やすか。成長においては沿岸部よりも中西部のポテンシャルが大きいが、とはいっても中西部の経済基盤は脆弱であり成長は投資頼み、とのこと。

週刊東洋経済」誌は、「中国リスク―領土、景気、反日、政争― 対立長期化に備えよ」という特集。

自動車に関しては、販売店からの優秀なセールスマンの離職や、銀行融資の打ち切りなどが問題となっているという。

あとは各氏各様の意見を並べている(ローソン社長のインタビュー記事が面白い)。ただ、権力闘争や数字による分析に力を入れた「ダイヤモンド」誌のほうが読み応えがあった。

尖閣諸島問題に関しては、台湾の菓子メーカー・旺旺が反日漁船支援をしたという記事を興味深く読む。旺旺は新潟の菓子メーカーに多大なる支援を受けて事業を成功させたという経緯があり、この行動が波紋を呼んだという。また、富坂聰氏(ジャーナリスト)は、棚上げ論を評価している。これは歴史的なそれでなく、一般論として、両国が自国民を「だます」という暗黙の了解だとする。その現実感は何にせよ考えさせられる言い方だと捉えた。

●参照
国分良成編『中国は、いま』
汪暉『世界史のなかの中国』
加々美光行『中国の民族問題』
加々美光行『裸の共和国』
加々美光行『現代中国の黎明』 天安門事件前後の胡耀邦、趙紫陽、鄧小平、劉暁波
天児慧『巨龍の胎動』
天児慧『中国・アジア・日本』
『世界』の特集「巨大な隣人・中国とともに生きる」
『情況』の、「現代中国論」特集
堀江則雄『ユーラシア胎動』
L・ヤーコブソン+D・ノックス『中国の新しい対外政策』
加藤千洋『胡同の記憶』
クロード・B・ルヴァンソン『チベット』