Sightsong

自縄自縛日記

『けーし風』読者の集い(29) 沖縄からつなげる世界

2016-01-23 21:05:07 | 沖縄

『けーし風』第89号(2016.1、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2016/1/23、神保町区民館)。参加者は7人。

 

主に以下のような話題。

○高嶺朝一氏により、アメリカの軍事戦略に関する文書についてまとめられている。アジア戦略としては、「第3次アーミテージ・ナイ・レポート」(2012年)、CSIS(米戦略・国際問題研究所)「アジア・太平洋米軍配置戦略報告書」(2012年)が大きな方針を示している。一方、ランド研究所「America's Security Deficit」(2015年)やグラハム・アリソン「2014: Good Year for a Great War?」(2014年)がそのような戦略に批判的。重要ながら邦訳がなされていない。
○衆院の安保法制特別委員会が那覇で開かれ、地方参考人として、高嶺氏、大田元沖縄県知事、稲嶺名護市長が発言。特に大田元知事による琉球処分以降の差別政策に対する批判が熾烈なものであったという。
○高嶺氏は、現政権は国内の右派・保守層を取り込もうとした政策を展開していたが、結局はアメリカの軍産複合体に取り込まれてしまったとする。かつて日本では、韓国をアメリカの傀儡だと批判する言説があったが、足元の日本についてこそ幻想を抱いていたことになる。
○戦争体験を継承することの重要性。沖縄戦のあと、その苛烈な体験はしばらく口に出されることが少なかったわけだが、それには、聴きとる側がその力を持っていないという問題もあった。
○新城郁夫氏は、女性や沖縄という「少数」の動きを希望として位置づける。また、岡本恵徳と屋嘉比収の発言が持っていた身体性・具体性に注目する。なぜか、この両故人への注目が高まってきているような印象がある(キレのある屋嘉比氏に対し、岡本氏には包み込むようなやさしさがあったという)。
○辺野古埋め立ての土砂を採取する側の運動。そこには、徳之島において核燃サイクルの設備計画がかつてあったように、同じ場所に異なる矛盾を塗り込もうとする動きがある。
○土砂内の外来生物(アルゼンチンアリなど)を如何に防ぐことができるか。沖縄県の条例として、その検査義務が導入されたが、そこには罰則がない。適用第1号である那覇第二空港はどうなるか。
○ジュゴン訴訟。アメリカの地裁は、国防総省に対し、環境社会影響等がないことを示すよう命じたが、国防総省は日本政府のアセス問題なしという方針をもってそれに応えた。国防総省の対応は不十分なものであり、今後の控訴の動きなどが注目される。
○メディア統制に対してどのように抗していくか。ネットはどのように対抗しうるのか。
○現場の力。辺野古や高江といった場を通じた個人の交流があったからこそ、抵抗が大きな力を持ち得ている。
○宜野湾市長選のゆくえ。

注目の本・雑誌
新崎盛暉『日本にとって沖縄とは何か』(岩波新書)
若林千代『ジープと砂塵-米軍占領下沖縄の政治社会と東アジア冷戦 1945~1950-』(有志舎)
津波古勝子歌集『大嶺岬』(短歌研究社)
毛利孝雄『体験的オキナワ論』
『越境広場』1号
『うるまネシア』
『月刊沖縄』

●参照
これまでの『けーし風』読者の集い