Sightsong

自縄自縛日記

エルメート・パスコアールの映像『Hermeto Brincando de Corpo e Alma』

2016-01-17 22:23:49 | 中南米

エルメート・パスコアールのDVD『Hermeto Brincando de Corpo e Alma』を見つけた。わたしはポルトガル語をまるで解さないが、自動翻訳から推測するに「全身全霊で遊ぶエルメート」とでもいう意味だろうか。わりに最近の姿ではないかと思う。

エルメートは何度も高いびきをかき、その自分の映像を集め、多くのいびきエルメートとセッションする。白く長い髯は、ココナッツの油で洗ってちょっと摩擦を残したのだと得々と語るのだが、やはり、多くのエルメートが髯をしごいたり、ピンと引っ張って弦のように弾いたり。

1時間、そんなのばっかり。衰えないお茶目な怪人なのだ。存在に感謝感謝。

●参照
アンドレ・マルケス『Viva Hermeto』(2014年)
2004年、エルメート・パスコアール
エルメート・パスコアールのピアノ・ソロ(1988年)


コーエン兄弟『バートン・フィンク』

2016-01-17 21:57:25 | 北米

コーエン兄弟『バートン・フィンク』(1991年)を観る。学生時代に、映画通が格好つけて褒めていたので、つい観そびれてしまっていた。

NYで絶賛された劇作家が映画会社に雇われ、B級のレスリング映画の脚本を書かざるを得なくなる物語。

いや~、巧い。いまとなってはコーエン兄弟の個性だということがわかるが、この不条理を淡々と描いていく作風は、最初からのものだったのだな。スタンリー・キューブリック『シャイニング』や、ブライアン・デ・パルマ『キャリー』を思わせるところもあったりして。

●参照
コーエン兄弟『トゥルー・グリット』、『バーン・アフター・リーディング』(2010年、2008年)
コーエン兄弟『バーバー』(2001年)


バール・フィリップス(Barre's Trio)『no pieces』

2016-01-17 16:43:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

バール・フィリップスのBarre's Trioによる『no pieces』(emouvance、1992年)を聴く。

Michel Doneda (sax)
Alain Joule (perc)
Barre Phillips (b)

ミシェル・ドネダに弱くて、何を聴いても悦びで顔が勝手に笑ってしまうのだが、これもやはりまた例外ではない。自然界のさまざまな音を、また、彼岸から霊媒師のごとく運んでくる音まで、かれは、サックスを通じて提示する。しかも、傾奇ながら。この人外の存在感は、韓国の故・金石出にも匹敵すると思えてくる。最後の曲ではサックスを2本くわえているようだ。おそるべしドネダ。

ドネダがよくわからぬものを噴出させているとき、おもむろに入ってくるバール・フィリップスのコントラバスにも、バールの音としか言えない香りがあって、嬉しくなってしまう。とんでもないセッションである。

ベースの齋藤徹さんによると、少し体調を崩していたバールさんは持ち直して元気になっていたとのこと。そして齋藤さんはもうすぐヨーロッパでドネダとも再びあいまみえるとのこと。また日本で観たいものである。

●参照
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)
バール・フィリップスの映像『Live in Vienna』(2006年)
バール・フィリップス+今井和雄『Play'em as They Fall』(1999年)
ミシェル・ドネダ『Everybody Digs Michel Doneda』(2013年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
ロル・コクスヒル+ミシェル・ドネダ『Sitting on Your Stairs』(2011年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ミシェル・ドネダ『OGOOUE-OGOWAY』(1994年)


オリン・エヴァンス+エリック・レヴィス@新宿ピットイン

2016-01-17 09:07:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインにて、オリン・エヴァンスとエリック・レヴィスとのデュオを観る(2016/1/16)。

昨年(2015年)に、NYのSMOKEにおいて、エヴァンスが率いるCaptain Black Big Bandでの姿に接して以来である。レヴィスについては、やはり昨年、NYのVillage Vanguardでカート・ローゼンウィンケルの新トリオ以来。しかしかたやビッグバンド、かたや目立つ主役が別にいるという具合であるから、このようにシンプルなデュオも嬉しい。

Orrin Evans (p, vo)
Eric Revis (b)

いきなり、サム・リヴァースの「Beatrice」。リヴァース本人の演奏は勢いでぐちゃぐちゃでろでろ、ジョー・ヘンダーソンの演奏は悠然と自身のテナー・サウンドを聴かせるものだった。しかしここではスマートなブルースであり、非常に新鮮。そのあとは、レヴィスとエヴァンスのオリジナルを中心として、オーネット・コールマンの「Blues Connotation」なども演奏した。「Over the Rainbow」が聴こえた場面もあった。ホーギー・カーマイケルの「Rockin' Chair」では、なんと、エヴァンスは弾きながら喉を披露した。

それにしても、ふたりの指は鋼鉄でできているのではないかと思えるほど重たい。レヴィスはベースの背中を向けるような形で、ヘヴィ級のボクサーによる重いジャブを繰り出した。エヴァンスも迷うことなく一音一音の圧が高い指によって、ダンディなブルースを弾いた。粘っこいリフを絶妙に後ノリにしてゆき発展させたとき、観客席から反射的な拍手が起きた。

●参照
オリン・エヴァンスのCaptain Black Big Band @Smoke(2015年)
オリン・エヴァンス『The Evolution of Oneself』(2014年)
オリン・エヴァンス『"... It Was Beauty"』(2013年)
カート・ローゼンウィンケル@Village Vanguard(2015年)(レヴィス参加)